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45:ケインの喜びのひととき
ケインは泣き続けるジュリアの背中を撫でながら、愛する女性を抱きしめている喜びに浸っていた。
始めこそ抵抗していた彼女も、今ではすっかり身体を預けてくれている。
少しでも気を抜けば、ジュリアの髪から立ち上る甘い香りに頭がクラクラしそうになるのを、懸命に我慢する。
ケインは決して紳士的な態度を崩さなかった。
今までのケインならば、女性を抱きしめながらも頭の中はいつでも冷静だった。
考えていたことはといえば、いかにこのままベッドへ連れ込むかということばかりだ。
それなのに、今の自分はなんと余裕がないことか。
まさか、たった一人の女性にここまでのめり込んでしまう日が来るとは思ってもみなかった。
ただ抱きしめているだけなのに、妙に緊張しているなんて。
少しでも乱暴に力を入れたら、彼女が壊れてしまいそうで怖いだなんて。
たくさんの女性を手にしてきたはずなのに、と自分でも笑ってしまいそうだ。
それでもケインは幸せだった。
幸せというものを初めて知った気さえしていたのである。
いっそこのまま、強引にでもどこかへ連れ去ってしまえたら。
そんなことさえ考えていた時だった。
「ジュリア様!」
突然、乱暴な声が割り込んできたものだから、弾かれたようにジュリアがケインから身を離した。
何事かと2人して振り返る。
すると、怒りに顔を真っ赤にして駆けてくるダニエルの姿が見えた。
ケインはため息をついた。
せっかく良いところだったのに、と心の中でブツクサ呟いている間にも、ダニエルは目の前で足を止め、こちらを睨みつけてきた。
「ケイン!ジュリア様から離れろ」
それからダニエルは目をギラギラさせて、ジュリアに手を差し伸べた。
「さあ、こちらへ!」
ケインは不安な思いでジュリアを見た。
一瞬、ジュリアが彼の手を取ってしまうのではないかと思ったのである。
しかし、ジュリアは動かなかった。
ダニエルの手を、泣き腫らした目で見つめてはいるものの、それを取ろうとはしない。
ほっと胸を撫で下ろしたケインは、ジュリアを背後に隠すように回り込むと、ダニエルに言った。
「ジュリア様は、もうダニエルとは話したくないみたいだな」
「そ、そんな!ジュリア様、どうか2人きりで話をさせて下さい。
そうすればきっと分かってもらえます!」
ダニエルは懇願したものの、やはりジュリアの返事はない。
それどころか彼女の瞳が再び潤み始めたのを見ると、ダニエルの目も不安に揺れ始めた。
「ジュリア様、お願いです!
少しの時間で良いですから、話を……」
ダニエルが再度言い始めた時だった。
それを遮るように、ジュリアが口を開いたのである。
「今さら話すことなんてありませんわ。
あなたがしたことを見たのですから、それで十分です」
「あ、あれは彼女が無理矢理にやった事です!
私は……」
「いいえ!」
ジュリアが突然声を荒げたものだから、ケインまでもギョッとしてしまった。
「なんと言い訳しても意味はありません!
他の方とキスをしているところを見てしまったなんて……あまりにショックで、これ以上話なんて聞きたくありませんわ!」
言い終わるなり、ジュリアはすがるように、ケインの腕にしがみついてきた。
ケインはこんな時だというのに、それが嬉しくて。
かばうように彼女の前に立ち塞がると、ダニエルに顔を向けた。
「ジュリア様が、こう言ってるわけだしさ。
とにかく今日は、もう帰って……」
しかしダニエルは素早かった。
「私が本当にキスしたいのは、あなただけです!」
と叫ぶなり、すっかり油断していたケインの脇を走り抜けたのである。
それからジュリアの肩をつかむと、力づくで顔を寄せて唇を重ね合わせようとしてきた。
が、すんでのところでケインが取り押さえると、乱暴に地面へと引きずり倒した。
「ジュリア様……。
私が愛しているのは、あなただけなのです。
神に誓って本当です!
あんな女は…….」
ダニエルが地面に倒れ込んだまま、必死に訴える。
しかしジュリアはおろか、ケインさえも返事をしようとはしない中、不意に声が聞こえて来たのである。
「あんな女で悪かったわね」
驚いた3人が振り返ると、冷たい目でダニエルを見下ろしていたのはルイーズだった。
始めこそ抵抗していた彼女も、今ではすっかり身体を預けてくれている。
少しでも気を抜けば、ジュリアの髪から立ち上る甘い香りに頭がクラクラしそうになるのを、懸命に我慢する。
ケインは決して紳士的な態度を崩さなかった。
今までのケインならば、女性を抱きしめながらも頭の中はいつでも冷静だった。
考えていたことはといえば、いかにこのままベッドへ連れ込むかということばかりだ。
それなのに、今の自分はなんと余裕がないことか。
まさか、たった一人の女性にここまでのめり込んでしまう日が来るとは思ってもみなかった。
ただ抱きしめているだけなのに、妙に緊張しているなんて。
少しでも乱暴に力を入れたら、彼女が壊れてしまいそうで怖いだなんて。
たくさんの女性を手にしてきたはずなのに、と自分でも笑ってしまいそうだ。
それでもケインは幸せだった。
幸せというものを初めて知った気さえしていたのである。
いっそこのまま、強引にでもどこかへ連れ去ってしまえたら。
そんなことさえ考えていた時だった。
「ジュリア様!」
突然、乱暴な声が割り込んできたものだから、弾かれたようにジュリアがケインから身を離した。
何事かと2人して振り返る。
すると、怒りに顔を真っ赤にして駆けてくるダニエルの姿が見えた。
ケインはため息をついた。
せっかく良いところだったのに、と心の中でブツクサ呟いている間にも、ダニエルは目の前で足を止め、こちらを睨みつけてきた。
「ケイン!ジュリア様から離れろ」
それからダニエルは目をギラギラさせて、ジュリアに手を差し伸べた。
「さあ、こちらへ!」
ケインは不安な思いでジュリアを見た。
一瞬、ジュリアが彼の手を取ってしまうのではないかと思ったのである。
しかし、ジュリアは動かなかった。
ダニエルの手を、泣き腫らした目で見つめてはいるものの、それを取ろうとはしない。
ほっと胸を撫で下ろしたケインは、ジュリアを背後に隠すように回り込むと、ダニエルに言った。
「ジュリア様は、もうダニエルとは話したくないみたいだな」
「そ、そんな!ジュリア様、どうか2人きりで話をさせて下さい。
そうすればきっと分かってもらえます!」
ダニエルは懇願したものの、やはりジュリアの返事はない。
それどころか彼女の瞳が再び潤み始めたのを見ると、ダニエルの目も不安に揺れ始めた。
「ジュリア様、お願いです!
少しの時間で良いですから、話を……」
ダニエルが再度言い始めた時だった。
それを遮るように、ジュリアが口を開いたのである。
「今さら話すことなんてありませんわ。
あなたがしたことを見たのですから、それで十分です」
「あ、あれは彼女が無理矢理にやった事です!
私は……」
「いいえ!」
ジュリアが突然声を荒げたものだから、ケインまでもギョッとしてしまった。
「なんと言い訳しても意味はありません!
他の方とキスをしているところを見てしまったなんて……あまりにショックで、これ以上話なんて聞きたくありませんわ!」
言い終わるなり、ジュリアはすがるように、ケインの腕にしがみついてきた。
ケインはこんな時だというのに、それが嬉しくて。
かばうように彼女の前に立ち塞がると、ダニエルに顔を向けた。
「ジュリア様が、こう言ってるわけだしさ。
とにかく今日は、もう帰って……」
しかしダニエルは素早かった。
「私が本当にキスしたいのは、あなただけです!」
と叫ぶなり、すっかり油断していたケインの脇を走り抜けたのである。
それからジュリアの肩をつかむと、力づくで顔を寄せて唇を重ね合わせようとしてきた。
が、すんでのところでケインが取り押さえると、乱暴に地面へと引きずり倒した。
「ジュリア様……。
私が愛しているのは、あなただけなのです。
神に誓って本当です!
あんな女は…….」
ダニエルが地面に倒れ込んだまま、必死に訴える。
しかしジュリアはおろか、ケインさえも返事をしようとはしない中、不意に声が聞こえて来たのである。
「あんな女で悪かったわね」
驚いた3人が振り返ると、冷たい目でダニエルを見下ろしていたのはルイーズだった。
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