やっかいな幼なじみは御免です!

ゆきな

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「さあ、急ごう」

マーティに引っ張られるようにして歩いていくと、もうたくさんの男女がペアになり、手を取り合っていた。
急いで2人もその中に混じったところで、タイミングよく演奏が始まった。

「ちょうど良いタイミングで、一曲目に間に合ったな」
「本当、ラッキーだったわね」

ネリーはスカートの下で忙しく足を動かしながら、マーティを盗み見た。

まさか彼が、アリスよりも自分とのダンスを優先するとは思わなかった。
それは確かに、大きな驚きだったが、同時に、嬉しい驚きでもあった。

シェイマスがマーティに話をしてくれた日から、マーティは今までよりも頻繁にネリーを訪ねてきてくれていた。
その内に、とうとうネリーも敬語を使わずに会話をするようになり、ますます彼との距離が縮まっていくのを感じていた。

とはいえ、不安が完全に取り除かれたわけではなかった。
2人の親密度が上がったとは言っても、アリスを目の前にすれば、マーティもまた心が揺らいでしまうのではないか。
そんな心配は、いつまでも消えてくれなかったのである。

だから今夜、アリスよりも自分を選んでくれたことが、ネリーには嬉しかった。

思わず、ふふ、と笑みがこぼれる。
するとマーティが

「なに笑っているんだい?
仮面をつけていても、バレているよ」

と、からかってくるものだから、ネリーは柔らかく首を振った。

「なんでもないわ。ちょっと思い出し笑いしちゃっただけ」
「ええ?なんだよ、それ」

マーティがクスクス笑うのと、演奏が終わるのが、ちょうど同じだった。
周りの男女と同じように、ネリー達も互いにお辞儀をしあってから、手を取り合って壁際へと移動していく。

「ああ、喉が渇いちゃった」
「そうだね。何か貰ってこよう」

そう言ってマーティが、ネリーを残して歩いていく。
ネリーは先程のダンスの余韻に浸りながら、人混みの中に紛れていく彼の背中を、ぼんやりと眺めていたのだったが、

「あら、こんばんわ」

突然声をかけられて、ギクリとした。

この声は……。

振り向く前から予想はついていたが、振り向くと、やはり、そこに立っていたのはアリスだった。

そして、ちょうどその時、両手にグラスを持ったマーティが戻ってきたのである。

「あ……」

マーティはアリスを見て、明らかに動揺していた。 
しかし、すぐになんでもないふうを装って、ネリーにグラスを手渡してから、もう一つをアリスに差し出した。

「きみも飲むかい?」
「ええ、ありがとう」

アリスはニッコリ笑いながら、グラスを受け取ると、まっすぐにマーティを見上げた。

「なんだか久しぶりね。
4人で集まったお茶会以来でしょう? 
マーティったら、あれからは呼んでも全然遊びに来てくれなくなっちゃったんですもの」

と、アリスはすねたように唇を尖らせた。


……今までは、平気で彼を呼びつけて……しかもマーティは、ほいほい会いに行ってたってこと?


と、イラッとしないことも無かったが、例え以前はそうだったとしても、どうやらマーティは最近は軽率な行動は謹んでくれてくれているらしい。
ネリーはほっとしたものの、アリスは明らかにそれが不満なようだった。

その腹いせなのかどうか。
アリスはネリーの目など気にもせず、マーティの腕に手をかけると、揺さぶったのである。

「そろそろ次の曲が始まるわ!
一緒に踊りに行きましょうよ」

これにはネリーも、はらはらしてしまって、思わず真剣な眼差しで、マーティの横顔を見つめた。
しかしマーティは笑顔を浮かべるでもなく、淡々と言ったのだ。

「ごめん。今日は、踊るのはネリーとだけって決めてるんだ」
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