37 / 73
37
しおりを挟む
「え……?そうなの……?」
アリスはチラリとネリーを見た。
それから素早くマーティに視線を戻すと
「そんなこと言わないでよお。
寂しくなっちゃうじゃない……」
と、これ以上ないほどの甘い声で訴えた。
黒目がちな大きな瞳が、見る間に潤んでくる。
これはマズイ!
ネリーはもう黙っていられず、何か言わなければと口を開きかけた。
ところが、ネリーよりマーティの方が先だった。
「と、ところでさ、アリス。
シェイマスはどこ行ったんだ?
一緒に来てるんだろ?」
と、あまりにも急に話を変えてしまったのである。
と同時に、シェイマスを探すように体を大きく動かしたものだから、彼の腕にかけられていたアリスの手は、所在なさげに宙に浮かなければならなかった。
あまりに不器用な話題の変え方に、ネリーはもちろん、アリスも呆然とした様子である。
マーティなりに、アリスの涙に負けぬよう必死なのだろう。
しかしアリスも負けてはいない。
「そうよ、シェイマスと一緒に来たわ。
でも彼ったら、私を置いてどこかに行ったまま戻ってこないのよ。
だから私、寂しくて……だからこそ、マーティたちと会えて嬉しかったのに」
と、上手く話題を戻してしまうと、そっと彼の腕に手をかけ直した。
「ねえ、お願い。一曲だけで良いから!
せっかく楽しみにしていた仮面舞踏会なのに、まだ一曲も踊ってないなんて、悲しいわ」
「で、でも……。
だったらさ、一緒にシェイマスを探しに行こうよ。
シェイマスだって、アリスを探していると思うし……」
ここまできてもマーティは、なんとか抵抗していた。
こんなに言ってくれているのだ。
何とか彼に加勢したいと、ネリーも
「そうですわね。では皆で探して……」
と、笑顔を作って口を挟んだのだったが。
「ネリー様」
突然アリスが、それを遮るようにして口を開いたものだから、それ以上言葉を続けることが出来なくなってしまった。
「は、はい」
「今夜は、年に一度の無礼講が許される仮面舞踏会の夜ですわ。
それなのに、誰とは踊るとか、踊らないとか……そんなことを言うのは、野暮だと思いませんこと?」
「それは……」
ネリーは言葉に詰まってしまった。
マーティを横目で見ると、彼はすかさず反論しようと口を開きかけたが、アリスがそれよりも早く、真っ直ぐに彼を見つめて
「マーティ……お願い」
と、囁くように言うと、彼は固まったまま動かなくなってしまった。
そして、口をパクパクしてはいたものの、それ以上何も言うことが出来なくて。
とうとう、力無くネリーに視線を送ってきた。
えええ……。
こうなればネリーもタジタジである。
その上アリスも畳み掛けるように、ネリーに向き直ると
「ネリー様にも、お願いしますわ。
一曲だけ、私とマーティで踊ってきてもよろしいでしょうか?」
と言ってくるものだから、もうこれ以上イヤとは言えなくて。
とうとうネリーはうつむいてしまうと、ボソリと呟いたのだった。
「……わかりました。どうぞ」
アリスはチラリとネリーを見た。
それから素早くマーティに視線を戻すと
「そんなこと言わないでよお。
寂しくなっちゃうじゃない……」
と、これ以上ないほどの甘い声で訴えた。
黒目がちな大きな瞳が、見る間に潤んでくる。
これはマズイ!
ネリーはもう黙っていられず、何か言わなければと口を開きかけた。
ところが、ネリーよりマーティの方が先だった。
「と、ところでさ、アリス。
シェイマスはどこ行ったんだ?
一緒に来てるんだろ?」
と、あまりにも急に話を変えてしまったのである。
と同時に、シェイマスを探すように体を大きく動かしたものだから、彼の腕にかけられていたアリスの手は、所在なさげに宙に浮かなければならなかった。
あまりに不器用な話題の変え方に、ネリーはもちろん、アリスも呆然とした様子である。
マーティなりに、アリスの涙に負けぬよう必死なのだろう。
しかしアリスも負けてはいない。
「そうよ、シェイマスと一緒に来たわ。
でも彼ったら、私を置いてどこかに行ったまま戻ってこないのよ。
だから私、寂しくて……だからこそ、マーティたちと会えて嬉しかったのに」
と、上手く話題を戻してしまうと、そっと彼の腕に手をかけ直した。
「ねえ、お願い。一曲だけで良いから!
せっかく楽しみにしていた仮面舞踏会なのに、まだ一曲も踊ってないなんて、悲しいわ」
「で、でも……。
だったらさ、一緒にシェイマスを探しに行こうよ。
シェイマスだって、アリスを探していると思うし……」
ここまできてもマーティは、なんとか抵抗していた。
こんなに言ってくれているのだ。
何とか彼に加勢したいと、ネリーも
「そうですわね。では皆で探して……」
と、笑顔を作って口を挟んだのだったが。
「ネリー様」
突然アリスが、それを遮るようにして口を開いたものだから、それ以上言葉を続けることが出来なくなってしまった。
「は、はい」
「今夜は、年に一度の無礼講が許される仮面舞踏会の夜ですわ。
それなのに、誰とは踊るとか、踊らないとか……そんなことを言うのは、野暮だと思いませんこと?」
「それは……」
ネリーは言葉に詰まってしまった。
マーティを横目で見ると、彼はすかさず反論しようと口を開きかけたが、アリスがそれよりも早く、真っ直ぐに彼を見つめて
「マーティ……お願い」
と、囁くように言うと、彼は固まったまま動かなくなってしまった。
そして、口をパクパクしてはいたものの、それ以上何も言うことが出来なくて。
とうとう、力無くネリーに視線を送ってきた。
えええ……。
こうなればネリーもタジタジである。
その上アリスも畳み掛けるように、ネリーに向き直ると
「ネリー様にも、お願いしますわ。
一曲だけ、私とマーティで踊ってきてもよろしいでしょうか?」
と言ってくるものだから、もうこれ以上イヤとは言えなくて。
とうとうネリーはうつむいてしまうと、ボソリと呟いたのだった。
「……わかりました。どうぞ」
4
あなたにおすすめの小説
姉妹のお相手はわたくしが見つけますわ ー いき遅れ3姉妹の場合
葉月ゆな
恋愛
「フェリシアが結婚して、フェリシアの子供が侯爵家を継げばいい」
女侯爵である姉が言い出した。
3姉妹が10代のころに両親がなくなり侯爵家の建て直しで、この国では行き遅れと呼ばれる部類に入っているシャルロッテ(長女)、フェリシア(次女)、ジャクリーン(三女)の美人三姉妹。
今日まで3人で頑張って侯爵家を建て直し、落ち着いたからそろそろ後継者をと、フェリシアが姉に結婚を薦めれば、そんな言葉が返ってきた。
姉は女侯爵で貿易で財を成している侯爵家の海軍を取り仕切る男装の麗人。
妹は商会を切り盛りする才女。
次女本人は、家内の采配しかできない凡人だと思っている。
しかしフェリシアは姉妹をけなされると、心の中で相手に対して毒舌を吐きながら撃退する手腕は、社交界では有名な存在だ(本人知らず)。
なのに自慢の姉妹は結婚に興味がないので、フェリシアは姉妹の相手を本気で探そうと、社交に力を入れ出す。
フェリシアは心の中で何か思っているときは「私」、人と喋るときは「わたくし」になるのでご注意を。
薬師の能力を買われた嫁ぎ先は闇の仕事を請け負う一族でした
あねもね
恋愛
薬師として働くエリーゼ・バリエンホルムは貴族の娘。
しかし両親が亡くなって以降、叔父に家を追い出されていた。エリーゼは自分の生活と弟の学費を稼ぐために頑張っていたが、店の立ち退きを迫られる事態となる。同時期に、好意を寄せていたシメオン・ラウル・アランブール伯爵からプロポーズを申し込まれていたものの、その申し出を受けず、娼館に足を踏み入れることにした。
エリーゼが娼館にいることを知ったシメオンは、エリーゼを大金で身請けして屋敷に連れ帰る。けれどそこは闇の仕事を請け負う一族で、シメオンはエリーゼに毒薬作りを命じた。
薬師としての矜持を踏みにじられ、一度は泣き崩れたエリーゼだったが……。
――私は私の信念で戦う。決して誰にも屈しない。
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
【完結】恋を忘れた伯爵は、恋を知らない灰かぶり令嬢を拾う
白雨 音
恋愛
男爵令嬢ロザリーンは、母を失って以降、愛を感じた事が無い。
父は人が変わったかの様に冷たくなり、何の前置きも無く再婚してしまった上に、
再婚相手とその娘たちは底意地が悪く、ロザリーンを召使として扱った。
義姉には縁談の打診が来たが、自分はデビュタントさえして貰えない…
疎外感や孤独に苛まれ、何の希望も見出せずにいた。
義姉の婚約パーティの日、ロザリーンは侍女として同行したが、家族の不興を買い、帰路にて置き去りにされてしまう。
パーティで知り合った少年ミゲルの父に助けられ、男爵家に送ると言われるが、
家族を恐れるロザリーンは、自分を彼の館で雇って欲しいと願い出た___
異世界恋愛:短めの長編(全24話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました
おりあ
恋愛
アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。
だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。
失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。
赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。
そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。
一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。
静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。
これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。
裏切り者として死んで転生したら、私を憎んでいるはずの王太子殿下がなぜか優しくしてくるので、勘違いしないよう気を付けます
みゅー
恋愛
ジェイドは幼いころ会った王太子殿下であるカーレルのことを忘れたことはなかった。だが魔法学校で再会したカーレルはジェイドのことを覚えていなかった。
それでもジェイドはカーレルを想っていた。
学校の卒業式の日、貴族令嬢と親しくしているカーレルを見て元々身分差もあり儚い恋だと潔く身を引いたジェイド。
赴任先でモンスターの襲撃に会い、療養で故郷にもどった先で驚きの事実を知る。自分はこの宇宙を作るための機械『ジェイド』のシステムの一つだった。
それからは『ジェイド』に従い動くことになるが、それは国を裏切ることにもなりジェイドは最終的に殺されてしまう。
ところがその後ジェイドの記憶を持ったまま翡翠として他の世界に転生し元の世界に召喚され……
ジェイドは王太子殿下のカーレルを愛していた。
だが、自分が裏切り者と思われてもやらなければならないことができ、それを果たした。
そして、死んで翡翠として他の世界で生まれ変わったが、ものと世界に呼び戻される。
そして、戻った世界ではカーレルは聖女と呼ばれる令嬢と恋人になっていた。
だが、裏切り者のジェイドの生まれ変わりと知っていて、恋人がいるはずのカーレルはなぜか翡翠に優しくしてきて……
噂の悪女が妻になりました
はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。
国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。
その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる