ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない

Ayari(橋本彩里)

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20.直感①

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 ブラムウェルの存在、高ランク冒険者であることもそうだけど、その瞳に自分が相変わらず映っている事実がものすごく心を強くさせる。

「助けに来てくれてありがとう」
「……もっと早くに来るべきだった」

 悔しそうにノアの状態を確認するブラムウェルに、ノアはふっと笑う。
 これはノアと東部ギルドの問題で、侯爵の存在はイレギュラーだったけど彼もノアに用があるようなので、ブラムウェルがそこまで背負うものではない。

 それをそのまま伝えてしまえばショックを受けそうなほどつらそうに唇を噛みしめているので口には出さないが、責任は感じてほしくなかった。
 そもそも、前回冒険者を煽ったのもノアには打算があった。黄昏の獅子がいる間は多少の無茶は大丈夫だと計算があったことは否定しない。

「ブラムのせいではないから」
「だが、俺がノアから離れたせいで」
「それは違うよ」

 一週間経っても帰ってこないどころか顔を見せなかったこと。
 確かに気になるけれど、ブラムウェルにどんな事情があったのかわからないがノアはあれこれ言える立場ではない。そもそもの根底が違う。

 何度も言うが、これはノアの問題だ。
 ブラムウェルの威厳を借りているのはこちらなので、すべてのものを差し出して自分を優先してほしいなんて思っていない。

 危険があるのは承知の上だったのだ。
 むしろ、ノアはずっと本部のやり方にいらだちを抱えていて、言えば黄昏の獅子を利用した側になる。

 持久戦を覚悟していたのにあっという間にノアを見つけ助け出し、ものすごく安心感を与えてくれたのにこれ以上何を望むのだろうか。
 感謝することはあっても、責める要素なんて微塵もない。

「様々な意思が絡み合うのだから、思惑通り完璧になんて無理だよ。どういうわけか怪我もないし、ブラムは助けてやったんだぞと偉そうにしてもいいくらいだから」
「どこも痛くない?」
「うん。何度か殴られたけど、衝撃はあるのに痛くなくて。ほら、縛られていた手首もまったく傷はないし不思議だよね」

 そこでブラムウェルがほっと安堵したように眉を下げ、それから倒れているギルド長たちを見回した。

「誰がノアを殴ったって?」
「……ねえ、怒ってくれるのは嬉しいのだけど、もしかして僕の身体の状態はブラムウェルが関係している?」

 今までのブラムウェルなら、こんな異様な状態を心配しないなんてあり得ない。
 すぐさま魔法で精査しそうなタイプなのに安堵したということは、ノアの身体にブラムウェルが何かをしたのかもしれない。

 なにせ、毎日一緒に密着していたのだ。
 ブラムウェルほどの魔法使いならば、ノアの想像もつかない魔法を施していても不思議ではない。
 じっと見つめると、ブラムウェルは珍しく視線を彷徨わせごまかすように小さく口角を上げた。

 ――やっぱり何かしたのか。

 おかげで助かってはいるけれど、これは後で追及案件か。

 ノアは一度大きく息を吐き出した。
 拉致されるとまでは考えていなかったけれど、実際にブラムウェルは助けにきてくれている。この場を活かすべきだ。

 自分のことなのに任せきりではいけない。
 ノア自身に力がないことは承知しているので足手まといにはならないようにだけはしながら、この機に解決してしまおう。

 侯爵のこともそうだが、卑劣に証拠を残さない本部ギルドのやり方には腹が立っていた。
 ギルドでの遠回しの嫌がらせではなく直接手を出してきたのだから、ノアもそれなりの対応が必要だ。

 周囲に迷惑を及ぼす彼らとはこれで終わりにすべきだ。
 ノアは手が動かせたことにより、冒険者が騒ぎ立てて以降、常に服に忍ばせていた音声記録魔道具を起動させた。

 力がないなりにノアだって考えている。
 終わらせるのには証拠が必要だ。

「さっきのは何ですか?」

 ブラムウェルに対して言いたいこと、聞きたいこと、いろいろ気になることはある。
 だが、狙われる理由をはっきりさせないと今後同じようなことを繰り返すのでこちらが優先だ。

 ブラムウェルが助けにきてくれた時点ですでに安全が保障されたも同然だと信じているし、何よりノアをさらったという事実が第三者に知られたので彼らも言い逃れはできない。
 だったら、ここで勝負をつけようとノアは侯爵をきっと睨んだ。

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