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26.熱量③
しおりを挟む「全部終わったとは思っているが、不可解な点はいくつかあるしいつ何がきっかけで命を狙われるか担ぎ上げられるかわからない」
「ああ~」
逃亡生活をしていたくらいだから、その辺はややこしいのか。
ノアはブラムウェルの過去も大概ややこしいなと考えるように視線を伏せ、再度ブラムウェルを見た。
「ブラムはどうしたいの?」
「俺はノアがいればそれでいい。だから、今後も身分について誰にも話すつもりはない」
ブラムウェルは迷いもせずきっぱり言い切った。
最後は優勢となった王弟の直系。母親の身分は低いとはいえ貴族。そのうえ絶大な魔力を保有し現在の高ランク冒険者という肩書は無視できない。
再建を望もうと思えば可能かもしれないのに、全く興味はないらしい。
一貫してブレない態度はここまでくると清々しい。
「わかった。誰にも口外しない」
「ありがとう。ノアに話したのは俺のこと全部知ってほしかったから。それも踏まえてノアのことは絶対に守るから」
ブラムウェルは本当に一生自分と添い遂げるつもりなのだ。ノアは降参だと、ブラムウェルの形のよい唇に自ら唇を重ねた。
ちゅっと可愛らしいリップオンをさせ、ブラムウェルの両頬を挟む。
「僕もブラムウェルを守れるように頑張るよ」
これだけ考えてくれている人をもっとしっかり受け止めたいと思った。
何かあったらその時はその時だ。今から考えても仕方がないし、二人で乗り越えていこう。
自分だけが問題を抱えて相手に負担をかけているわけではないのは、ちょっぴり気持ちが軽くなる。ブラムウェルのことに関して気持ちを決めてしまうと肩の力が抜けた。
これからは一人ではない。それがとても気持ちを強くする。
そういえばとノアは首を傾げブラムウェルを見た。
「ちょっと疑問なのだけど、ブラムが僕を好きでいてくれたのはわかったよ。だけど、なんですぐに身体の関係を望んだの?」
自分を王都で見つけたとしても、なぜそういう関係をなろうと思ったのか。
受け入れたのはノアだが、かなり積極的に誘われたためで、誘われず友人として好意を示されたら今後も友人として交流することだって可能だったはずだ。
その後は一緒にいても手を出されていなかったこともあって、身体の関係は余計だったのではとも思ってしまう。
「だってノアをもう手放したくなかったんだ」
「別に記憶がなくても、友人になることだってできたよね?」
「そんな生ぬるい関係は無理。お互いが常に気に掛けるような関係といえば恋人でしょ? それに保護魔法も体液を混ぜるほうが手早いし、ノアを見つけた瞬間何が何でもすべて取り込んで自分のものにしたかった」
「……体液」
体液、体液かぁ……。
もうその辺は深く追求するのをやめておこう。
つまりノアに関しては性別関係なく、唯一の関係になりたい欲求が身体の欲求にも繋がったらしい。
子供の時の記憶からよくすぐそっちに向いたなと、その感覚はさすがに理解できそうにない。
まさか当時からそういった欲求が? と疑いかけたところでブラムウェルが首を振った。
「ノアは勘違いしている。子供の時はそういった欲求はなかったから」
「そうなんだね」
断言されてほっとする。
さすがに当時八歳の子供の時からそういう目で見られていたとしたらドン引きだ。
「ずっと自分だけのものにしたかった気持ちは変らなくて、こうなるのは俺の中では当然の帰結だから。ノアはノアだ。好きは変らないし、身体も大人になった今はすべてを貪りたくなるほど愛している。だからこの気持ちを疑わないで」
微塵もその流れを疑っていないブラムウェルにとって、それは当然のことのようだ。
これまでのブラムウェルの話を聞いての推測だが、持っていてくれていた好意は別れと死別(実際は生きていた)によって歪み、執着を強くさせてしまったのかもしれない。
不可抗力ではあるけれど、もうこういうのも含めてブラムウェルなのだと、そしてそんなブラムウェルが愛おしい。
「疑わないよ。僕も好きだから。これからずっと一緒にいよう!」
記憶は曖昧だけど、つらいこともあったが恵まれていると今の生活に満足していた。
だけど、村で起こったことや失ったもののことを考えると苦しくて、でも今から考えるとどこか穴があいたような喪失感とは別に寂しさを感じていた。
記憶を封じるほどのことって何なのか。それを考えると逃げたくなる。
だけど、ブラムウェルといると、胸の一番奥にずっと居座っていた息苦しく重たい感情がゆるっと和む。
急速に愛おしくなる気持ち。ノアはブラムウェルを見つめながら、頬にかかった髪を優しく耳へとかけてやった。
視線が絡み合う。
ブラムウェルの顔が近づき熱い息が触れ、ノアは目をつぶった。
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