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11.運命と偶然
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終わった……。まさか三人目で正解が出るなんて。
一縷の望みを託して各チームの得点を表す掲示板に目を向けた桐生だったが、やはり加点されたのは螢川&高田チームであった。0から18になっている。
カプセル席を出て、他の席の様子を窺うと、正解を出した三番目にはどうやら高田が入っていたようだ。
質問権・解答権が回って来る前に決着したため、桐生にとっては不完全燃焼もいいところだ。しかしその点を抜きにしても、三人目の高田が一発で正解を言い当てたことは賞賛に値する。どういった思考を経て64を選んだのか、聞けるものならぜひ聞きたい。
が、おしゃべりを始める前に、この第二ゲームの締めくくりとしてすべきことが残っている。
<それじゃあ勝者チームの螢川君と高田さん。何のカードがほしいのかを言ってちょうだい>
吹田の声がスピーカーを通してとどろいた。螢川は高田と顔を見合わせて、「あれでいいんですね」と丁寧に確認を取る。見事に正解し、チームを逆転勝利に導いた高田をリスペクトしている風だ。
「はい、予定通りで」
「分かった。――じゃあ、幻影ジョーカーをもらう」
大方の予想通り、ライバルの持つカード一枚を潰せる幻影ジョーカーを選ぶのは常道の一つだ。
カンニングに幻影ジョーカー、利用価値の高い二枚のカードを得て、螢川&高田チームが一歩抜きん出た情勢になった。一方、まだ獲得カードゼロ枚の石倉と馳は、後れを取っていることを気にかけた様子はなく、平然と受け流している。
<やっぱりそう来ましたか。幻影ジョーカーね。ほいっと>
吹田の声に合わせて、プロジェクションマッピングなのか、幻影ジョーカーの柄のカードがスタジオ内に投影され、程なくしてジョーカーそのものがカードから浮かび出た。そのまま、ゆらゆらとした奇妙な足取りで螢川達のチームの得点表示欄に入って行った。
<はい、これで一区切り。次のゲームまでしばらくあるから、どうぞご歓談を>
明確に休憩とは告げなかったからたいして長い時間は取れないだろうが、ちょうどいい。桐生は高田に近付き、声を掛けた。
「あの、ちょっといいかな。まずはおめでとうございます」
「――どういたしまして」
一瞬、怪訝そうに目を何度かしばたたかせた高田だったが、すぐに笑みを浮かべた。そうする間にも、他の参加者達が集まってくる。
「一つ、どうしても聞きたいことがあって。差し支えがなかったら教えてもらいたいな」
「どうぞ。答えられるかどうか分からないけど」
「桐生サン、あなたの聞きたいことなら分かってるよ」
横やりを入れてきたのは高田のパートナー、螢川だった。
(面倒臭いな)
奥歯を噛み締めた桐生。
(こいつ、さっき三番目で正解できたのには特別な作戦があって、それを高田さんが話さないように邪魔しに来たのか?)
もっと素早く聞いておけばよかったと後悔する桐生だったが、続く螢川とのやり取りでそれは思い込みだったと知る。
「どうやってたった二つの質問から、解答して正解できたか、を聞きたいんだよね?」
「あ、ああ。そうだよ」
「ちょうどよかった。自分も知りたい」
にかっと笑う螢川。桐生は拍子抜けするあまり、膝ががくっとなった。
(こ、こいつは~)
そんな彼をよそに、螢川がパートナーに向き直って真顔で尋ねる。
「まじで驚いた。どうやって正解が分かったんです?」
「大げさにされると困るわ。四分の一の確率に賭けて当たった。それだけなのよ」
恐縮した風にはにかむ高田。どうやら嘘や演技ではなさそうだ。
「じゃあ、何故64を選んだっていうの?」
馳が高田にぐいっと近付く。多分、出題側で64に決めたのは彼女なんだろう。
「64は私にとってラッキーナンバー、というよりも運命の数だから」
「縁起担ぎがたまたま当たったってこと?」
馳もまた最前の桐生みたいに力が抜けたらしく、肩が下がる。
「はい。むしろ、私の方から聞きたい。どうしてあなた達は64にしたのか。8×8、オセロ盤の升目と同じ64を」
あ――そうか、なるほど。オセロチャンピオンの経歴を持つ彼女にとって、64は運命の数に違いない。
つづく
一縷の望みを託して各チームの得点を表す掲示板に目を向けた桐生だったが、やはり加点されたのは螢川&高田チームであった。0から18になっている。
カプセル席を出て、他の席の様子を窺うと、正解を出した三番目にはどうやら高田が入っていたようだ。
質問権・解答権が回って来る前に決着したため、桐生にとっては不完全燃焼もいいところだ。しかしその点を抜きにしても、三人目の高田が一発で正解を言い当てたことは賞賛に値する。どういった思考を経て64を選んだのか、聞けるものならぜひ聞きたい。
が、おしゃべりを始める前に、この第二ゲームの締めくくりとしてすべきことが残っている。
<それじゃあ勝者チームの螢川君と高田さん。何のカードがほしいのかを言ってちょうだい>
吹田の声がスピーカーを通してとどろいた。螢川は高田と顔を見合わせて、「あれでいいんですね」と丁寧に確認を取る。見事に正解し、チームを逆転勝利に導いた高田をリスペクトしている風だ。
「はい、予定通りで」
「分かった。――じゃあ、幻影ジョーカーをもらう」
大方の予想通り、ライバルの持つカード一枚を潰せる幻影ジョーカーを選ぶのは常道の一つだ。
カンニングに幻影ジョーカー、利用価値の高い二枚のカードを得て、螢川&高田チームが一歩抜きん出た情勢になった。一方、まだ獲得カードゼロ枚の石倉と馳は、後れを取っていることを気にかけた様子はなく、平然と受け流している。
<やっぱりそう来ましたか。幻影ジョーカーね。ほいっと>
吹田の声に合わせて、プロジェクションマッピングなのか、幻影ジョーカーの柄のカードがスタジオ内に投影され、程なくしてジョーカーそのものがカードから浮かび出た。そのまま、ゆらゆらとした奇妙な足取りで螢川達のチームの得点表示欄に入って行った。
<はい、これで一区切り。次のゲームまでしばらくあるから、どうぞご歓談を>
明確に休憩とは告げなかったからたいして長い時間は取れないだろうが、ちょうどいい。桐生は高田に近付き、声を掛けた。
「あの、ちょっといいかな。まずはおめでとうございます」
「――どういたしまして」
一瞬、怪訝そうに目を何度かしばたたかせた高田だったが、すぐに笑みを浮かべた。そうする間にも、他の参加者達が集まってくる。
「一つ、どうしても聞きたいことがあって。差し支えがなかったら教えてもらいたいな」
「どうぞ。答えられるかどうか分からないけど」
「桐生サン、あなたの聞きたいことなら分かってるよ」
横やりを入れてきたのは高田のパートナー、螢川だった。
(面倒臭いな)
奥歯を噛み締めた桐生。
(こいつ、さっき三番目で正解できたのには特別な作戦があって、それを高田さんが話さないように邪魔しに来たのか?)
もっと素早く聞いておけばよかったと後悔する桐生だったが、続く螢川とのやり取りでそれは思い込みだったと知る。
「どうやってたった二つの質問から、解答して正解できたか、を聞きたいんだよね?」
「あ、ああ。そうだよ」
「ちょうどよかった。自分も知りたい」
にかっと笑う螢川。桐生は拍子抜けするあまり、膝ががくっとなった。
(こ、こいつは~)
そんな彼をよそに、螢川がパートナーに向き直って真顔で尋ねる。
「まじで驚いた。どうやって正解が分かったんです?」
「大げさにされると困るわ。四分の一の確率に賭けて当たった。それだけなのよ」
恐縮した風にはにかむ高田。どうやら嘘や演技ではなさそうだ。
「じゃあ、何故64を選んだっていうの?」
馳が高田にぐいっと近付く。多分、出題側で64に決めたのは彼女なんだろう。
「64は私にとってラッキーナンバー、というよりも運命の数だから」
「縁起担ぎがたまたま当たったってこと?」
馳もまた最前の桐生みたいに力が抜けたらしく、肩が下がる。
「はい。むしろ、私の方から聞きたい。どうしてあなた達は64にしたのか。8×8、オセロ盤の升目と同じ64を」
あ――そうか、なるほど。オセロチャンピオンの経歴を持つ彼女にとって、64は運命の数に違いない。
つづく
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