仮想空間に探偵は何人必要か?

崎田毅駿

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10.根を詰めた結果

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(な、何て的確な質問なんだ)
 桐生は思わず、心の中で賞賛していた。
(禁止事項に引っ掛からないようにするために、ややこしい言い回しになっているけど、要するに二桁掛ける二桁で四桁になるかどうか、もしくは一桁掛ける一桁で二桁になるかどうかを聞いてるんだ。さすがに三桁――100を答に選ぶことはないだろうから無視していい。この答で、一気に絞り込めるぞ)
 そして同時に、一番目の質問者はコンビを組む片薙ではないなと確信した。
 とにもかくにも条件に当てはまる範囲を算出しておく。
(えーっと? 上は99で決まる。100になって初めて、二乗すれば五桁の10000になるのだから。下は、31の二乗が961。32の二乗が1024。二乗して四桁になる最も小さな正の整数は32か。さっきの一問で32~99に絞られた。直感的に思ったほど絞り込まれてはないけれども、六十八個か。
 次の質問に要注目だな。もし片薙さんだとして、どうやったら消極的であると見なされない程度の、でも相手チームを大きく助けることはない質問ができるのか。逆に次の質問者が敵チームなら、どうするだろう?
 偶数ですか?と尋ねれば、候補を半分に減らせるけど、これは僕らにとっても敵チームにとってもリスキーだよなぁ。もし奇数なら素数か否かを問えばさらにふるい落とせてしまう)
 考えている途中で、質問が決定したらしい。意外と早いなと驚きつつ、桐生は耳を傾ける。


  2.その数のこんは整数になりますか?


 桐生の口から、お、と息が漏れた。
(これは片薙さんに違いない。ある数の根、つまりルートを取ったら整数になる数でさっきの条件にかなう範囲にあるのは、36、49、64、81の四つ。偶然にもこの四つの中に答が含まれている可能性は低い。返答がノーであることを前提とした質問。うまい)
 心の中で賛辞を送っていた桐生だったが、出題チームからの返答が提示された瞬間、愕然となった。


  2.その数のこんは整数になりますか?――イエス


(ばかな、何てこった……一気に四つに絞られてしまった。ひどい偶然だ。出題した石倉と馳さんも何を考えてある数の二乗になっている数なんかを問題に選んだんだろう? 凄く特徴的なのに)
 ライバルのやり方を非難しても始まらない。桐生は方針の変更を迫られていた。
(残り四つということは、仮に一つずつ答えていってもあと四回、最長でも六度目の質問で正解が出る)
 緊急事態に焦りを覚え、当たり前のことを脳内で再確認してしまった。
(こうなったら、下手に絞り込めない。一か八かで解答する方が勝利を手元に引き寄せられるはず。何しろ四分の一の確率で正解するんだから。ただ、その確率を少しでも高めるには一体どうすればいい? 何を根拠にして四つの中でありそうな数を浮かび上がらせることができる?)
 自問自答を始めようにも、そこから先へ進めない。
(何かないか。石倉か馳さんが思い付きそうな数。ラッキーセブンの二乗で49? 参加している人数六名の二乗で36? まさかな)
 手掛かりを探して、脳細胞をフル回転させる桐生だが、いささか空回り気味だ。そこへ、次の質問が決定したとの合図が。
(もう? 確率四分の一に賭けるとしたら、最早いたずらに思考を重ねても時間の無駄という結論に到った?)
 それはそれで潔い。ある意味、合理的な筋道ルートを辿ったと言える。問題は、そのルートがルートに通じているかどうか……。


  3.解答します。その数は64ですか?


 この質問者=解答者はまず間違いなく石倉か馳。ここで答えられたら、相手チームには十八点が入って、桐生らは逆転負けだ。息を飲んで、返答の提示を待つ。


  3.解答します。その数は64ですか?――イエス


 つづく
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