化石の鳴き声

崎田毅駿

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13.別の骨と新たな骨と

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 木下君が、不思議そうに聞いてきました。その隣の鳥井君も、それを教えてほしいとばかり、首を何度も縦に振っています。
「おじいちゃんから聞いただけなんだけど」
 そう前置きして、純子は始めました。
「化石のあるあの場所にね、昔、人の骨を埋めたんだって、あの太田って人」
「人の骨……がい骨のこと?」
 ぎょっとした表情になる男の子達。何となく、純子はおかしくなりました。
「うん、そうみたい。昔ね、太田は嫌いな人を殺しちゃって、その人をどこかに隠そうとして、あの土地に埋めたんだって。それを、私達が掘り返していたでしょ。あわてちゃったみたい」
「そうかあ、その人の骨が見つかったら、問題になるもんね」
 川上君は、納得した風にうなずきます。
「だからこそ、太田はあの土地を発掘させないようにと、あんな囲いをしたんだって。それで、私達やおじいちゃんが、無理にでも掘り返そうとするような態度を見せたから、向こうもあせったのかしら。工事の予定を無理に入れてきたでしょ。工事して、建物の土台を作ってしまったら、人の骨はもう見つからないんだから」
「なーるほど」
「それでも安心できなくて、あの夜、こっそりとあそこに行って、人の骨を掘り返そうと考えたみたい。それでまた、別の場所に埋めるつもりだったのよ」
「ふーん」
「警察の人達も、あきれてたみたい。あのままにしておけば、見つからなかったろうに、わざわざ掘り返すなんて、よっぽど恐がっていたんだろうって」
「とにかく、何もなくてよかった」
 中森君が言いました。
「ところで、あそこはどうなるんだろう? また掘れる?」
「それがねえ」
 含み笑いをする純子。まだ、新聞やテレビにも出ていない、ニュースがあるのです。いいニュースが。
「事件なんだから、当然、警察が、あそこを調べるでしょう。それで、死んだ人の骨を取り出すために、立入禁止になっちゃってるの」
「それじゃあ、だめじゃないか」
 男の子達は、一様にがっかりした顔になります。
 純子は、いよいよ、いいニュースを話そうと決めました。
「そうじゃないったら。いい? その作業をしている途中で、すごい物が見つかったんだから」
「すごい物って?」
「今は写真だけだけど……」
 胸ポケットにしまっておいた、一枚の写真を取り出す純子。白黒写真ですが、何かとがった、三角状の物が写っています。
「これ、何だ?」
 木下君が首をひねっています。
「ちっぽけな石ころにしか見えない」
 鳥井君が、不満そうに純子の顔を見てきます。
「これがすごい物って言うんなら、多分、恐竜に関係してるんだろうけど……」
 川上君は思案顔です。
 そして、最後に中森君。
「……よく分からないけど、これって、歯じゃないのか? 恐竜の歯!」
「当たり!」
 拍手しながら、純子は飛び上がりました。
 他の四人は、最初、驚いた顔をして、それから興奮してきたようです。
「まじ? すごい!」
「本当に、恐竜、いたんだ」
「アンモナイトにあった歯型と一致するのかな?」
 そんな声が飛び交います。
「よく見つけたなあ、こんな小さい物」
 中森君が、感心した風に言いました。
「それはね。おじいちゃんと谷林のおじさんのお手柄なの。特別に、調査の現場に立ち会わせてもらって、警察の人が掘り出した土とか岩のかたまりの中から、これを見つけたって。これが出てきたおかげで、事件の調査がすめば、本格的に発掘できるみたい」
「へえっ。石原さんも、恐い目をしたかいがあったんだ」
「そうよ」
 きっぱりと、純子は言い切りました。
「この化石が、夢の中で、私に教えてくれたの。悪い奴をやっつけて、恐竜の化石を見つけてくれってね!」
 そうして、五人の頭の中で、恐竜の勇姿が、どんどん大きくなっていくのでした。

――おわり
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