9 / 108
1章 国王陛下ですよね?
奥さん何者ですか?
しおりを挟む
「改めましてランバートの妻でエチカと申します。貴女がルルちゃんね?」
「あ、はい。あの⋯もう立って下さい!」
エチカさんは何故かまだ平伏したまま自己紹介をしている。
「あらごめんなさい、オホホ!」
「いえ⋯ねぇチロ、この人に挨拶して?」
チロは元気良く頷くと、エチカさんの側まで行き恥ずかしそうに挨拶する。
「チロはチロっていいましゅ!しゃんしゃいです!」
「⋯そう⋯グスッ⋯チロくん、挨拶出来ておりこうさんね」
「どーちたの?どこかいたいのー?」
急に泣き出してしまったエチカさんをチロが慰める。チロはお得意(?)の変顔をしてエチカさんを笑わせる事に成功した。その光景を微笑ましく見ていたランバートに促されて豪華な広間に向かった。
私とチロが一緒に座り、テーブルを挟んでランバートとエチカさんが座った。チロは見たことの無い広くて豪華な部屋に興奮してキョロキョロしている。
「ランバート先生⋯チロに本当の事を話すんですよね?」
「そのつもりだが、どう話していいか迷っていてね」
「なら私が話していいですか?」
ランバート達が困惑しているのを他所に、ルルはチロに話を始めた。
「ねぇチロ、チロのお母さん覚えてる?」
「うん、チロにいたいことちた!きらい!」
チロがプンスカ怒る。
そんなチロを見て泣きそうになるエチカを抱きしめるランバート。彼も辛そうな顔をしている。
「実はね?チロに痛いことしたお母さんはチロの本当のお母さんじゃなかったの」
「チロのおかーしゃんじゃないの?」
「そう。チロの本当のお母さんはね、チロをずっと探していたの」
「⋯チロのほんとうのおかーしゃんは⋯やちゃちい?」
「うん。優しくてチロが大好きなんだって!」
その光景を見てまた泣き出してしまうエチカとランバート。
「チロは会いたい?」
チロは少しの沈黙の後に頷くとルルに抱きついた。
「チロ、今ね?目の前にいるのよ」
チロは少し驚いた顔でランバートやエチカを見た。公爵夫妻は必死に笑顔になろうとするが、涙が止まらない。
「チロのお母さんとお父さんだよ。また挨拶して?」
チロは恐る恐るだが夫妻に近付いていく。
「チロのおかーしゃんとおとーしゃんなの?」
「そうよ⋯お母さんよ!」
「父さんだ!」
夫妻はチロを思いっきり抱きしめた。チロはまだ困惑しているが嫌がってはいない。その光景を嬉しい反面、寂しい気持ちで見ているルル。
暫くして落ち着くと気まずい沈黙が続く。チロはエチカが抱っこしている。
「あの⋯チロは何か好きな遊びはあるの?」
エチカが笑顔でチロに聞いた。
「チロはねー?兵士ごっこが好きー!」
「チロは兵士が好きなの?」
それを聞いて何故か目が輝き出すエチカ。
「うん!」
エチカはいきなり立ち上がると、大事なチロをランバートに託してそそくさと部屋を出ていった。
「どうしたんですか?エチカさん」
「今から見る事になると思うが、驚かないでくれるかい?」
ランバートは何故か苦笑いしている。
するとドアが勢い良く開き、現れたのは軍服姿のエチカだった。しかも普通の軍服ではなく多分最も位が高い紅い軍服。
「レッドデビルだ⋯」
【赤い悪魔】と戦場で恐れられている軍の総司令官。勉強会で習った人物が目の前にいるので驚くルル。しかも女性(エチカ)だった事にも更に驚いた。
「ルルちゃん、よく知ってるわね!私は軍総司令官のエチカ・オールドウィンよ!」
装飾された綺麗な剣を天に掲げ自分に酔うエチカに開いた口が塞がらないルルと、そんな妻を見て苦笑いするランバート。
急に人格が変わったエチカをチロはキラキラした目で見ている。ルルは何となくだがランバートを見た。
「それでも私は妻を愛している」
「何も言ってませんが?」
またまた強烈なキャラの登場にルルは笑うしかなかった。
「あ、はい。あの⋯もう立って下さい!」
エチカさんは何故かまだ平伏したまま自己紹介をしている。
「あらごめんなさい、オホホ!」
「いえ⋯ねぇチロ、この人に挨拶して?」
チロは元気良く頷くと、エチカさんの側まで行き恥ずかしそうに挨拶する。
「チロはチロっていいましゅ!しゃんしゃいです!」
「⋯そう⋯グスッ⋯チロくん、挨拶出来ておりこうさんね」
「どーちたの?どこかいたいのー?」
急に泣き出してしまったエチカさんをチロが慰める。チロはお得意(?)の変顔をしてエチカさんを笑わせる事に成功した。その光景を微笑ましく見ていたランバートに促されて豪華な広間に向かった。
私とチロが一緒に座り、テーブルを挟んでランバートとエチカさんが座った。チロは見たことの無い広くて豪華な部屋に興奮してキョロキョロしている。
「ランバート先生⋯チロに本当の事を話すんですよね?」
「そのつもりだが、どう話していいか迷っていてね」
「なら私が話していいですか?」
ランバート達が困惑しているのを他所に、ルルはチロに話を始めた。
「ねぇチロ、チロのお母さん覚えてる?」
「うん、チロにいたいことちた!きらい!」
チロがプンスカ怒る。
そんなチロを見て泣きそうになるエチカを抱きしめるランバート。彼も辛そうな顔をしている。
「実はね?チロに痛いことしたお母さんはチロの本当のお母さんじゃなかったの」
「チロのおかーしゃんじゃないの?」
「そう。チロの本当のお母さんはね、チロをずっと探していたの」
「⋯チロのほんとうのおかーしゃんは⋯やちゃちい?」
「うん。優しくてチロが大好きなんだって!」
その光景を見てまた泣き出してしまうエチカとランバート。
「チロは会いたい?」
チロは少しの沈黙の後に頷くとルルに抱きついた。
「チロ、今ね?目の前にいるのよ」
チロは少し驚いた顔でランバートやエチカを見た。公爵夫妻は必死に笑顔になろうとするが、涙が止まらない。
「チロのお母さんとお父さんだよ。また挨拶して?」
チロは恐る恐るだが夫妻に近付いていく。
「チロのおかーしゃんとおとーしゃんなの?」
「そうよ⋯お母さんよ!」
「父さんだ!」
夫妻はチロを思いっきり抱きしめた。チロはまだ困惑しているが嫌がってはいない。その光景を嬉しい反面、寂しい気持ちで見ているルル。
暫くして落ち着くと気まずい沈黙が続く。チロはエチカが抱っこしている。
「あの⋯チロは何か好きな遊びはあるの?」
エチカが笑顔でチロに聞いた。
「チロはねー?兵士ごっこが好きー!」
「チロは兵士が好きなの?」
それを聞いて何故か目が輝き出すエチカ。
「うん!」
エチカはいきなり立ち上がると、大事なチロをランバートに託してそそくさと部屋を出ていった。
「どうしたんですか?エチカさん」
「今から見る事になると思うが、驚かないでくれるかい?」
ランバートは何故か苦笑いしている。
するとドアが勢い良く開き、現れたのは軍服姿のエチカだった。しかも普通の軍服ではなく多分最も位が高い紅い軍服。
「レッドデビルだ⋯」
【赤い悪魔】と戦場で恐れられている軍の総司令官。勉強会で習った人物が目の前にいるので驚くルル。しかも女性(エチカ)だった事にも更に驚いた。
「ルルちゃん、よく知ってるわね!私は軍総司令官のエチカ・オールドウィンよ!」
装飾された綺麗な剣を天に掲げ自分に酔うエチカに開いた口が塞がらないルルと、そんな妻を見て苦笑いするランバート。
急に人格が変わったエチカをチロはキラキラした目で見ている。ルルは何となくだがランバートを見た。
「それでも私は妻を愛している」
「何も言ってませんが?」
またまた強烈なキャラの登場にルルは笑うしかなかった。
236
あなたにおすすめの小説
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる