孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi

文字の大きさ
57 / 108
5章 旅立つ日はいつ?

おちび達の成長①

しおりを挟む
「おちび達ー!行くわよー!」


エチカさんが嬉しそうにおちび達を呼ぶ。


「「「はーーーい!」」」


お帽子を被り、貴族の子供らしい格好をしてやってきたチロ達。今日は仲良し三人組でオールドウィン家にお泊まりにいくのだ。おちび達は興奮気味にエチカに続いて馬車に乗る。


「チロにょおうちにゃのー?」リクが聞く


「そうよ」エチカがチロを抱きしめて言う


チロは嬉しそうに笑う。暫く楽しく話していた三人だが、馬車の揺れがゆりかご代わりになったのか寝息を立て始める。


エチカは今のこの幸せを、ほんの数ヶ月前の絶望していた頃の自分に教えてあげたい。あの頃はほんの数回しか抱いていない愛する我が子の温もりを思い出しては、泣き崩れる日々だった。軍総司令官の職を辞して寝込む毎日で、ランバートにはかなり苦労をかけてしまった。


今は隣に愛する我が子の温もりを感じる。その幸せそうな寝顔に涙が込み上げてくる。辛い目にあった我が子をこれから温かく守っていく事を改めて誓うエチカ。


「おちび達ー!着いたわよ!」


「「「ん~!」」」目を擦り起き上がる三人組


「「「お帰りなさいませ!」」」


メイドや執事が勢揃いしてチロ達を迎え入れる。


「「「こんにちはーー!」」」


元気一杯に挨拶するおちび達に、周りは温かい空気になる。


「お、来たね!」


中央に立つランバートが笑顔で近づく。


「あーー!とーしゃん!」


チロがランバートの元へ元気良く走っていく。こちらに走ってくる愛しい我が子を、手を広げて受け入れるランバート。


「また大きくなったね!」


「うん!チロちんちょーにょびたのーー!」


嬉しそうに話す我が子が愛しくて仕方がない。ジェラルド国王から、いなくなった息子と思われる幼子を保護したと言われた時は、神様にどれ程感謝したか分からない。いても立ってもいられなくなったランバートは、教師のふりして孤児院に行った。


そこには楽しそうにお絵描きしている我が子がいた。一目見て直ぐにヨシュアだと分かったが、酷く痩せていて他の子より小さかった。



酷い目に合った我が子の事を思うと、今でも涙が込み上げてくる。だが今目の前にいるのは、元気一杯で笑顔が幸せそうな我が子だ。これからはその幸せそうな笑顔を守っていく事を固く誓う。


「さぁ、中に入りましょう!」エチカが言う


「「「はーーーい!」」」


三人は突然縦に並び、綺麗に行進していく。それを見て爆笑するエチカと肩を震わすメイド達。それを見て微笑ましく思うランバートだった。

しおりを挟む
感想 111

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

処理中です...