幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

文字の大きさ
78 / 105
ユリア、新しいお友達に出会う

閑話 ある日の出会い④

しおりを挟む
此方に近付いて来る二匹の巨大蜘蛛。イッチゴの実を食べているユリアの前に立ち警戒するシロとチェビ。

『その子供はまさか神の愛し子ですか?』

『そうだったら何なんだ?』

赤い蜘蛛の父親である皇帝は目の前にいる幼子に興味を持つ。それが面白くないシロはユリアを隠して威嚇する。そんな光景をハラハラしながら見守る赤い蜘蛛。

「うわぁ~!おおきいおおきいくもしゃん!」

イッチゴの実を食べ終わったユリアはクロじいに真っ赤になった口の周りを拭いてもらっていたが、目の前に巨大な蜘蛛がいる事に気付いてひどく興奮している。

『我らが怖くないのか?』皇帝がユリアに問う。

「こわくないでしゅよ?くもしゃんこんちはー!」

『ふふ。可愛いわね、こんにちは。』皇妃はユリアを気に入る。

『あのね、師匠とはお友達になったんでしゅよ~!』

赤い蜘蛛は嬉しそうにユリアの事を話す。そんな娘の成長をひしひしと感じて嬉しそうに聞いている皇帝と皇妃。

ユリアはシロの足元の隙間からそんな親子蜘蛛を見ている。

「くもしゃんのとうしゃんとかあしゃんでしゅか?」

『そうでしゅよ!パパは皇帝でママは皇妃でしゅ!』

「こーてーとこーき?」首をかしげるユリア

『ユリアにはまだ難しいだろう』

そう言ってユリアの頬をペロペロ舐めるシロ。するとただならぬ気配がして後ろを振り返る一同。そこへ現れたのはジャイアントスパイダーでひどく焦っている。

『皇帝陛下!大変です!縄張りにオークの群れが現れました!』

『オークなどで騒ぐでない』

『それが…オークエンペラーが現れまして!』

『何だと!オークエンペラーは二百年前に我が仕留めたはずだ!』

オークエンペラーはオークの頂点に君臨していて、力業のオークの中で唯一魔法が使えるのだ。

『縄張りに近付いたオークは殲滅しましたが、オークエンペラーは倒せず負傷した仲間を救うのに必死で……』

そこまで言うと崩れ落ちるように倒れたジャイアントスパイダー。その後ろから邪悪な気配が近付いて来たので、急いで赤い蜘蛛とユリアを隠すシロ。チェビはお腹が鳴っている。

『高級食材が自らやってきましたね』

ニヤリと笑うチェビの方が邪悪に見える。

そこにやってきたオークエンペラー。クロじい程の大きさで、大きな赤い宝石が埋め込まれた杖を持っている。その杖を見て驚く皇帝蜘蛛。

『あれは二百年前に倒したオークエンペラーが持っていた杖だ。力を受け継いだ子か?』

その言葉に醜い顔を歪ませるオークエンペラー。

『我に復讐する為にオークエンペラーに進化したのか』

『あなた、あのオークエンペラーは強いわよ』

オークエンペラーの目線が赤い蜘蛛を抱えるユリアに向けられた。

「おおきいブタしゃんでしゅ!でもこわいでしゅ……」

『あれがオークエンペラーでしゅか……』ぶるぶる震える赤い蜘蛛

『ユリアよ。あの洞窟にイッチゴの実がいっぱいあるんじゃよ。おみやげに持っていきなさい。運ぶのを手伝っておくれ』

「わーーい!いいよ!ありがとう、クロじい!」

喜ぶユリアを抱っこして震える赤い蜘蛛と共に洞窟に避難させたクロじい。

『ユリアを見るな、醜い者よ!』

シロは魔法を放とうとしているオークエンペラーの後ろに瞬時に移動して鋭い爪を振り落とした。オークエンペラーは避けようとしたが間に合わずに深傷を負う。そしてすぐに頭に激痛が襲い、上を向くオークエンペラーだが何もいない。だがポタポタと酸のようなものが頭に落ちて皮膚を溶かしていく。

『シロ、食べて良いですか?』

『……好きにしろ』

シロが興味無さげに言うと、後ろからバリバリと生々しい音が聞こえてきた。その光景を唖然と見ているしかない皇帝蜘蛛。

『うん。やはり高級食材は美味でしたね。』

こうしてオークエンペラーが瞬殺されてしまった。シロはその場に残るオークエンペラーの血を綺麗に消し去った。暫くするとホクホク顔のユリアと何とか落ち着いた赤い蜘蛛がクロじいと共に戻って来た。籠に大量のイッチゴの実を詰めてもらい嬉しそうにシロに抱きつくユリア。



「ユリア、大丈夫かしら?」

心配そうに家で待っているアネモネとオーウェン。すると微かにシロの気配がしたので急いで飛び出していく二人。

「あーー!とうしゃん~!かあしゃん~!」

シロの背中に乗り、嬉しそうに手を振るユリア。アネモネ達は安堵してユリアの元へ向かおうとした時だった、その後ろから先程の赤い蜘蛛とは比べようがない巨大な蜘蛛が二匹、ユリアの後ろを歩いている。

それを見たアネモネはみるみる青ざめてその場で倒れてしまった。オーウェンはそんなアネモネを抱え、唖然としながらその蜘蛛を見つめる。

「おいおい、嘘だろ!エンペラースパイダーだよな?」

ユリアはその巨大蜘蛛の背中に乗っている籠を赤い蜘蛛に慎重に降ろしてもらうと、元気よくお礼を言って赤い蜘蛛とも別れの挨拶をしていた。

「あれ~?かあしゃんまたねんねしてりゅの~?」

帰って行く蜘蛛達をまだ信じられない思いで見ているオーウェン。気絶するアネモネをツンツンしているユリアはまた物凄いお友達が出来たのだった。













しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。