幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

文字の大きさ
91 / 105
ユリア、旅をする!!

おちび達大集合で大混乱です!!②

しおりを挟む
ユリアが消えてからずっと泣き続けるルイーザはまた魔力暴走をしてしまい、魔神マーリンが何とか抑えていた。

「ユリアまではいかないけど⋯本当に凄まじい魔力だね」

ルイーザの凄まじい魔力に苦笑いするマーリンと、驚く一同。

魔族の里にはサンドスが残ると手を挙げた。彼は自身で一から村を開拓した経験があり、ほぼ全壊してしまった魔族の里を復活させようと意気込んでいた。その他にはマルとシイカ、それに数十人のルウズビュード国の兵士がこの場に留まり復興の手助けをする事になった。

オルトスはと言うと、ルーシアス達の話し合いに参加する為に一人で大国タールシアンに向かった。彼の力があればタールシアンなど恐れるに足らないからだ。

魔族の長であるルーシアスは今、恋人であるナターシャと敵国タールシアン王国へ話し合いに行っているので里をこのままに出来ないのだ。魔族の小さな幼子や老人も襲撃で怪我をしたが、幸いな事に死者は出なかった。

アネモネやシリウスの回復魔法で怪我は治ったが、精神的にも肉体的にも疲れ果てていて動けない。そんな光景を見て全員撤退とは言えずに、サンドスが手を挙げたのだった。

「まずは家じゃな!マル!シイカ!木を切って家を作るぞ!」

「わかった!」

「あい!」

サンドスの後を追い、マルとシイカも大木を魔法で簡単に切り浮かして里に運ぶ。それを見て口をあんぐり開けっぱなしの兵士達。そんな彼等は魔族を甲斐甲斐しく世話をしていた。皆が休める簡易的な休憩所を作ったり、炊き出しをしたりと大忙しだが、魔族の人々が泣いて喜ぶ姿を見て胸が締め付けられていた。

今までその見た目だけで迫害されて追いやられた彼等は、自分達にこんなにも優しくしてくれるルウズビュード国の者達に涙ながらに感謝したのだった。

そしてほんの四時間くらいで元の家よりも立派な家が完成していた。サンドスのスピードと体力は凄まじく、マルとシイカの魔法も繊細な作業を簡単に行ってしまう。魔族の人々も口をあんぐり開けっぱなしであった。

魔族の子供達は立派な家に大喜びで小躍りしていた。老人達は泣いて感謝を述べ、若者達はこの技術を学びたいとサンドスに頭を下げたのだった。



一方でオーランド達はルウズビュード国に戻って、心配していたフローリアに事情を話した。泣き崩れてしまったナタリーを見て不安になるカイルやルウ、ピアも何かを感じ取ったのか大人しい。また、猫になり今は精霊化してしまったジョジュアも話を聞いてしまい心配で泣いていた。

フローリアは魔神マーリンの腕の中でぐったりと眠っているルイーザを見て驚く。

「ユリアが消えてからまた魔力暴走をしてな。今は抑え込んでいるが、また暴走するか分からない」

この暴走が続くと命に関わると聞かされたフローリアは泣き崩れた。

「どうしたらいいの!ああ、ルイーザ!」

「一つ方法がある。これは一か八かだ」

金髪の少年が提案するが、彼の正体を聞かされているフローリア達は平伏そうとする。

「そのままで構わない。寧ろ普通でいてくれ」

苦笑いしながらそう言う金髪の少年ラズゴーン。

「ルイーザをユリアの元へ連れて行く。それしか方法が無いがセラムの怒りを考えると一か八かだな」

「そんな!!」

「たあ!!(行くわよ!!)」

反対するフローリアを遮り、ルイーザが手を挙げた。フラフラのはずなのにそんな事を気にする事なく母親の腕から浮かび上がりラズゴーンの元へ飛んで行く。

「君は本当にユリアが大好きなんだね」

「たあ!たああ!!(当たり前よ!ユリア大好き!!)」

創造神ラズゴーンの頭の上に乗る罰当たり極まり無いルイーザに周りは苦笑いだ。

「俺も反対したいけど、ルイーザは聞かないだろうしねぇ~」

「たあ!(行くわよ!!)」

魔神マーリンを無視して早くとラズゴーンの頭をペシペシ叩いて催促するルイーザ。

フローリアは反対したがルイーザが最後まで言う事を聞く事はなく、ラズゴーンが全力で守ると約束したので渋々だがやっと許可を出した。そんな光景をただ黙ってナタリーの横で見ていたカイルだが、その瞳には並々ならぬ闘志が宿っていた。

「絶対にこの子を守ってくださいませ!!」

「ああ、約束しよう」

ラズゴーンに抱っこされたルイーザを見ながら切実に頭を下げてお願いするフローリア。そしてラズゴーンの転移魔法の陣が現れた時だった。

「かあしゃま⋯行ってくりゅ!!」

ナタリーがカイルの言葉に振り向いた時にはもう愛しの息子はそこにいなかった。全速力で走るカイルを見てルウやピアも同時に動き出して光出した魔法陣に飛び込んで行ったのだった。




そして今現在、ルイーザ率いるおちび達がユリアを囲んでいた。

そんな光景を見て怒りを露わにしたのは邪神セラムであった。彼が睨み付ける先にいたのは金髪の少年だった。

「約束が違いますが?この幼子達を殺しても良いと言う事ですか?」

彼からどす黒い怒りが滲み出てきた。それに警戒するシロやチェスターはおちび達を守るように立つ。アネモネやオーウェンはセラムを説得しようと声を掛けようとした時だった。

「キャーー!!可愛いーー!!天使だわ!!って赤ちゃんが浮いてる?」

徳丸夢が嬉しそうにおちび達に駆け寄るのを、セラムが唖然と見ていた。

「お名前は?」

「かいりゅでしゅ!」

「ルウ」

「ピアだよーー!!」

「たあ!(ルイーザ!)」

順番に挨拶する可愛い幼子達を見て悶える夢。

「ユメは子供が好きなんですか?」

「あ、はい!将来保育士になりたかったから!」

「ほいくし?」

首を傾げるセラムだが、夢はおちび達に夢中だった。

「保育士っていうのは⋯あれ見て!可愛い~!何かの踊りかな?」

「おいおい、また変な儀式を始めたぞ!!」

夢の目の前でユリア達が手を繋ぎながら丸くなりグルグル回っていた。それを見たチェスターがいつものように警戒をしたのだった。








しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。