幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

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ユリア、旅をする!!

スーミレ小国へいざ出発!!②

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「セラム様⋯これは一体何なんですか!?」

「⋯⋯ユメが楽しそうなんです。耐えなさい」

時の精霊王ミリーは今、物凄い羞恥心と闘っていた。

「きゃああーー!!たのちいでしゅねー!!」

ユリアは興奮気味にぴょんぴょんと“そこ”で跳ねていた。そんなユリアの周りを妖精コウとジョジュアが楽しそうにパタパタと飛んでいる。

「キャハハ!」

カイルもユリアと仲良く手を繋いでぴょんぴょん跳ねている。

「⋯⋯」

ルウは興味津々でゆらゆら揺られながら広がる大自然の景色を眺めている。

「ピア、あるいてないのにすすんでりゅ~!!」

ピアはコロコロと動く大型の荷車に大興奮だ。そう、子供達は大型の荷車に乗っているのだ。それをオーウェンとチェスターが交代に軽々と引いていた。

「ぶう!!」

浮遊している赤子は目立つと浮遊禁止令が出てしまい不機嫌なルイーザは、荷台に大の字になり寝転がっていた。

そんな幼子の中に混じっているのが何を隠そうミリーであった。精霊王として気の遠くなるような時を生きているミリーだが、姿は幼い男の子だった。なので皆が気づいた時には徳丸夢が生暖かい微笑みを浮かべながらミリーもこの荷台に乗せていたのだった。




セラムの能力でスーミレ小国近くの森に降り立った一同は、歩き回り迷子になるのは確実であろうおちび達をどうするかで頭を悩ませていた。

「だから大変だと言ったでしょう?さっさと元の場所に戻して来ましょう」

セラムは走り回っているおちび達を見ながら嫌味のように言い放った。今はシロとオーウェン、そしてアネモネが何とか抑えているがこのおちび達が森に解き放たれるのは時間の問題だ。

「そうだ!園児をカートみたいなものに乗せてた⋯あれ良いかも!!」

皆が頭を抱えていた時、徳丸夢が何か閃いたのか急に叫び出した。

「カート?えんじ?ユメ、それは何なんだい?」

「セラムさん!この子達と一緒にいられる良い方法を思いつきましたよ!」

セラムは嫌な予感がしたが、ユメの嬉しそうな顔を見ると何も言えない。セラムがそんな葛藤をしているとは微塵も思っていないユメは嬉々としてカートの説明を始めた。

「大きな箱のようなものに車輪をつけて、そこにユリアちゃん達を入れて押していくんです!この子達もゆらゆら揺れてアトラクションみたいで楽しいと思いますし私達は迷子の心配をしなくて良いので一石二鳥です!!」

「あ~⋯つまり荷車みたいなやつか?本当にこいつらが大人しくするか?」

チェスターは半信半疑だが、ユメのキラキラした瞳に何も言えないセラムが彼女の説明通りに荷車を具現化させてみた。それはよく出来てはいたが、木でできた質素なものだったので、ユメがおちび達を集めて皆でそこに絵を描くことにしたのだ。

「皆んなーー!!皆んなが乗るカートに絵を描こう!」

いきなり出てきた大きな荷車に興味津々のユリア達にユメが声をかけた。絵の具はまたセラムに説明したら出してくれた。

「⋯⋯未来型ロボットみたいですね⋯」

「みらい⋯ロボットとは?」

遂に口に出してしまった夢だが、気を取り直してユリア達と共に絵を描き始めた。

「おーユリア!可愛い猫だな!」

「うしゃぎさんでしゅよ!!」

「⋯⋯」

オーウェンはプンスカと怒っているユリアを見て苦笑いするしかなかった。

「カイルは棒人間か!!」

「かあしゃまでしゅよ!!」

「⋯⋯」

「それは失礼ですよ!」

チェスターがカイルに怒られ、更に夢にまで苦言を呈された。

「ルウちゃんは⋯赤いお化けかな!?」

「⋯かあちゃ」

「⋯⋯」

「おい!お前も酷いぞ!」

夢の発言で気まずい空気が流れたので、チェスターに苦言を呈された。

「ピアはクロじいだろ!!」

「クロパン!!」

「何でだよ!!」

何故か言い合いになるピアとチェスターを見て呆れていたセラムとミリーもユメに促されて渋々だが絵を描き始めた。

「セラムさん、凄い!!綺麗な女の人ですね!」

「はい。これは私から見たユメですよ」

「え⋯」

頬を赤らめているユメとそんなユメを愛おしそうに見つめるセラム。二人の世界になっている横で、ミリーが懸命に何やら描いていた。

「おちびは何描いてんだ?⋯何だ可愛い子豚だな!」

「⋯⋯」

ミリーはチェスターにユメを描いたと今更言えなくて黙ってしまう。

「おいおちび!こいつがお前を描いてくれたぞ!!」

「ユリアはぶたしゃんじゃにゃい!!おばかあにち!!」

怒ったユリアが描いていた筆をチェスターに向けた。

「あちくちゃこうげきーー!!」

そう言いながらチェスターのズボンにひたすら筆をくっ付けていたので、赤い絵の具がベッタリと付着いてしまった。

「おい!何でよりにもよって赤なんだよ!?血塗れみたいじゃねーか!!」

ユリアを怒らせているチェスターを見ていた妖精コウとジョジュアも攻撃に加わり、チェスターの服には真っ赤な肉球と小さな手形が追加された。

「アネモネ!こいつらを止めてくれよ!」

「あら、自業自得でしょう?子豚なんて言うから!本当に一番の子供なんだから!!」

アネモネは父親をジト目で見ながら溜息を吐いた。

そんな中で、ずっと静かだったルイーザは浮遊しながら何とも立派な風景画を描いていてこの場の皆を驚かせた。

「本当にこの子は赤子なのですか?」

「それは俺も思うわ⋯」

セラムの呟きについ答えてしまうチェスターであった。

そして出発となって荷台にユリア、カイル、ルウ、ピアの順で乗せられて行く中で、いつものように浮遊して乗ろうとしたルイーザにアネモネから浮遊禁止令が出されてしまったのだ。

「赤子が浮いていたら普通の人は驚くんです。だから赤子らしくしていてね?」

「たあ!(そんな!)」

崩れ落ちてそのまま大の字に寝転がり不貞腐れてしまった。

そして荷台のドアを閉めようとした時、ユメがミリーを抱っこして荷台に乗せたのだ。何が起こったか訳が分からないままミリーはユリア達の仲間入りを果たしたのだった。

「俺達は小さな旅一座だ!」

「「「「ハーーーイ!!」」」」

「たああ!(私が座長よ!)」

張り切る血塗れチェスターといい返事をするおちび達。シロはどうでも良いのか、興奮気味のユリア達の面倒を見ていた。オーウェンとアネモネは苦笑いで夢はというとかなり嬉しそうだ。

そんなチェスターやおちび達に押され気味の邪神セラムは助けを求めるミリーから目を背ける事だけを考えるのであった。
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