幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

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ユリア、旅をする!!

不貞腐れたチェスターとおちび達

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完全に不貞腐れてしまったチェスターはただでさえ小さい家なのに、わざと横になり皆の邪魔になっていた。村長達は気にしてないのか遠慮してるのか何も言わないが、娘であるアネモネが笑顔を崩さず父親を引き摺り外に追い出したのだった。

オーウェンはというと苦笑いしながらも関わりたくないので夕食の準備を手伝っていた。邪神セラムと時の精霊王ミリーは存在を消さずにそのまま徳丸夢と何やら話していた。皆に邪険にされて寂しそうに庭先に座り込んでいたチェスターに近づくのは小さい影達だった。

「あにち!なにちてるのー?」

チェスターの孫であるユリアやカイルにルウ、そしてピアがシロに連れられてやって来た。赤子のルイーザはもう周りを気にする事なく浮いていた。

「出たな⋯おちび共め!」

「おちびじゃにゃい!ユリアはユリアにゃの!!」

「そんなお豆サイズで何言ってんだ!!もっと大きくなれ!」

大人気ないチェスターと睨み合うユリアという光景はいつもの事なのでシロや他のおちび達も気にしていない。

「なんでおにわでおすわりちてるの?」

カイルが不思議そうにチェスターに聞いた。

「ふん!元々はお前らが俺の足を⋯また脱いでやろうか!?」

「キャーー!ユリア!たいへんだよ!またおくつをぬぐっていってりゅーー!!」

チェスターの究極の脅しを聞いたカイルはパニックになる。

「おい、もうその脅しはやめろ。俺だって恐怖心を感じるんだぞ」

シロがチェスターに苦言を呈する。古の森に棲み、伝説の魔物として君臨していたフェンリルであるシロにとって怖いものなど無いに等しかった。だが、チェスターの足臭事件で初めて恐怖を感じたのだ。そんな事でと思われそうだが、実際に当事者になってみれば誰でも気持ちが分かるだろう。

「皆んな大袈裟に騒ぎやがって!」

「たあ!たああーー!(あんた!赤子にトラウマを植え付ける気ーー!)」

「お前はもっと大変な目に遭っただろ!!何で俺の足臭の方が酷いんだよ!?」

普通に赤子と会話をしているチェスターだが、皆は気にしていない。

「ピアはチェツターとあしょびたい!」

ピアは元気いっぱいにチェスターに抱きついた。

「チェツターじゃなくてチェスターな?チェスターって言えるようになったら遊んでやる」

「チェスターーー!!」ピアがキラキラした目をしてそう言った。

「お前⋯わざとなのか!?賢いのか!?」

ピアを見て驚くチェスターに、ユリアが近付いていく。

「なにちてあしょぶー?ユリアはおにごっこがいいー!」

「ピアもーー!!」

カイルもルウも嬉しそうにソワソワしていた。ルイーザも殺る⋯やる気満々だ。

「お前ら全員鬼で良いぞ!俺を捕まえてみろ!!」

「「「「はーーーーい」」」」

素直に頷き、ワクワクするおちび達を見て何か嫌な予感がするシロは苦笑いだった。

「よし!じゃあスタートだ!!」

そう言っておちび達が返事をする前に猛スピードで逃げ出したチェスター。かなり大人気ない行動に、遠目に見ていた邪神セラムや時の精霊王ミリー、そして徳丸夢が呆れていた。

「酷い!あれじゃあこの子達は捕まえられないですよ!」プンスカと怒る夢。

「俺たちに卑怯と言われるあいつは本当にやばいな!!」

呆れながらチェスターを見ているミリー。

「いや、ユリア達も普通じゃ無いから分からないよ」

セラムがユリアを見てフッと笑った。



「たあ!(待ちやがれー!)」

浮遊しているルイーザが高速でチェスターを追い、もうすぐ追いつきそうな勢いだった。

「おいおい!赤子!お前本当に何者だよ!!」

振り返りルイーザに文句を言うチェスターだったが、そんなルイーザの後ろにはもっと信じられない光景が広がっていた。

「キャーー!あにちー!まてーー!!」チェスターに手を振るユリア。

「たのちいーー!」楽しそうなカイル。

「ふふ!!」嬉しそうなルウ。

「イエーーイ!!」弾けてるピア。

何とこのおちび達が浮いていて、ルイーザのように高速でチェスターを追いかけ始めたのだ。チェスターはその原因となる人物が分かり怒りをぶつける。

「コウか!お前という奴は!今すぐにおちび達を下ろせ!この悪戯妖精が!」

「へへへ!ずるいお前に対抗するにはこっちだって対策を考えないとだろ!!」

キラキラした妖精コウがチェスターに猛反論する。実はユリアの服のポケットの中でスヤスヤと眠っていたが、あまりに煩いので起きたら鬼ごっこの話をしていたのでコウは喜んで協力したのだった。

「ユリア達がよちよち歩きでお前を捕まえられるわけ無いだろ!大人なのに大人気ないぞ!!だからユリア達に協力したんだ!」

「⋯⋯。だからってこれは卑怯過ぎるだろ!?」

全力疾走のチェスターに簡単に追いついたユリア達は次々と脚や背中にしがみついた。

「あにちちゅかまえたーー!!」

捕まえて嬉しそうなユリアだったが、この騒ぎを聞きつけたのかいつも間にか村人が集まっていた。彼等からしたら幼子が浮いて強面の男を追いかけている光景が衝撃的だったのだ。

「何で幼子が浮いてんだ!?」

「やっぱりあの男は誘拐犯だったのけ!?」

「あの光る虫は何だっぺ?」

「虫じゃなーーい!俺様は妖精だ!!」

村人に反論する妖精コウだが、村人達の集まりをかき分けてやって来たいつにも増して笑顔のアネモネを見て急いでユリアのポケットに隠れたのだった。






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