天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

文字の大きさ
5 / 103
4.大波乱の中等部入学試験(1)

天空の魔女 リプルとペブル

しおりを挟む
4.大波乱だいはらんの中等部入学試験(1) 

 8年後。 
 魔女学園小学部の中庭。

 たくさんの赤いリボンが結ばれた裸木はだかぎの下に二人の女の子が立っている。
 やわらかな風が吹いてきて、木に結ばれた数百の赤いリボンがいっせいにはためいた。
 女の子たちの髪の毛もふわっと風にゆれる。



 丸い目に水色のショートボブの女の子が、真剣な顔をして、片手にグラス、もう一方の手にティーカップを持っていた。

 この子が12歳になったペブル。
 そんなペブルを不安そうに見つめているのが、おなじく12歳になったリプル。

 リプルは、切れ長の目に、やわらかそうなダークブラウンの長い髪の落ち着いた雰囲気。
 見た目の印象通り、性格で言えば、ペブルは、あわてんぼうで飽きっぽい。
 リプルは、慎重派。ただし、研究熱心で、興味のあることに関してはとことん突き止められずにはいられない。

 ふたりの性格は、地球にたとえれば、北極と南極ほどに正反対……いや、北極と南極、どっちも寒いという意味では共通点もある……。
 それにちなんで、リプルとペブルの共通点を探すとすれば、ふたりとも魔法が大好きで正義感が強いというところかも。

「ちょっと待って。ペブル。そんな急に混ぜちゃダメだって!!」
 止めようとするリプルをスルーしたペブル。
 ドバドバ~。
 ペブルは、グラスに入ったにじ色の液体をティーカップに入ったオレンジ色のキューブの上に思いきりよく注いだ。
 1秒、2秒、3秒。

「うわ、成功しちゃった?」
 ペブルが得意げにティーカップをのぞき込もうとしたその時、オレンジ色の角砂糖はブワッと音を立てて燃え上がり、後には灰色の煙だけが残った。

「ゴホッ、ゲホッ」
 煙を吸って咳き込むペブルを
「もう、だから言ったのに。オレンジキューブをもとのオレンジに戻すコツは還元魔法の力をこめたジュースをゆっくり注ぐことだよ」
 リプルが、あきれながらたしなめる。

「大丈夫、次がんばるから!」
 ペブルは、にこ~っと笑った。
 8年前にくらべて体も大きくなったが、メンタルもさらに強くなっているようだ。

 ペブルの胸ポケットから口に赤いリボンをくわえたシマリスがひょっこり顔を出した。
 ペブルの使い魔のシズクである。

 シズクは「やっぱりかぁ~」とため息をつき、へらへらしているペブルの頭にのぼって、しっぽをふわりとふくらませると、リボンの木へと軽やかに飛び移った。

「こら、シズク!人の頭を踏み台にしない!」
 ペブルがシマリスをうらめしそうに見上げる。
「うふう。はい526回目の失敗。またも赤いリボンっと」
 シズクは、下から三番目の枝の先に赤いリボンを結びつけた。

 ペブルは、赤いリボンの木をみあげて肩を落とす。
「ねー、この魔法が失敗したら赤いリボンを結ぶっていうやり方、ものすごくへこむんだけど」

「だって、『失敗を見える化』しないと、ペブルはぜんぜん危機感ききかんを持たないから」
「ボクもリプルに賛成さんせいだな。さすがにヤバいと思うんだよなぁ」
 リプルのことばにシズクも前あしをくんで大きくうなずいた。

「ペブル、ホントに大丈夫なの? 来週はいよいよ魔法学校中等部の入学試験だよ。それまでに、きちんと基礎魔法くらいは使えるようになっておかないと魔女失格になっちゃうよ」
 リプルは、瞳に不安の色を浮かべつつ、ペブルを見る。

 ペブルのほうは、平手でドンと自分の胸をたたいた。
「大丈夫、私、本番に強いから」

「そうかなぁ」
 シズクが首をかしげる。
「ペブルはリプルと違って、繊細せんさいさが足りないよ。さじ加減がいい加減すぎるんだよ。少しはリプルを見習いなよ。リプルは、小学部でずーっと首席しゅせきだったんだよ。でも、そのパルであるペブルは基礎魔法すらあやしいなんて、使い魔として悲しいよ」

 するとペブルがへらっと笑った。
「でも私とリプルはパルらしくバランス取れてるよ。リプルが優秀な分、私が落ちこぼれ。だからバランスが取れてるんだよ。ほら、思い出して。小学部の入学試験のこと」

 シズクがブルブルと体をふるわせた。
「やだよ。思い出したくもない」

 リプルも当時のことを思いだして苦笑くしょうした。
「そういえば、小学部のテストのときも、ペブルはギリギリで受かったんだったね」

 小学部の入学試験では、一年前から育てた花が入学式までに咲くかどうかがためされた。
 この花、めんどうなことに、普通に水やりをするだけでは咲かない。
 毎日、花に向かって魔法の呪文を唱える必要があるのである。

 つまり幼稚園児のような幼い年齢でもきちんと毎日の魔法の訓練をこなせるかどうかが試されるというわけ。

 まじめなリプルは、毎日、同じ時間にしっかりと呪文をとなえ続け、小学部入学試験の一週間前に、虹色に輝く美しい花を咲かせることに成功した。
 
 しかし、ときどき呪文をとなえることを忘れてしまっていたペブルは、試験の前日になっても花が咲かないどころか、つぼみすらついていなかった。

 さすがのペブルもあせって、試験の前日は、ずっと眠らず朝になるまで、花に向かって必死に呪文を唱え続けた。

 それでもなにも変化がなく、あきらめようかとしたとき。
 朝日がのぼり始めたとたん、ポンとつぼみができた。
 最後の奇跡を信じて、ペブルは朝ごはんを食べつつ、学校に行く途中も、必死に呪文を唱えつづけた。
 すると、入学式が行われる学園の門をくぐったとたんに、水色の花がポンと咲いたのだった。

「あのときに一度、私は青ワンピを脱ぐ覚悟をしてるから、いまも落ち着いてるよ。ハハ。私ってきっと大器晩成系、滑り込みセーフタイプだよね」
 のんきなペブルに対して、リプルが表情をひきしめた。
「そもそも、もっと前から準備しておけば、こんなことにはならないの!」

 ペブルは、うんうんとうなずいたあと、手ではたはたと自分の顔をあおぎながら、へらっと笑った。
「ま、まぁもうここまでくれば、なるようにしかならないから。だめだったときはいさぎよく青ワンピを脱ぐし。大船に乗ったつもりでいて」

「「不安しかない」」
 リプルとシズクが声をそろえた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

未来スコープ  ―キスした相手がわからないって、どういうこと!?―

米田悠由
児童書・童話
「あのね、すごいもの見つけちゃったの!」 平凡な女子高生・月島彩奈が偶然手にした謎の道具「未来スコープ」。 それは、未来を“見る”だけでなく、“課題を通して導く”装置だった。 恋の予感、見知らぬ男子とのキス、そして次々に提示される不可解な課題── 彩奈は、未来スコープを通して、自分の運命に深く関わる人物と出会っていく。 未来スコープが映し出すのは、甘いだけではない未来。 誰かを想う気持ち、誰かに選ばれない痛み、そしてそれでも誰かを支えたいという願い。 夢と現実が交錯する中で、彩奈は「自分の気持ちを信じること」の意味を知っていく。 この物語は、恋と選択、そしてすれ違う想いの中で、自分の軸を見つけていく少女たちの記録です。 感情の揺らぎと、未来への確信が交錯するSFラブストーリー、シリーズ第2作。 読後、きっと「誰かを想うとはどういうことか」を考えたくなる一冊です。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

処理中です...