目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン

文字の大きさ
66 / 79
第四章 いよいよ、あの問題と向き合うときが来た

66. アンディの過去

しおりを挟む

≪私は、父上に……見捨てられたのだ≫

「見捨てられたって、どういうことだ?」

≪私は、七歳のときに原因不明の病に罹った。高熱が下がらず、回復魔法もポーションも効かなかった≫

 アンディの両親が様々な治療を試したが、どれも効果がないまま日にちだけが経っていく。
 そんなある日、熱に浮かされたアンディが耳にしたのは、両親が言い争う声だった。

≪母上は、父上に「行かないで!」と何度も懇願していた。しかし、父上は「行く!」と≫
 
「お父さんは、どこへ行ったんだ?」

≪どうやら、元の世界へ帰ってしまったようだった。私が父上の姿を見たのは……それが最後だ≫

「そんな……」

 病気の我が子を置いて、なぜ帰る必要があったのか。
 俺には、さっぱり理解できない。
 そして……アンディはそのまま亡くなってしまう。

≪トーアル村で初めて父上を見たときに、ようやく私のもとに帰ってきてくれたのだと思ったのだ≫

 そうか。
 だから、アンディは父親に対する想いが人一倍強いのか。
 普段は強気な態度でも、まだ幼い子供だもんな。

「俺は、アンディとトーラを置いていなくなることは絶対にない。約束する。ただし、寿命が尽きたときだけは許してくれ」

≪フフッ、父上は『人』であるからな≫

 アンディは不死のアンデッドだし、メガタイガー(トーラ)も百年くらいは生きると聞いている。
 俺が先に逝くのは確実だが、それまでは家族ずっと一緒だと、一人と一匹の前で改めて誓う。
 泣いているような顔で笑うアンディを直に抱きしめてやれないことが、つらい。
 苦しい気持ちにずっと気付いてやれなくて、本当にごめん。

≪今の私には、父上も弟もいる。だから、問題ない≫

「ハハハ……そうか」

 でも、『問題ない』わけがない。
 きっと、心は深く傷付いているだろう。
 

 ◇


 アンディは、父親に見捨てられたと思っている。
 でも、彼がわざわざそのタイミングであちらの世界へ帰ったのは、何か理由があるような気がしてならない。
 数百年前の出来事を、今からでも確かめるすべはないだろうか。
 あることを思いついた俺は、宰相さんへ相談をすることにした。

「勇者様のご希望とあらば、すぐに手配いたしましょう。所在はわかっておりますので」

「よろしくお願いします」

 どうか、俺のの予想が当たっていますように。


 ◇◇◇


 老齢の男性と、同年代と見られる少女の二人に付き添われ離宮へやって来たのは、黒髪の少年。
 やや大きめの、明らかに大人用の一張羅を借りてきました!と言わんばかりの恰好をしている。
 無理やり着せられた感がありありでつい笑ってしまいそうになるが、そういう俺も、国が用意してくれた貴族っぽい恰好を毎度させられているので人のことは言えない。

「初めまして、勇者様。僕…私は、リョーマ・ソネザキと申します」

「初めまして。俺はサカイと言います」

 リョーマは、十三歳。
 彼はまだ未成年のため、現在住んでいる帝都郊外の村の村長さんが保護者の代理として同行している。
 一緒に付いてきた少女は彼の幼なじみで、村長さんのお孫さんなのだとか。
 勇者を前にカチコチに緊張しているお祖父さんとは違い、孫娘はしっかりした子みたいだね。
 あまり緊張感のないリョーマを隣からあれこれ注意し、しっかりと目を光らせている。

⦅まるで、おぬしとルビーのようじゃのう⦆

 えっ?
 ルビーと一緒にいるときの俺って、こんな感じなのか。

⦅自覚がないとは、実に恐ろしいわい⦆

 い、今は、俺のことはどうでもいいだろう!
 それより、アンディは?

⦅客人が部屋に入ってくるなり、どこかへ行ってしまったようじゃ⦆

 そうか……。

⦅それにしても、こやつは珍しい属性を持っておる。さすがは、『勇者の末裔』と言うべきか……⦆

 そう。リョーマは、先の勇者の唯一の子孫。
 俺がどうしても面会したいと、宰相さんへお願いをしたのだった。
 
 それで、珍しい属性ってなんだろう?


     【名称】  リョーマ・ソネザキ/13歳
     【職業】  死霊使い/ランプト村
     【レベル】 38
     【魔力】  40
     【体力】  31
     【攻撃力】 魔法 39
           物理 27
     【防御力】 35
     【属性】  闇
     【スキル】 探知


 なるほど、闇属性か。
 そして、この歳ですでにBランクの冒険者並みのレベルとは……

 それにしても、本当によく似ている。
 瞳の色は違うけど、美少年なところがね。
 この『死霊使い』という職業は、『先祖返り』というやつなのかな。

⦅では、こやつが……⦆

 うん、アンディたちの子孫で間違いない。
 というか、時代は違えどこんなにいろんな国に勇者がいたら、ライデン王国でももっと勇者が認知されているはずだろう?

 リョーマは、日中に外でも活動できるアンデッドを使役して、畑を耕したり収穫をしたりして生計を立てているそう。
 彼にはずっと面倒を見てくれている老人がいて、その人は先祖代々ソネザキ家で従僕をしていた家系の者とのこと。
 ソネザキ家が爵位を返上したあとも、唯一付き従っていた使用人だ。
 高齢のため、今回帝都へは一緒に来ていない。

「先の勇者様についての記録が残っていればご覧になりたいとのことでしたが、残念ながら数代前の火災で焼失してしまったそうで……」

「そうですか……それは、残念です」

 村長さんが申し訳なさそうな顔をしているけど、何百年も前のことだからね。
 何か手掛かりがあればと期待したけど、こればかりは仕方ない。

「……ですが、ゆかりの品が一つだけ残っているとのことで、預かってまいりました」

「!?」

 村長さんが取り出したのは、布に包まれた物体……色あせてボロボロになった箱だった。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界に召喚されたぼっちはフェードアウトして農村に住み着く〜農耕神の手は救世主だった件〜

ルーシャオ
ファンタジー
林間学校の最中突然異世界に召喚された中学生の少年少女三十二人。沼間カツキもその一人だが、自分に与えられた祝福がまるで非戦闘職だと分かるとすみやかにフェードアウトした。『農耕神の手』でどうやって魔王を倒せと言うのか、クラスメイトの士気を挫く前に兵士の手引きで抜け出し、農村に匿われることに。 ところが、異世界について知っていくうちに、カツキは『農耕神の手』の力で目に見えない危機を発見して、対処せざるを得ないことに。一方でクラスメイトたちは意気揚々と魔王討伐に向かっていた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...