侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku

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5、軋む寝台

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 * * *

「は……あ、ん、ぁあ……っ」

 寝台が軋んで音を立てる。

 男の上にまたがり、彼のものを自分の中に受け入れたまま、腰を揺らす。
 外に漏れ聞こえるのではないかという心配もせずに、フィアリスは思いのまま喘いでいた。
 外の荒れ地で魔獣が吠えることがよくある。それは実に耳障りな声で、この館全体には防音の魔法が施されているのだった。

 中でもここの主の部屋、寝室には特に何重にも防音魔法をかけてあるから、何を口走ろうが心配はない。魔法をかけた自分が言うのだから間違いはなかった。

「あんっ、あ、……ジュー、ド、さまっ、ああっ」

 フィアリスは達して、身をのけぞらせた。
 こうしてこの人と交わっていると、帰ってきたのだという実感が湧く。
 いつもの寝台、いつもの体温、いつもの香り。

 ――ここが、私の場所。

 体勢を変えて、フィアリスは四つん這いになる。細い腰が大きな手によってつかまれる。
 これから襲われるであろう快楽への予感から、秘部がひくつくのがわかった。

「挿れるぞ」

 低く、温度のない声。背後にその声を聞くだけで、ぞくぞくと感じてしまう。
 先ほどまで相手のものを飲みこんでいたそこは、容易にまた迎え入れた。
 熱い大きな塊が、フィアリスを貫いた。内部を圧迫されて、小さなうめき声がもれる。だがそれはすぐに、甘ったるい嬌声へと変わっていった。

 その身体を知り抜いている主人は、的確に最も感じる部分を狙って動く。何度も、何度も。
 淫襞がこすられ、壮絶な快感に思考が崩れて溶かされる。

「ひ、ぁ……ああっあああっ」

 敷布を握りしめる指に力がこもった。

「やだ、や……」
「嫌か」
「いやじゃ、ない……、もっと……んあっ……あっ…ひっ」

 なんて淫らな声だろう、と自分でも思う。
 もっといやらしく振る舞って、この人を少しでも喜ばせてあげられたら。
 自分からも求めて、フィアリスも腰を揺らした。深い部分から快感の波が途切れることなく襲ってきた。

「ん……あああっ!!」

 熱を帯びて勃ち上がったそれを、大きな手でしごかれる。絶頂を迎えたフィアリスはまた果てた。恍惚で目の前が白く弾ける。
 体内を圧していた熱いものが引き抜かれると、少し名残惜しい心地がした。

 繋がっている時は求められていると錯覚する。それに応じている間は、罪悪感が少し薄らぐ。自分はもっと奉仕をしたいのだ。
 離れていく体温を引き戻したくて、思わず手がのびそうになるが、足が震えて力が入らない。

「あ……はぁっ……はぁっ……」

 息を切らし、フィアリスは寝台の上で腹這いになる。
 しばらく、静かな時間が続く。ジュードは座ったままで、フィアリスのやや乱れた呼吸音だけが聞こえていた。

「ジュード様、私はまだ、大丈夫ですけど……」

 身体が丈夫なのが取り柄なのだ。何度達しても望まれるだけ応えられる。傷の治りも早いから、どれだけ乱暴にされても大してつらくなかった。
 薄暗い部屋の中。
 ジュードの瞳は冷たい光を宿していた。猛禽よりも鋭いその視線。皆が怖いと言うけれど、フィアリスは一度も恐れたことがなかった。

 ジュードがフィアリスの髪へ指をさしいれ、櫛のようにしてすいた。

「お前には苦労をかけたな」

 おそらく、先ほどの報告の件だろう。王都での一悶着だ。

「苦労だなんて、そんな……どうってことないですよ」

 フィアリスは微笑む。

「疲れただろう。今夜はもう休め」

 それはジュードなりの気遣いなのかもしれなかった。厳しいが、決してここの主は横暴な男ではない。過剰な労働を強要したりはしないのだ。
 ぼうっとしながら、フィアリスは窓の外へと視線を動かした。夜はまだ長い。

 下唇を舐めると――甘い味がした。

(…………あ、)

 ふっと、ここに来る前の、弟子とのやりとりを思い出す。
 途端に、いたたまれない気持ちになった。寝台から降りようとするジュードへと、たまらずすがりつく。

「……フィアリス」

 厚い胸板。いくつになっても彼の身体は衰えを知らない。

「お願いします。もっと……してください。今夜は、酷くしてほしいんです」

 ジュードが目を細める。

「何かあったのか?」
「ありましたよ、言ったでしょう。王都で……。あんな男に犯されるのなんて、さほど気にしてなかったはずなんですけど、まだ思い出すんです。だから、あなたにその記憶を塗りつぶしてほしい。めちゃくちゃにしてくれませんか」

 嘘だ。自分は誰かに強姦されるのなんて慣れきっていて、本当に何とも思っていない。
 それなのに、軽い口付けが何故か胸をざわつかせて仕方ないのだ。

「お願い……」

 耳元で呟いて、ジュードの耳に舌をはわせる。
 すると寝台に組み敷かれて、フィアリスの望むようにまた行為は始められた。
 願いは聞き届けられて、先ほどよりも激しく腰が打ち付けられる。腹の中をこすられ、快楽に理性が吹き飛ばされるのが心地よかった。残っているのは真っ白な愉悦だけ。

 ――もっともっともっと、私のことなどいたわらずに、乱暴に、して。

「あっ、や…………っ」

 細い腕と脚を、ジュードの身体に絡ませる。
 侯爵の背中にある「傷」に指が触れた。

 ――ああ、みんなが幸せになったらいいのに。そのためだったら私は、いくら傷ついても構わないんだけどな。

「中にっ……出して、ジュード様ぁっ……あっ、いい、んぅっ」

 嬌声をあげながら、フィアリスは目尻から、誰にも知られない涙の一滴を流した。
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