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14、監禁生活
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その後、約束を守るかどうかは疑問だったが、ジルトは解放されたらしかった。その点だけは自ら外部と連絡を取り、フィアリスは確認した。
それなりの怪我はしているがとにかく無事であるという。
それからギリネアスの玩具となったフィアリスの生活は散々なものだった。
別邸に閉じこめられ、気の向くままにやってくる彼に何度も乱暴される日々だ。一応、表向きには「保護」ということになっていた。
ギリネアスは「たまたま負傷したフィアリス」を発見して「保護」し、「療養」させている。怪我の程度が重いため、王都の最先端の治療を受けさせてやっているというのだ。
その間、生活面での待遇は悪くなかった。上等な肉料理も、質の良いパンも食べさせられたし、一応手当もされている。夜毎の強姦を除けば虐待はされていない。
フィアリスは名は知られているが、人付き合いがほとんどないため人柄などは知らない者も多い。ギリネアスを油断させるため、ただ魔法の腕が良いだけで意志の弱い、繊細な青年を装った。
久々に面白い玩具が手に入ったのが余程嬉しかったのか、ギリネアスは張り切って毎晩フィアリスをいたぶった。
高揚感が伝わってきた。敵対する家で飼われている者に傷をつける喜び。しばらくはその遊びに夢中になっていた。
「こうやって毎晩、あのオヤジに突っこまれてるんだろ?」
「ああっ、やっ……ちが……います、……っん、そんなこと、していません……っ」
ギリネアスは怒張したそれをフィアリスの奥まで遠慮もなしにねじこんでくる。
「あぐっ……」
「上手にねだってみろよ。俺は優しいから、良くしてやるぜ」
「は、あ……う…………やっああ……」
乱暴にかき回されていくうちに、痛みは快感に置きかわっていく。
一つになった二人の影は石の壁にうつり、一緒になって揺れていた。打ち付けられる腰は動きが激しくなり、フィアリスの淫らな声も高まっていく。
部屋は狭いが寝台は高級品で、その上でフィアリスはギリネアスのものを受け入れていた。
撫でられ、くすぐられ、しゃぶられ、貫かれる。欲望のままに何度も繋がることを強要された。
この牢獄のような部屋で辱められた者がどれほどいただろう、とフィアリスは頭の片隅で考える。
「お前アイツの愛人だろ? この顔だ。手を出さない方がおかしい。それに、初めてじゃないらしいしな」
初めてを装うのは得意だったのだが、この手の遊びに精通している男には通用しなかった。
フィアリスは時間をかけて、あることをギリネアスやその取り巻き達に仕掛けていた。
記憶の操作と隠蔽だ。
少しずつ、自分の作ったシナリオと事実を入れ替えていく。
フィアリスのシナリオはこうだ。
ウェイブルフェンの屋敷の一つにとある男が侵入して捕まった。その男はリトスロードの名を口にする。
その後また屋敷に入ろうとした魔術師フィアリスは、古い友人から助けをこわれてやって来たと弁解した。
フィアリスはリトスロード領から滅多に出ないで王都にも詳しくない。だからここが、「まさか、違法な防護魔法を施している屋敷」がウェイブルフェン公爵家の屋敷だとは思わなかったとうろたえたのだ。
さらに、フィアリスは初め友人だと説明したが、実は男は自分の知られたくない秘密を――幼い頃に春を売って生活していたことの詳細を――握っているので、言うことを聞くしかなかったのだという事実をギリネアス側は知る。
侵入者がリトスロードの名を口にしたのは、フィアリスが関係者だったからで、自分が侯爵家と関係があるわけではない。
つまらない一人目の侵入者に興味を失ったギリネアスは、男を放逐する。そして、貞操のことをやたら気にしているらしいフィアリスを汚してやることに関心が移った。
とこういう流れだ。
部屋から出られないフィアリスは、ネズミを術の媒介にして屋敷に潜入させ、ジルトの痕跡を徹底的に消した。使用人達の記憶も書き換えた。
記憶の操作は困難を極める術だった。事実と反する点があると上手くはいかず、書き換えるシナリオが相手の思考パターンから外れていても綻びが生じる。
慎重で繊細で、神経を使う高度な術だった。だがこれで、ジルトは二度と狙われなくなる。
違法な防護魔法は事実ではあるが、交渉するだけのカードにはならないだろう。
夜になると術のせいでくたくたになったフィアリスは、嫌というほどギリネアスに抱かれて満身創痍だった。
昼は遠隔の術を使い、夜はギリネアスに接触しながら記憶をいじる。
本来ならギリネアスほどの魔力を操る相手なら、記憶に関する術など成功するはずもないのだが、体が交わっている間は多少なりとも無防備になるので隙をつけた。
以前からフィアリスはウェイブルフェンの人間に接触する機会がないかと考えていた。こちらの有益になることでもつかめれば、との思いもあって潜入したのだが、考えが甘かった。
この欲まみれの令息は、案外そういう失態をしでかさなかったのである。見かけほど愚かではなさそうだった。
逆にフィアリスからリトスロード家の機密を聞き出そうとするから、攻防戦になった。
今まで何度も他家の人間を「一時保護」して「世話」をしてやったという話は聞いていた。
そのうち解放する予定ではあったようだが、その前に教育を施して、自分好みのペットにしておきたかったのかもしれない。
さすがに放蕩息子なギリネアスは卑猥な遊戯も知り尽くして、あの手この手でフィアリスを壊していこうとする。
強力な媚薬を何度も盛られて、意識が遠のきそうになることも多々あった。
腕をつかまれるだけで達してしまい、常に絶頂の波が押し寄せて呂律も回らない。自白剤も混ぜてあっただろう。
「ちょっとは俺が喜ぶ話をしたらどうだ? 魔術師よ。これだけいかせてやったんだ。お礼はなしか?」
「あっ、ひ……やだ……い、や、ああああっああっ」
寝台に押さえつけられ、行為の途中で涙を流しながらいやいやとかぶりを振るフィアリスの顎をつかみ、ギリネアスはさらに口から薬を流しこむ。
「なんだかんだで喜んでるじゃねえか、この淫乱野郎」
「ほんと……に、私は、大したことは……知らない……ので……」
フィアリスの方もあらゆる薬に耐性があったので、そう簡単に口を割らない自信はあった。訓練のたまものだ。
自分ではいまいちわからないが、他人の欲情を煽る容姿をしているのは知っていた。それを利用することもあったし、薬のことは万一敵の手に落ちてまずいことになった時の備えである。
そんなこんなが続いて、治りかけた怪我をギリネアスにまた治療が長引きそうな目に遭わされたこともあったが、どうにか解放される日が来た。
端的に言えば飽きたのだろう。向こうだって遊びのつもりだったし、拘束するのも限度がある。殺すつもりも最初からない。
それに、思いの外勘の良いギリネアスのことだから、おかしいと思い始めたのだろう。あまりにもフィアリスが我慢強いことに。
どういじめようが結局完全に壊れてしまうことがない。これは自分ものせられているのではと気がついたのだ。
そうして、数ヶ月に渡る監禁生活は終わりを迎え、フィアリスも帰宅することができた。
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