侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます

muku

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57、初めての夜

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「いいんですね、フィアリス」
「……うん。でも君、がっかりしなかった? 私が積極的なことを言うと……引いたりしない?」

 清らかな人という想像を抱いていたのなら、それを壊してしまったかもしれない。

「いいえ。私も我慢の限界だったので、助かったくらいでしたけど」

 寝台に横たわるフィアリスにかぶさるようにして手をついたエヴァンは、ちょっとだけ困った顔をする。

「ただ私は初めてなので、上手くできるかわからないんですが」
「私は初めてじゃないから大丈夫だよ。……というか、初めてじゃなくて申し訳ないな」
「どういうことです?」
「だって男性はみんな、女性の初めてになりたがるだろう。処女じゃないと価値がなくなる、なんて言う人もいるくらいだから」

 自分は男なので、どう頑張ったところで女になどなれないし、元より処女膜もないのだが。
 エヴァンはそこで軽いため息をついた。

「世間の男の価値観なんてクソくらえですよ。あなたの価値は私が決めるのでご心配なく。誰と何度寝ようが、あなたはあなたじゃないですか。私にとって最高の人だ」

 また、エヴァンがフィアリスに軽く口づけをする。

「……愛しています、フィアリス」
「ありがとう。私も愛しているよ」


 エヴァンに愛撫されると、触れられたところが燃えるように熱くなる。体にいくつもの口づけを落とされ、それが心地良い。
 これまで幾度となく同じように誰かに触られてきたというのに、感じ方が全く違った。
 エヴァンの愛し方は、とても優しい。はっきりとした気持ちが動きにこめられていて、それが伝わるのだ。
 胸の突起をいじられ、歯で甘噛みされる。

「うっ……ん」

 刺激を受ける度に、もどかしい快感が体に広がっていく。
 ゆっくりと服をはぎとられていき、フィアリスの白い肢体が薄闇の中であらわになる。フィアリスにまたがるエヴァンが、じっくりとフィアリスの体をながめていた。

「あまり……見ないでほしいな……」
「どうしてです? こんなに綺麗なのに」

 腹部の下の、皮膚の薄いところに口づけをされてフィアリスは体を震わせた。

「あなたは綺麗だ、内側も外側も。私のフィアリス……」

 腿の内側を撫でられ、もうかなり反応している部分へ熱い吐息をかけられる。

「っ……」

 自分から誘っておいて情けないが、どんな態度をとっていいかわからなくて、顔を覆いたくなってしまう。
 フィアリスの立ち上がっているそれを、エヴァンは軽く舐めあげた。

「あ、え、エヴァンっ……!」

 やわやわと肌を撫でる指は、ついに秘部へと達した。

「ちょ、やっぱりちょっと待って……」
「無理です」

 慣らすために指が入れられると、フィアリスも声をこらえられなかった。

「あっ、あ……うん……っ、ひぅっ」

 中を触られていると意識すると顔に熱が集まってくる。
 あの子の指が、私の中に入っているんだ。
 甘い官能の痺れが走り、悶えそうになってしまう。

 他人に喜ばれるようにと、いつしか男にしてはやけに感じやすい体になってしまったが、エヴァンの前では息を乱すのも恥ずかしかった。

「あ、エヴァン……、君っ、本当に初めてなの……っ?」
「しっかり予習したんです。実習はしてないですけど」

(そういえば、いつからか私に誉められようと、この子はどんな科目も予習を欠かさないようになったっけ……)

 エヴァンは真面目なのである。

「恥ずかしい……」
「どうして?」
「わからない……こんなこと、初めてだから……っ」

 誰に裸を見られるのも、またがられるのも、足を開くのも抵抗がなかったのに、エヴァンが相手だと羞恥心に襲われて、いてもたってもいられなくなる。

「きっと私のことが好きだからですね」

 くすっとエヴァンが笑い、フィアリスの頭は沸騰しそうになった。
 ほぐされたそこがにわかにひくついていた。エヴァンが猛り立った自身を、入り口へと寄せる。
 本当に繋がるんだ、と思うとわずかに体が震えた。

 何か言おうとしたが言葉を紡ぐこともできず、熱い塊に貫かれた瞬間、思考も弾けた。

「あ、あああっ……エヴァン、ッ……!」
「苦しいですか?」
「んん……平気……」

 初めはゆっくりと、探るような動きだったが、次第に激しくなっていく。
 質量を増したエヴァンのものが、フィアリスの内部をこする。愉悦の波が下腹部から広がって、たまらずフィアリスはのけぞった。

「は、あっ……や、ん」

 抽挿の音が響く。経験したことのない快感が全身をに巡って、思考はとうに蕩けてしまった。

「……うっあ、あんっああッ、エヴァンっ……あ、あっ」

 エヴァンもいよいよ遠慮がなくなって、欲望に忠実にフィアリスを求めた。これまで耐えていた分、欲求を満たそうと灼熱が奥を穿つ。
 誰かと繋がるのが、一つになるのが、これほど気持ち良いことだとは知らなかった。
 愛されていると感じる。いつまででもこうしていたい。

「は、……フィアリス……っ!」
「エヴァンっ……好き、好きぃ……ッ、ん、ああっ、もっと……!」

 フィアリスはエヴァンにすがりついた。
 離したくない。離さないで、エヴァン。
 中を突かれて、フィアリスは何度も喘いだ。淫らで嫌いだった行為の時の声。今、耳に届く己の嬌声はかつてないほど偽りがなく、昂らせるものでしかなかった。

 性行は自分を罰するものか、何かのためのものでしかなかった。それがこんなにも幸せに満ちている。涙が溢れて仕方なかった。

 自分は心から望んで彼に抱かれている。愛を確かめるためだけに。

 エヴァンが望んでくれるから、私は幸せになろうと思う。
 彼がくれる愛を受け止めて、彼に返したい。

 激しく腰を打ちつけられて、熱が高まる。
 ほしい、もっと、彼がほしい。

 反応の良いところを見つけたエヴァンは執拗にそこを責め、フィアリスは全てを委ねて声を漏らすしかなかった。絶頂への期待に支配され、ひたすら快楽がもたらされるのを望んだ。
 羞恥も何もかもが、電流のように走る快感に焼かれて消える。
 生まれた喜悦が一点を目指して膨らんでいく。

「あ、エヴァン、もう、……あ、あッ、エヴァン」

 限界がきて、フィアリスが腰をくねらせた。欲望が爆ぜて、意識が飛びそうになる。

「あ、……あああーっ!」

 白濁した体液を噴き出して、フィアリスは達した。息が詰まって身体に力が入り、ぎゅうっと、中にあるエヴァンのものも強く締めあげる。

「くっ……う」

 刺激を受けて、エヴァンもフィアリスの中に迸らせせた。どくどくと脈打つように出続ける液体が、体内からじんわりと温める。
 エヴァンの精を受け入れて、満ち足りた気持ちになった。

 脱力した身体がわずかに震えている。喜びの涙が静かに流れていくのを感じていた。
 望まれずに奪われ続けて、望まれないのに捧げ続けたこの身。罪深い自分を、エヴァンは許して慰めてくれる。
 何より欲しかったものを、彼が与えてくれる。

「幸せですか、フィアリス」

 果てたフィアリスの頬を優しく撫でて、エヴァンがこぼれた涙をすくってくれた。

「うん……」

 息を切らして、フィアリスは微笑む。
 心からの笑顔に、エヴァンの顔も自然と綻んだ。愛おしげに目を細める。
 彼に見つめられるだけで、甘い幸福感が胸に広がる。

「私もです。私のところに来てくれて、ありがとう」

 静かな暗い塔の中で、二人はしっかりと抱きしめ合った。

「……そういえば、君は初めてだったんだね。私が君の初めてをもらっちゃったんだ。光栄だな」

 頭を撫でると、エヴァンは少し目をそらした。よく見えないが、たぶん真っ赤になってるのだろう。そのあどけない表情が、年相応に見える。
 初めてとは思えない様子で挑んだエヴァンだったが、必死に気取られないようにしている緊張を、フィアリスは感じとっていた。一瞬だけ震えていた指先。

「そうですよ、あなたが初めてで……最後です。私はあなた以外、いらない」

 こそばゆい言葉にはにかんで、フィアリスはエヴァンの顔を引き寄せると、唇を重ねた。

「好きだよ、私の可愛いエヴァン」
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