桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

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58限目 一眼レフカメラ

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(今日も色々ありすぎた)

 レイラはため息をつきながら歩いていた。ピアノの部屋につくと軽く扉を叩いてから開けた。いつも誰もいない部屋であるためノックの返事を聞かずにあけた。

 失敗であった。

 扉を開けて、一番に目に入ったのは兄のリョウの姿であった。彼はピアノの鍵盤から手をおろすと椅子に座ったまま、こちらを見ていた。

「使用中でしたのね。失礼しましたわ」

 と言ってレイラは、部屋に一歩も入らずに扉を閉めようとした。すると、リョウは素早く立ち上がり、その扉に足を入れて閉めるのを防いだ。

「待って下さい」

 レイラは眉をひそめて扉を開けた。
 リョウは足を引いてから手を動かし、レイラに中に入るように示した。レイラはしぶしぶ室内に入ると奥には入らずに扉の前に立った。

「なんですの?」
「そんなに怖い顔をしないでください」

 リョウは眉を下げて困った顔をした。

(面倒くさいなぁ。コイツは昔から俺(レイラ)についてまわるよな。でも、攻略対象なんだろう? 俺(レイラ)を没落させるんだよな)

「ご用はなんですの?」
「……伊藤カナエさんの事です。彼女は出迎えに来なかったですよね。しかもその原因が遊んでたらしいじゃないですか。それで、なぜ家政婦を変えないのですか?」
「出迎えはなくても問題ありません。お兄様は彼女の顔を見ているのですわよね?」
「……」

 リョウはレイラから視線を外して、床を見た。レイラは黙っている彼にため息をつくと、「お話になりませんわ」と言って扉から出て行ってしまった。

 リョウは止めようとしたが、その後の言葉が続かずに口を閉じた。
 リョウは、レイラが出て行った扉をじっと見つめた。その扉は動くことははなかった。

 リョウは立ち上がり、ピアノの部屋を出ると自室に向かった。部屋に戻るとすぐに椅子に座り引き出しから一枚の手紙を出した。

『二人が血縁関係にある確率は99%だ。この二人が誰だかは聞かないが、なにかあったら言いなさい。父』

 リョウは何度か手紙を読みなおしたが文字は変わることはなかった。

 その時。

 扉を叩く音がしてリョウは返事をするとリョウの専属家政婦であるユリコが頭を下げて現れた。

「もうそんな、時間ですか」

 リョウは腕にある時計を見ると立ち上がった。

 リョウはユリコが自分の鞄を持つのを確認すると部屋を出て車に向かった。そのリョウの後をユリコが追った。
 彼が車に近づくと、運転手の港が後部座席の扉を開けて頭を下げていた。車に乗り込むと続けてユリコも乗った。港はそれを確認すると運転席に座り、彼らに声を掛けてから出発した。

 しばらく車を走らせると、図書館が見えてきた。

 図書館の駐車場に車を止めた港は、後部座席にいるリョウの方を向いた。

「いつもよりも使用している徳山図書館より遠いので早めのご帰宅をお願い致します。門限に間に合わなくなります」

 港の言葉にリョウは頷き、いつもより1時間早い時間を伝えた。すると、港は納得したように頷いて、車から降り後部座席の扉を開けた。

 リョウは彼から黒のチョーカーを受け取ると後から降りてきたユリコに渡した。ユリコは自分の首にそれを着けた。

 港がその様子を見て目を細めたので、リョウは彼に笑顔をみせた。

「外出時に運転手の前で、首につけるという規則は守っています。それに、この事を父に報告しているですよね? 父からは何も言われてますか?」
「……“好きにさせろ”と仰せです。それと、“本人が責任を取れば良い”とも」

 ニヤリと笑うリョウを見て港は首を振った。

「レイラさんは素直に育って良かったですね」

 ユリコはボソリと言うと、港はそれに頷いた。リョウは「レイラさん? そうでしょうか」とニコリ二人に笑いかけると図書館に足を向けた。

 港とは黙って頭を下げ、ユリコは彼を慌てて追いかけた。

 リョウは図書館の正面玄関のまで来ると、建物を見上げた。ここは総合図書館であるためいつも行く、徳山図書館よりも大きく立派な建物であった。
 リョウはユリコの方を見ると、彼女は軽く頷き図書館の中に入っていった。リョウも中に入るとユリコが1階にいるのを確認してから階段を上り、3階の階段から一番遠い場所にある学習室に入った。

 学習室はすべて一人席であり、集中しやすい様に机がパーテーションで囲われていた。

 何人かの利用者がいたが、席は十分に空いていた。リョウは、室内をキョロキョロと見回すと、目当て人物を見つけて目を細めた。

 リョウはゆっくりとその人物のもとへ向かった。

 相手は全く気づいていないようであった。

 その人物の席の後ろに立つと、彼はそっと肩に触れた。

「……?」

 それに気づいて人物が眉を寄せて、振り向いた瞬間に顔を青くした。言葉がでないようであり、唇を震わせている。

「お久しぶりですね。河野(かわの)まゆらさん」

 彼は彼女に聞こえる程度の小さな声で話しかけた。彼女は慌てて、荷物をまとめて始めるとリョウはニヤニヤと笑った。

「また逃げるのですか?」

 そう言って、リョウはまゆらの前に一眼レフカメラを置いた。
 それを見て彼女は荷持をまとめる手をとめてビクリと体を震わせた。

 そして、彼の顔を見た。

 リョウは自分の眼鏡に触れながら、ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべ机の上にある一眼レフカメラに触れていた。

「これ、お返ししますよ」
「……」
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