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59限目 盗聴

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 まゆらは机に置かれた一眼レフを見て大きく息を吸ってからゆっくりと吐いた。そして、キッとリョウを睨みつけた。

「そんなに怖い顔をしないで下さい。すこしお話がしたいのです」

 まゆらは、首を横にふろうとした。するとリョウの口から“レイラ”と言う言葉がでたので仕方なく頷くとカメラを鞄に入れて立ち上がった。

 リョウは彼女がついてくるのを確認しながら、足を進めた。

 リョウはまゆらと共に図書館の屋上に出た。
 そこは誰もおらず、ベンチが数脚おいてあった。

 リョウが三人掛けのベンチに端に座ると、まゆらは彼から一人分席を離して同じベンチに座った。それを見てリョウはクスクスを口を押さえて笑った。

「私はこれでも学校では、隣に座りたいと望む女の子多いのですよ」
「そうですか」

 まゆらが素っ気ない返事をするとヤレヤレと首をふった。

「では、本題に入りますか。河野さんはいつから大学生をやっているのですか?」
「……?」

 まゆらは彼の言っているが意味がわからず、少し考えた後なにかに気づいたように顔を青くした。

「もしかして、眼鏡?」
「え……?」

 リョウは彼女の言ったことに驚いて目を大きくした。
 まゆらは彼の顔をじっと見た。

「なにか仕掛けがあるのですね? じゃないと、私の行動分かりませんよね? リョウさんはレイラさんよりは自由があるとは思いますが……。それでも頻繁な外出はできないはずです」
「よくご存じですね。妹だけではなく私のストーカーでもあるですか?」
「レイラさんを知ると、自然と貴方の情報もはいるだけです」

 まゆらが素っ気なく答えると、リョウは苦笑いをしながら自分の鞄から小さな機械を二つ出した。

 一つはスピーカーであった。まゆらは不思議そうな顔でそれを見つめた。彼はスピーカーともう一つの機械を繋げた。そしてその機械のボタンを押した。すると赤くランプが点滅を始めた。

「これですか」
『これですか』

 まゆらの話した言葉が、スピーカーからも聞こえた。彼女は目細めた。
 リョウは頷くと機械のボタンを押して、それをしまった。

「私も驚きました。まさか、自分と同じ事をしている人間がいるとは思いませんでした。妹に渡した眼鏡にも同じ機能がついていますよね」
「もう全部バレちゃったですね。なんでわかったですか?」
「周波数をかえたら、受診できました」
「そーですかぁ」

 まゆらは大きなため息をついてベンチに寄りかかった。

「あぁ、あそこで、意地はらずに眼鏡をアナタに返せばよかったですね。お金ももらえたし」
「本当にそう思ってますか?」

 まゆらはニヤリと笑った。その顔は今まで彼女がしていた表情とは異なる印象を持ち、リョウには悪意を感じた。

「私の事、盗聴していたなら分かりますよね。私はレイラちゃんの物はすべてほしいんですよ」
「あ、そうでしたね。君は」

 リョウは何かを思い出した何度か頷いた。

「へ~信じるんですね」

 まゆらは“意外”だとでも言いたげな顔をした。リョウは“うーん”と言いながら空を見上げた。
 太陽は傾き、空は赤く染まっていた。

「信じる……。どうでしょうか。だだ、君の知識は使えると思いました。それをすべて事実だとは思いませんが情報としては貴重です」
「へ~、以前は君に殴られて人間の情報だよ?」

 まゆらは小馬鹿にしたような話し方をした。リョウはため息を付くと席を詰めまゆらの隣に座った。

「近っ」
「殴ったのは、君が妹の盗撮をしていたからですよ。夜中に私有地に入ろうとするにはやりすぎですよ」
「貴方がいなければいい写真が撮れたのに残念です」

 舌打ちをして悔しがるまゆらにリョウは眉を寄せてため息をついた。

「私が止めなければ今頃君は警察ですよ」
「……はん。でその、ストーカーの私になんの用です? 眼鏡はかえしませんよ。これついている盗聴器は返してもいいですけど」
「それは上げますよ。そして、妹の眼鏡についているモノも外しませんしそれを、妹に伝えることもしません」
「え? いいですか? 妹の生活が知っちゃいますよ?」

 驚きのあまり、まゆらは心踊る気持ちで目を大きくしてリョウの方を見た。

 しかし。

 彼の顔を見た瞬間のその気持はどこかに行ってしまった。

「あ……。まさか、中村幸弘の事ですか? 教えろって?」
「察しが良くて助かります」

 笑顔のリョウは、まゆらにとってあまりいい存在ではなかった。
 まゆらは渋々、自分の知ってる情報を渡した。

「なるほど、では彼は妹を誘拐してイタズラしようとしているですね」
「そ、今メンバー集めていますよ」
「それと……」
「あぁ、伊藤カナエの事ですか? それは盗撮(それ)で聞いていますよね? 彼が“俺に孕ませた女”と武勇伝のように語っていましたし」
「それは本人の発言よりも正確な情報がありますので大丈夫です」
「そーですか」

 まゆらがぶっきらぼうに返すと、リョウは眉をひそめて人差し指を立てるとそれを振った。

「彼女がうちに家政婦として来た理由ですよ。見ていると彼女だいぶアレですし」
「あははは。発達に問題がありそうですね。でもレイラちゃんは彼女でいいみたいですよ」

 リョウが困っているのを楽しそう顔をして見るまゆらに「だから困っているです」とため息混じりで言った。

「あの人はアレだから、仕事がないんだよ。それで、幸弘(アイツ)が紹介したみたいですよ」
「はぁ?」

 リョウは驚きのあまり立ち上がった。

「怒りました? 続き聞いてください」
「……」

 リョウは深呼吸をすると、何も言わずにベンチに座りまゆらを睨んでいる。まゆらは“まぁまぁ”と手を振った。

「いやさ、幸弘(アイツ)は最初、彼女を風俗で働かせてようとしてたんですよね。だから私が、それだと彼女が裏の人間とつながったりして色々めんどくさいよって教えたです。それに大道寺家ならレイラちゃんの情報はいるじゃんって」
「……」
「大道寺が使っている家政婦派遣会社って紹介がないと登録できないじゃないですか? 幸弘(アイツ)の紹介なら、派遣先も選べますねしね」

 リョウは家政婦派遣会社の社長が幸弘の母方祖母であることを思い出した。彼は頷きながらまゆらの言葉の続きを待った。

「彼女はあんな感じなのでやることに悪意はないですよね」
「そうみたいですね」

 リョウは短い時間であるがカナエを見ていたから人なりは知っていた。だからこそ、レイラの負担になる彼女を辞めさせたいと思っていた。

「で、多分。レイラちゃんを呼び出すなら彼女を使うと思うですよね。むしろ、そのために彼女を大道寺に入れさせたですから」
「なるほど。確かに彼女を使ってくれた方がこちらとしてはやりやすいですね」

 リョウは納得して頷いた。

「分かってくて良かったです」

 嬉しそうにまゆらは笑うと、続いてリョウにそれの決行の日を伝えた。リョウが驚いているとまゆらは鼻をならした。

「この日に、この図書館裏にレイラが来る事をカナエに伝えてください。アタシも幸宏(アイツ)に伝えておくきますから」

 リョウが怪訝な顔をしていると、まゆらは一枚の写真を出した。それを見て彼は目を細めた。

「後ろ姿ならいけるとおもいません?」
「まさか、君ですか?」
「他に誰がいるんですか。余裕ですよ」
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