桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
59 / 131

59限目 盗聴

しおりを挟む
 まゆらは机に置かれた一眼レフを見て大きく息を吸ってからゆっくりと吐いた。そして、キッとリョウを睨みつけた。

「そんなに怖い顔をしないで下さい。すこしお話がしたいのです」

 まゆらは、首を横にふろうとした。するとリョウの口から“レイラ”と言う言葉がでたので仕方なく頷くとカメラを鞄に入れて立ち上がった。

 リョウは彼女がついてくるのを確認しながら、足を進めた。

 リョウはまゆらと共に図書館の屋上に出た。
 そこは誰もおらず、ベンチが数脚おいてあった。

 リョウが三人掛けのベンチに端に座ると、まゆらは彼から一人分席を離して同じベンチに座った。それを見てリョウはクスクスを口を押さえて笑った。

「私はこれでも学校では、隣に座りたいと望む女の子多いのですよ」
「そうですか」

 まゆらが素っ気ない返事をするとヤレヤレと首をふった。

「では、本題に入りますか。河野さんはいつから大学生をやっているのですか?」
「……?」

 まゆらは彼の言っているが意味がわからず、少し考えた後なにかに気づいたように顔を青くした。

「もしかして、眼鏡?」
「え……?」

 リョウは彼女の言ったことに驚いて目を大きくした。
 まゆらは彼の顔をじっと見た。

「なにか仕掛けがあるのですね? じゃないと、私の行動分かりませんよね? リョウさんはレイラさんよりは自由があるとは思いますが……。それでも頻繁な外出はできないはずです」
「よくご存じですね。妹だけではなく私のストーカーでもあるですか?」
「レイラさんを知ると、自然と貴方の情報もはいるだけです」

 まゆらが素っ気なく答えると、リョウは苦笑いをしながら自分の鞄から小さな機械を二つ出した。

 一つはスピーカーであった。まゆらは不思議そうな顔でそれを見つめた。彼はスピーカーともう一つの機械を繋げた。そしてその機械のボタンを押した。すると赤くランプが点滅を始めた。

「これですか」
『これですか』

 まゆらの話した言葉が、スピーカーからも聞こえた。彼女は目細めた。
 リョウは頷くと機械のボタンを押して、それをしまった。

「私も驚きました。まさか、自分と同じ事をしている人間がいるとは思いませんでした。妹に渡した眼鏡にも同じ機能がついていますよね」
「もう全部バレちゃったですね。なんでわかったですか?」
「周波数をかえたら、受診できました」
「そーですかぁ」

 まゆらは大きなため息をついてベンチに寄りかかった。

「あぁ、あそこで、意地はらずに眼鏡をアナタに返せばよかったですね。お金ももらえたし」
「本当にそう思ってますか?」

 まゆらはニヤリと笑った。その顔は今まで彼女がしていた表情とは異なる印象を持ち、リョウには悪意を感じた。

「私の事、盗聴していたなら分かりますよね。私はレイラちゃんの物はすべてほしいんですよ」
「あ、そうでしたね。君は」

 リョウは何かを思い出した何度か頷いた。

「へ~信じるんですね」

 まゆらは“意外”だとでも言いたげな顔をした。リョウは“うーん”と言いながら空を見上げた。
 太陽は傾き、空は赤く染まっていた。

「信じる……。どうでしょうか。だだ、君の知識は使えると思いました。それをすべて事実だとは思いませんが情報としては貴重です」
「へ~、以前は君に殴られて人間の情報だよ?」

 まゆらは小馬鹿にしたような話し方をした。リョウはため息を付くと席を詰めまゆらの隣に座った。

「近っ」
「殴ったのは、君が妹の盗撮をしていたからですよ。夜中に私有地に入ろうとするにはやりすぎですよ」
「貴方がいなければいい写真が撮れたのに残念です」

 舌打ちをして悔しがるまゆらにリョウは眉を寄せてため息をついた。

「私が止めなければ今頃君は警察ですよ」
「……はん。でその、ストーカーの私になんの用です? 眼鏡はかえしませんよ。これついている盗聴器は返してもいいですけど」
「それは上げますよ。そして、妹の眼鏡についているモノも外しませんしそれを、妹に伝えることもしません」
「え? いいですか? 妹の生活が知っちゃいますよ?」

 驚きのあまり、まゆらは心踊る気持ちで目を大きくしてリョウの方を見た。

 しかし。

 彼の顔を見た瞬間のその気持はどこかに行ってしまった。

「あ……。まさか、中村幸弘の事ですか? 教えろって?」
「察しが良くて助かります」

 笑顔のリョウは、まゆらにとってあまりいい存在ではなかった。
 まゆらは渋々、自分の知ってる情報を渡した。

「なるほど、では彼は妹を誘拐してイタズラしようとしているですね」
「そ、今メンバー集めていますよ」
「それと……」
「あぁ、伊藤カナエの事ですか? それは盗撮(それ)で聞いていますよね? 彼が“俺に孕ませた女”と武勇伝のように語っていましたし」
「それは本人の発言よりも正確な情報がありますので大丈夫です」
「そーですか」

 まゆらがぶっきらぼうに返すと、リョウは眉をひそめて人差し指を立てるとそれを振った。

「彼女がうちに家政婦として来た理由ですよ。見ていると彼女だいぶアレですし」
「あははは。発達に問題がありそうですね。でもレイラちゃんは彼女でいいみたいですよ」

 リョウが困っているのを楽しそう顔をして見るまゆらに「だから困っているです」とため息混じりで言った。

「あの人はアレだから、仕事がないんだよ。それで、幸弘(アイツ)が紹介したみたいですよ」
「はぁ?」

 リョウは驚きのあまり立ち上がった。

「怒りました? 続き聞いてください」
「……」

 リョウは深呼吸をすると、何も言わずにベンチに座りまゆらを睨んでいる。まゆらは“まぁまぁ”と手を振った。

「いやさ、幸弘(アイツ)は最初、彼女を風俗で働かせてようとしてたんですよね。だから私が、それだと彼女が裏の人間とつながったりして色々めんどくさいよって教えたです。それに大道寺家ならレイラちゃんの情報はいるじゃんって」
「……」
「大道寺が使っている家政婦派遣会社って紹介がないと登録できないじゃないですか? 幸弘(アイツ)の紹介なら、派遣先も選べますねしね」

 リョウは家政婦派遣会社の社長が幸弘の母方祖母であることを思い出した。彼は頷きながらまゆらの言葉の続きを待った。

「彼女はあんな感じなのでやることに悪意はないですよね」
「そうみたいですね」

 リョウは短い時間であるがカナエを見ていたから人なりは知っていた。だからこそ、レイラの負担になる彼女を辞めさせたいと思っていた。

「で、多分。レイラちゃんを呼び出すなら彼女を使うと思うですよね。むしろ、そのために彼女を大道寺に入れさせたですから」
「なるほど。確かに彼女を使ってくれた方がこちらとしてはやりやすいですね」

 リョウは納得して頷いた。

「分かってくて良かったです」

 嬉しそうにまゆらは笑うと、続いてリョウにそれの決行の日を伝えた。リョウが驚いているとまゆらは鼻をならした。

「この日に、この図書館裏にレイラが来る事をカナエに伝えてください。アタシも幸宏(アイツ)に伝えておくきますから」

 リョウが怪訝な顔をしていると、まゆらは一枚の写真を出した。それを見て彼は目を細めた。

「後ろ姿ならいけるとおもいません?」
「まさか、君ですか?」
「他に誰がいるんですか。余裕ですよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...