リノンさんは恋愛上手

そらどり

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初めてのデート編

現地集合の方がムードがある

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俺は駅前の広場に立っていた。休日も相まって人通りが尋常ではない。



時計を確認すると時刻は12時。待ち合わせ時刻だが、莉乃がやってくる気配はない。



そろそろやって来ても良いと思うけど……



「あ! 拓海、遅いよ!」



「え?」



横から声を掛けられて振り返る。莉乃だ。



「遅いって……まだ12時になったばかりだけど」



「デートなんだから15分前には集合してないと。これ、常識だから」



「それ、どこ情報なの……?」



疑問は潰えないが、それ以上に気がかりな点があった。



「というか莉乃の方こそ、今着いたんだろ? なら人のこと言えないじゃん」



「なんでよ? ずっとここで待ってたんだけど?」



「……ん? どういうこと? 俺だってずっとここで立ってたけど……」



「え? 拓海も?」



いまいち嚙み合っていない。



「え、もしかして……互いに気づかないまま広場の銅像前で並んで待ってた、ってこと?」



「……だな」



気づいた瞬間、羞恥で顔が赤くなる莉乃。



「待って噓でしょ……? そんなことある!? というか、なんでスマホ使わなかったの!?」



「だって……集合時刻なってないのに連絡したら、まるで急かしてるみたいじゃん」



「なんでそこで紳士振るの……!? あ―もう……! こんなことなら現地集合にしなきゃよかった……!」



「そうだよ、なんでそうしなかったの?」



「なんでって、ムードがないじゃん……。デートと言えば、駅前に集合して一緒に遊んで最後は名残惜しく別れる、この流れがオーソドックスなの。……なのに玄関出てすぐの廊下で待ち合わせなんて、最初からデート気分が台無しでしょ……」



確かにそうかもしれない。隣同士の幼馴染だからこその問題か。



「……ごめん。今日普通に一緒に帰ると思ってた」



「デートなんだから最初から最後まで役を全うする、これ鉄則」



莉乃は俺が思っていた以上に忠実な恋人関係をしたいらしい。



そう思っていると、莉乃は手を差し出す。



「え、なに?」



「え? 恋人といったら手繋ぐでしょ。ほら、早く早く」



言われるがままに手を伸ばす。



「どう……? 少しはどきどきした……?」



「うーん……、どきどきってよりかは、むしろ安心感の方が大きいかな」



「あ、そう」



「―――ちょ、いだだだ! 痛いって……! もっと優しく握ってよ……!」



先行く彼女の背中を追いかけながら、俺は握り潰されそうになる右手の痛みから必死で逃れる羽目になった。
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