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水族館デート編
もう答え合わせしてもいいんじゃないの?
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「いらっしゃいませー。ご注文をお伺いしますー」
店員さんの挨拶を待ち、俺は莉乃が欲しいものを注文する。
「あ、えと……あ、これを一つで……!」
「はい、ペンギンフロートですねー。ストローはお二つで宜しいでしょうかー?」
「え、二つ……?」
「はい、お連れの方とお楽しみになるのではと思いましてー。あ、もしかしてご家族の方でしたかー?」
「えと……か、家族では……ない…です……」
「そうでしたかー。でしたらお二つご用意いたしますねー。……あ、そうでした! ただいまカップルの方限定でこういったものをご用意させていただいているのですが、いかがいたしますか?」
そう言いながら取り出したのは、俗に言うカップルストロー。螺旋に巻かれたストローが途中で分かれてハートを形成していた。
「(な、なんだこれ……)」
初めて実物を目の当たりにし、思わず息を呑む。
「お客様、どうされますかー?」
「いや、流石にこれはちょっと……」
恥ずかしい、そう続けようとした。
でも数十分前のやり取りを思い出す。
そう、俺達は恋人だ。デートをしているんだ――――――
「……やっぱり、それでお願いします」
「え、ちょっと……!?」
堪らず莉乃が声を上がるが、俺は構わなかった。
「デートなんだから…このくらいはやらないと、だろ……?」
「で、でも……これは流石に……」
「……恋人になろうって言い出したの莉乃だろ? 今更逃げるのかよ?」
「それは……そうだけど……」
「手握ってんだから尚更だ、やらないと不自然だろ?」
「だ、だけど……恥ずかしい……」
「…………」
駄目だ。頭がふわふわしてて情緒がおかしくなっている。地に足がついていないみたいだ。
でも、今止まったらいけない気がして、俺は握っていた莉乃の手をさらに強く握る。
「!? ま、待って、これ以上は無理だって……っ! し、心臓がもたないから……!」
手を離そうとする莉乃だったが、強く握られたせいで全く抗えず、最後はもう片方の手で顔を隠しながら頷いた。
「分かったから……もう緩めて……ください……っ」
「ふふっ、可愛い彼女さんですねー」
追い打ちのように店員さんが感想を述べる。俺は会釈をし、受け取ったドリンクを片手にその場から離れた。
「……なんでそんなにいじめるの」
人がいない場所に移ると、莉乃が恨むように言う。莉乃の表情がぐちゃぐちゃなのは隣から見ても伝わってきた。
「いじめてなんか……俺だって恥ずかしかったし」
「でも目が笑ってた」
否定はしない。ころころ表情が変わる莉乃の反応が可愛くて、ついエスカレートしていた自覚はある。
「……お前って、あんなに顔赤くなるんだな。初めて知った」
「―――う、うるさい! 人の気持ちも知らずに……!」
「お、おい揺らすなよ……! フロートがこぼれるだろって!」
莉乃は感情を爆発させていた。両手の塞がっているのをいいことに、俺の胸元を叩き続ける。
それでも握っていた手を離すことはなかった。
「……それを言ったら拓海だってさっき、その……家族じゃないって言ってた……」
叩いていた手を止め、莉乃は俯きながら言葉を発した。
「! あ、あれは……言葉の綾で」
「嘘だよ! こういう時いっつも拓海、私のこと妹って馬鹿にするのに……」
「……たまたまだろ」
「たまたまって……こんな状況で冗談言える奴じゃないでしょ、拓海は」
「…………」
もたれかかる様に俺の胸元に手を置き、もう片方では依然として繋がったままの手。キュッと結ばれた口元。
とても、近い。
心臓の音が漏れていないか、それだけが不安だった。
「……飲み物、溶けちまう」
必死に取り繕った声で、俺は左手に持ったフロートを差し出す。
「ほら、莉乃の好きなペンギン……冷たいうちに飲んでやらないと、可哀そうだろ」
「私よりペンギンの方が大事なの……?」
「い、いや…そういうわけでは……」
どう返事すればいいのか分からず、俺にできたのは僅かな否定。
押し黙り、莉乃をただ見ていることしかできなかった。
莉乃も無言になり、ただ時間だけが過ぎていく。
すれ違う観光客がこちらを見ていたが、全く気にならない。
赤面する彼女に俺の目は奪われていたから。
「…………もう、答え合わせしてもいいんじゃないの?」
莉乃は気づいている。いや、気づいてしまった。俺の視線にも、そして俺の想いにも。
いつからなのかは分からない。でも、今はっきりと伝わってきた。
「……駄目だろ。俺の勘違い、かもしれない」
それでも俺にはできなかった。一歩踏み出す勇気がなかった。
だから自分を偽る。そうなんだと言い聞かせて、今まで繰り返してきたように。
「まだ……自信がもてない、から……」
そう、莉乃に伝えた。
でも反応はない。
ただ、一秒一秒が遠い。
心臓が痛い。とても、苦しい。
この気持ちこそが答えなのに、それでも偽ってしまう自分に。
「…………」
ごめん、と何度も心の中で謝った。
幼馴染という関係に甘えて、俺はずっと莉乃の気持ちから避けてきた。
数年前から何も変わっていない。俺はあの時からずっと逃げ続けている。
でも、怖いんだよ。
どんなに確信に近くても、もしかしたらと思ってしまう。
俺はただの幼馴染で、莉乃から向けられる気持ちは親愛なんじゃないかって……
そう思うと、足がすくむ。
だから、俺の気持ちに気づいてほしくなかったのに――――――
「……拓海」
その言葉に顔を上げる。
莉乃は小さく呼吸をし、握っていた手を離した。
「え……」
思わず、声が出てしまう。
そんな俺の動揺から一瞬、ゆっくりと差し出された腕がそのまま過ぎ、首元に巻かれていく。
姿勢が崩れ、前かがみになる。
「……少しだけ…許して」
莉乃が耳元でそう囁く。
そのまま少しずつ、甘い香りが濃くなっていく。
そして――――――
摘まむように、とても僅かだけど、莉乃の感触が当たる。
そして離れていく。ほのかな匂いが遠のいていく。
とても濃密な味……
一瞬の出来事だった。
でも、俺の口元にはいつまでも残り香が残っていた。
「こ、これが私の答え……十五年分の想い、全部込めたから」
唇に指を当て、莉乃は誰とも目が合わないよう視線を落としながらそう答えた。
でも、俺は返事ができない。
あまりの出来事に思考が飛んでしまった。
「私は示したよ。大事なファーストキス……私の初めて、やっと拓海に捧げられた」
初めて、その言葉に心臓が跳ねる。
いつまでも消えないこの感触が莉乃にとっての初めて。
莉乃が、あの莉乃が、俺にキスをしてくれた。その事実に、ただ頭が真っ白になる。
「莉乃……」
俺は彼女の名前を呼ぶことしかできない。
「あはは……やばい…なんだこれ……伝えられた達成感とドキドキが混ざって、今までの私じゃないみたいだ……」
そうこぼす莉乃。すると突然、莉乃がこちらに倒れ込んできた。
「ごめん…ちょっと無理だ、これ……ずっと緊張してたから、なんか急に…足に力が……」
身体を震わせ、今にも気を失いそうになっている。そんな莉乃を目の当たりにし、俺は気を確かにした。
「……今日はお開きにしよう。帰って休んだ方がいい……ちゃんと部屋まで送るから」
近くのベンチに座り、脱力する莉乃を隣で支える。
「うん……でも落ち着いたら、ね。今はまだ……この気持ちが心地良くって…なんだか夢の中にいるみたい……」
呼吸を繰り返す莉乃。息は少しだけ荒く、苦しそうに見えた。
「ねえ、聞こえてる? 私の心臓の音……すごく高鳴ってる。さっきからずっと止まらないんだ……」
「……うん、聞こえるよ」
目を瞑り、俺の肩に頭を預けてくる。
トクントクンと伝わってくる莉乃の音。でもそれが本当に莉乃のものなのか分からない。
自分の音が大きくて、混ざり合って、分からない。
「あのね……? 今だから言えるけど、ほんとは怖かったの。拓海はずっと私のこと…家族同然に思ってるって知ってたから……」
右手に莉乃の手が触れる。赤ん坊のように指を丸め、肌の感触を確かめるように俺の右手の甲をなぞっていた。
「家族から突然告白なんてされたら……普通はキモイとか馬鹿なのかって否定される。当然だよね……よく知る人がある日突然変貌するなんて、怖くて信じられないもん……私なら裏切られたって思うよ……」
「……だから、仮初めの恋人になろうって言い出したのか」
「やっぱり拓海は察しがいいね……そうだよ、異性として意識されたかったから…本当の私を見てもらいたかったから……」
「…………」
「ねえ……私って最低なのかな……拓海をもっと独り占めしたいって気持ちが溢れちゃってる……こんな私じゃ、拓海に嫌われちゃうのかな……」
強く手を握られる。息を荒立てながらも、最後の絞り出すように懸命に莉乃は俺の指を握っていた。
「これ以上はほんとに苦しくなるから無理、だけど……今だって好きって伝えたい……何回だって聞いてほしい……飽きるまでずっと…いつまでも馬鹿みたいにさ」
「それは……確かに馬鹿みたいだ」
「うん、馬鹿みたいでしょ? でも、そんな馬鹿みたいなことを幸せに思えたらって、期待しちゃうんだよ……」
「そっか」
「これまでもそう……部屋ではいつも拓海のことばかり考えてて、壁の向こうに拓海がいるんだって思ったら嬉しくて、幼馴染で良かったなって何度も何度も思ってた。会う度にときめいて、今すぐに好きって伝えたくて、でも嫌われるのが嫌だから言えなくて……」
「…………」
「もっと一緒にいたいの…朝でも昼でも夜でも、今日みたいに一日中ずっと―――」
ハッとしたのか、莉乃は名残惜しそうに指を離し、自身の膝に手を置いた。
「……ごめん、きもいよね。自分でもきもいって思うもん。こんなメンヘラな女だって知ってたら普通関わろうとしないよね……なのにごめん、裏切って……」
少し冷静になった莉乃は落ち着いた声でそう言った。
でも、先程よりも苦しそうに見える。後悔が入り混じり、自分で自分を否定し続けているようであった。
「うん、知らなかったよ。莉乃がそこまで俺に好意を抱いてくれてたなんて…流石にちょっとびっくりしたけど」
「幻滅したよね……ずっと幼馴染やってきたのに、本当にごめん……」
今にも泣きそうになる莉乃。
図らずも本当の自分を曝け出してしまい、今はただ後悔の念を抱いているのだろう。
否定されることを恐れ、ただただ俺に謝る姿は、これまで見たことのない俺の知らない莉乃だった。
「莉乃、顔上げてよ。大丈夫、怒らないって」
だから今度は俺から莉乃の手を握り返す。指の間に自身の指を差し入れ、固く握り返した。
「俺、むしろ嬉しいんだよ。莉乃をもっと知ることができたから」
莉乃へそう答える。本当に心からそう思ったから。
「……本当? 面倒な女って思わないの?」
「俺はむしろ嬉しかった……ほら、俺ってお前がいないとなんやかんやボッチだし……ある意味俺もメンヘラなところあるし……」
俺だって莉乃に俺のことをもっと知ってほしい。
たくさんのことを共有して、たくさんの思い出を作って、彼女の隣にいつまでも寄り添っていたい。
こんな独占欲が沸いてしまえば、もはや俺の勘違いでは片付けられない。
「…………全部莉乃のせいだからな。そんな真っ直ぐに想われたら……もう否定できないよ」
莉乃の気持ちにも、そして自分の気持ちにも、もう嘘はつけなかった。
寄りかかっていた莉乃の身体を強くこちらに寄せ、正面から莉乃を抱き込む。
「え……拓海……?」
突然のことに莉乃が困惑していた。
でも、俺は自分を誤魔化さないよう、莉乃の耳元にゆっくりと囁く―――
「好きだ、莉乃」
瞬間、莉乃がビクッと跳ねる。
何度も「えっ」と繰り返し、理解を拒んでいるように見えた。
だから、もう一度伝える。
「す、好きだって言ったんだよ」
「す、き―――……っ!?」
そう言うと、莉乃は息を荒立てながら、わなわなと震え出した。
「お、おい……なんで今更恥ずかしがってんだよ? もう俺の気持ち知ってんだろ……?」
「だ、だってぇ……! こんな近くで言われたら……っ、あ、拓海の匂いが…っ、ああ待って無理だって……し、死んじゃう……っ」
完全に脱力させ、全体重がこちらに襲ってくる。
「うあぁ…ヤバいって……恥ずかしいのに嬉しいし……っ、はぁはぁ……! ほ、ほんとに待って……っ、もう全然分かんないよ……!」
顔を埋め、小刻みに横に振る莉乃。髪がチクチクして痛い……
そう思っていると、莉乃は次第に嗚咽を漏らし始めた。
「うわああぁぁぁぁああぁぁぁぁああぁ……っ! ぅううぅっ、私を好きってぇぇっ、拓海が言ったぁぁぁあああ…………っ!」
何度も声をかけたが、莉乃に俺の声は全く届かなかった。
とにかく落ち着かせようと思い、背中をさすることに。
「うぅっ……っ、あ、ちょっと待って、触んないで……っ、絶対汗かいてるから……恥ずかしいって……っ」
「……今更だよ、もう」
「じゃあっ、もっと強く抱きしめてよぉ……っ! 痛いくらいにギュってしてよぉ……っ!」
「急に図々しいな、おい」
でも嫌だとは思わない。要求通り、強く抱きしめる。
莉乃の熱い体温が濃密に伝わってくる。汗なんてどうでもいい。
きっと俺も恥ずかしさでどうかしていると思うから。
「ああぁぁ安心する……拓海の匂いがする……!」
「莉乃って、そんなに匂いフェチだったのか」
「……はぁ、だって拓海が悪いんだもん……。いっつも隣でいい匂い出してるから、あぁもう好き……!」
初めて知った。莉乃は意外とそういう癖をお持ちのようだ。
「でも……好きなんでしょ? こんな面倒な幼馴染でも好きって言ってくれたもんね? もう取り消せないよ?」
「そうじゃないって、ただ妙に納得したというか」
俺の部屋に来た時、莉乃が隣に座ることを望んでいた理由。てっきり、誘惑するためだけに隣に来たのだとばかり。
あの時は、俺も勘違いしないように必死だった。
「まあ……莉乃が好きならそれでいいよ」
「ほんと? じゃあ今度泊まりに行ってもいい? 私、あの部屋大好き! あ、もちろん叔母さんにはちゃんと言うからさ」
「いや、小学生じゃないんだから流石にまずいって……」
「じゃあ突貫工事する? ドリルで穴開けて、拓海の部屋と行き来できるようにさ」
「軽いノリでやるもんじゃないだろ、それ……マンションなんだから管理人に怒られるぞ?」
「じゃあ私の部屋に泊まる? ベッドに拓海の匂いがつくならなんでもするよ?」
「お前……! そ、それも却下だ」
多分、莉乃は昂りすぎて酔いが回っているような状態なのでは……?
それ程に、通常とはかけ離れた倫理観だった。
「……莉乃、少しは考えて言葉にしろよ。後で絶対後悔すると思うぞ」
一応注意はしておく。でも、こんな莉乃を見れるのは新鮮だ。もう少しだけ堪能したい欲も同時に芽生えていた。
「だってぇ……もしかしたら今までの全部が夢かもしれないし……それだったら私、ずっとこのままがいい……」
「夢じゃないって…………な、なら、もう一回だけさ……キ、キスするか……?」
「でも……それで目が覚めたら嫌だよ?」
「白雪姫じゃないんだから……」
「え……! 私、お姫様……っ!?」
駄目だ。確かに莉乃は夢の中にいるみたいだ。いや、童話を持ち出した俺も同罪か。
でも恥ずかしいのは今更なんだ。ここまで言ったら、もうするしかない……!
「ほら、莉乃……」
そう言いながら莉乃の頬に手を置く。
すると、莉乃は嬉しそうに目を瞑ってくれた。迷いのない信頼に、こちらも嬉しさがこみ上げてくる。
本来ならば、俺がキスをしてあげるべきだった。
でも、初めては莉乃に奪われてしまった。それが少しだけ心残りになっていた。
「……じゃあ、するよ?」
莉乃は何も言わない。瞳を閉じて、ただ俺の証明を待っていた。
落ち着いて、そうだ、ゆっくりでいい。
俺が彼女に捧げるキスは絶対に失敗できない。
この先何年も、何十年も、初めした今日を思い出すから。
俺にとっても、莉乃にとっても、永遠にかけがえのない思い出にしたいから。
「(綺麗な唇だ……)」
初めて目の当たりにする莉乃の顔。いつもは見ないように避けてきた。
でもこれからは違う。
肌の艶めきも、長いまつげも、潤った唇も、全部全部独占したい。
今緊張していたら、それは叶わないんだ。
「…………」
俺も目を瞑る。
そしてゆっくりでいい。この瞬間を楽しむように、丁寧に、ゆっくりと、俺は顔を近づけて――――――
「―――あの……お客様?」
「……ん?」
なんか今……、聞き慣れない声が耳に入ってきたような……
気になり振り向く。
すると、
「え……?」
周りには大勢の観光客がこちらにスマホを向けて立っていた。
え、なにこの状況……?
困惑して、目をぱちくりさせていると、先程の声の主が再び声をかけてくる。
「お客様、他の方たちのご迷惑となりますので、そう言った行為は館内ではご遠慮いただいております」
声の主は、さっきの店員さんだった。
少し赤らめながら、耳打ちをするように続ける。
「カップルと言えども、それ以上は流石に……店の前でそういったものを見せられると、その……営業妨害にもなりますので……それに人だかりも……」
周囲を見渡す。
映画の撮影やら、卑猥なカップルやら、憶測が飛び交っていた。
「――――――…………ッ!?」
ようやく事態を把握する。すぐに謝り、その場から去ろうとした。
「リ、莉乃……! 立てるか……!?」
腕を引っ張り莉乃を立たせる。が、莉乃はぶつぶつと独り言を呟いていて、一向に顔を上げようとしない。
「やっぱり夢だったんだ……じゃあどこからが夢でどこまでが現実……? え、待ってもしかしたら初めから……?」
「夢じゃないから……! ほら、行くぞ……!」
足早にその場を去る。もうデートどころではなかった。
ベンチに置いていたペンギンフロートもとっくに溶け、莉乃の好きなペンギンも姿を消していた。
「(くそ……ッ! キス失敗してんじゃねーかッ!)」
水族館から退館するまでの間、俺の頭ではずっとそんな考えがぐるぐると回っていた。
店員さんの挨拶を待ち、俺は莉乃が欲しいものを注文する。
「あ、えと……あ、これを一つで……!」
「はい、ペンギンフロートですねー。ストローはお二つで宜しいでしょうかー?」
「え、二つ……?」
「はい、お連れの方とお楽しみになるのではと思いましてー。あ、もしかしてご家族の方でしたかー?」
「えと……か、家族では……ない…です……」
「そうでしたかー。でしたらお二つご用意いたしますねー。……あ、そうでした! ただいまカップルの方限定でこういったものをご用意させていただいているのですが、いかがいたしますか?」
そう言いながら取り出したのは、俗に言うカップルストロー。螺旋に巻かれたストローが途中で分かれてハートを形成していた。
「(な、なんだこれ……)」
初めて実物を目の当たりにし、思わず息を呑む。
「お客様、どうされますかー?」
「いや、流石にこれはちょっと……」
恥ずかしい、そう続けようとした。
でも数十分前のやり取りを思い出す。
そう、俺達は恋人だ。デートをしているんだ――――――
「……やっぱり、それでお願いします」
「え、ちょっと……!?」
堪らず莉乃が声を上がるが、俺は構わなかった。
「デートなんだから…このくらいはやらないと、だろ……?」
「で、でも……これは流石に……」
「……恋人になろうって言い出したの莉乃だろ? 今更逃げるのかよ?」
「それは……そうだけど……」
「手握ってんだから尚更だ、やらないと不自然だろ?」
「だ、だけど……恥ずかしい……」
「…………」
駄目だ。頭がふわふわしてて情緒がおかしくなっている。地に足がついていないみたいだ。
でも、今止まったらいけない気がして、俺は握っていた莉乃の手をさらに強く握る。
「!? ま、待って、これ以上は無理だって……っ! し、心臓がもたないから……!」
手を離そうとする莉乃だったが、強く握られたせいで全く抗えず、最後はもう片方の手で顔を隠しながら頷いた。
「分かったから……もう緩めて……ください……っ」
「ふふっ、可愛い彼女さんですねー」
追い打ちのように店員さんが感想を述べる。俺は会釈をし、受け取ったドリンクを片手にその場から離れた。
「……なんでそんなにいじめるの」
人がいない場所に移ると、莉乃が恨むように言う。莉乃の表情がぐちゃぐちゃなのは隣から見ても伝わってきた。
「いじめてなんか……俺だって恥ずかしかったし」
「でも目が笑ってた」
否定はしない。ころころ表情が変わる莉乃の反応が可愛くて、ついエスカレートしていた自覚はある。
「……お前って、あんなに顔赤くなるんだな。初めて知った」
「―――う、うるさい! 人の気持ちも知らずに……!」
「お、おい揺らすなよ……! フロートがこぼれるだろって!」
莉乃は感情を爆発させていた。両手の塞がっているのをいいことに、俺の胸元を叩き続ける。
それでも握っていた手を離すことはなかった。
「……それを言ったら拓海だってさっき、その……家族じゃないって言ってた……」
叩いていた手を止め、莉乃は俯きながら言葉を発した。
「! あ、あれは……言葉の綾で」
「嘘だよ! こういう時いっつも拓海、私のこと妹って馬鹿にするのに……」
「……たまたまだろ」
「たまたまって……こんな状況で冗談言える奴じゃないでしょ、拓海は」
「…………」
もたれかかる様に俺の胸元に手を置き、もう片方では依然として繋がったままの手。キュッと結ばれた口元。
とても、近い。
心臓の音が漏れていないか、それだけが不安だった。
「……飲み物、溶けちまう」
必死に取り繕った声で、俺は左手に持ったフロートを差し出す。
「ほら、莉乃の好きなペンギン……冷たいうちに飲んでやらないと、可哀そうだろ」
「私よりペンギンの方が大事なの……?」
「い、いや…そういうわけでは……」
どう返事すればいいのか分からず、俺にできたのは僅かな否定。
押し黙り、莉乃をただ見ていることしかできなかった。
莉乃も無言になり、ただ時間だけが過ぎていく。
すれ違う観光客がこちらを見ていたが、全く気にならない。
赤面する彼女に俺の目は奪われていたから。
「…………もう、答え合わせしてもいいんじゃないの?」
莉乃は気づいている。いや、気づいてしまった。俺の視線にも、そして俺の想いにも。
いつからなのかは分からない。でも、今はっきりと伝わってきた。
「……駄目だろ。俺の勘違い、かもしれない」
それでも俺にはできなかった。一歩踏み出す勇気がなかった。
だから自分を偽る。そうなんだと言い聞かせて、今まで繰り返してきたように。
「まだ……自信がもてない、から……」
そう、莉乃に伝えた。
でも反応はない。
ただ、一秒一秒が遠い。
心臓が痛い。とても、苦しい。
この気持ちこそが答えなのに、それでも偽ってしまう自分に。
「…………」
ごめん、と何度も心の中で謝った。
幼馴染という関係に甘えて、俺はずっと莉乃の気持ちから避けてきた。
数年前から何も変わっていない。俺はあの時からずっと逃げ続けている。
でも、怖いんだよ。
どんなに確信に近くても、もしかしたらと思ってしまう。
俺はただの幼馴染で、莉乃から向けられる気持ちは親愛なんじゃないかって……
そう思うと、足がすくむ。
だから、俺の気持ちに気づいてほしくなかったのに――――――
「……拓海」
その言葉に顔を上げる。
莉乃は小さく呼吸をし、握っていた手を離した。
「え……」
思わず、声が出てしまう。
そんな俺の動揺から一瞬、ゆっくりと差し出された腕がそのまま過ぎ、首元に巻かれていく。
姿勢が崩れ、前かがみになる。
「……少しだけ…許して」
莉乃が耳元でそう囁く。
そのまま少しずつ、甘い香りが濃くなっていく。
そして――――――
摘まむように、とても僅かだけど、莉乃の感触が当たる。
そして離れていく。ほのかな匂いが遠のいていく。
とても濃密な味……
一瞬の出来事だった。
でも、俺の口元にはいつまでも残り香が残っていた。
「こ、これが私の答え……十五年分の想い、全部込めたから」
唇に指を当て、莉乃は誰とも目が合わないよう視線を落としながらそう答えた。
でも、俺は返事ができない。
あまりの出来事に思考が飛んでしまった。
「私は示したよ。大事なファーストキス……私の初めて、やっと拓海に捧げられた」
初めて、その言葉に心臓が跳ねる。
いつまでも消えないこの感触が莉乃にとっての初めて。
莉乃が、あの莉乃が、俺にキスをしてくれた。その事実に、ただ頭が真っ白になる。
「莉乃……」
俺は彼女の名前を呼ぶことしかできない。
「あはは……やばい…なんだこれ……伝えられた達成感とドキドキが混ざって、今までの私じゃないみたいだ……」
そうこぼす莉乃。すると突然、莉乃がこちらに倒れ込んできた。
「ごめん…ちょっと無理だ、これ……ずっと緊張してたから、なんか急に…足に力が……」
身体を震わせ、今にも気を失いそうになっている。そんな莉乃を目の当たりにし、俺は気を確かにした。
「……今日はお開きにしよう。帰って休んだ方がいい……ちゃんと部屋まで送るから」
近くのベンチに座り、脱力する莉乃を隣で支える。
「うん……でも落ち着いたら、ね。今はまだ……この気持ちが心地良くって…なんだか夢の中にいるみたい……」
呼吸を繰り返す莉乃。息は少しだけ荒く、苦しそうに見えた。
「ねえ、聞こえてる? 私の心臓の音……すごく高鳴ってる。さっきからずっと止まらないんだ……」
「……うん、聞こえるよ」
目を瞑り、俺の肩に頭を預けてくる。
トクントクンと伝わってくる莉乃の音。でもそれが本当に莉乃のものなのか分からない。
自分の音が大きくて、混ざり合って、分からない。
「あのね……? 今だから言えるけど、ほんとは怖かったの。拓海はずっと私のこと…家族同然に思ってるって知ってたから……」
右手に莉乃の手が触れる。赤ん坊のように指を丸め、肌の感触を確かめるように俺の右手の甲をなぞっていた。
「家族から突然告白なんてされたら……普通はキモイとか馬鹿なのかって否定される。当然だよね……よく知る人がある日突然変貌するなんて、怖くて信じられないもん……私なら裏切られたって思うよ……」
「……だから、仮初めの恋人になろうって言い出したのか」
「やっぱり拓海は察しがいいね……そうだよ、異性として意識されたかったから…本当の私を見てもらいたかったから……」
「…………」
「ねえ……私って最低なのかな……拓海をもっと独り占めしたいって気持ちが溢れちゃってる……こんな私じゃ、拓海に嫌われちゃうのかな……」
強く手を握られる。息を荒立てながらも、最後の絞り出すように懸命に莉乃は俺の指を握っていた。
「これ以上はほんとに苦しくなるから無理、だけど……今だって好きって伝えたい……何回だって聞いてほしい……飽きるまでずっと…いつまでも馬鹿みたいにさ」
「それは……確かに馬鹿みたいだ」
「うん、馬鹿みたいでしょ? でも、そんな馬鹿みたいなことを幸せに思えたらって、期待しちゃうんだよ……」
「そっか」
「これまでもそう……部屋ではいつも拓海のことばかり考えてて、壁の向こうに拓海がいるんだって思ったら嬉しくて、幼馴染で良かったなって何度も何度も思ってた。会う度にときめいて、今すぐに好きって伝えたくて、でも嫌われるのが嫌だから言えなくて……」
「…………」
「もっと一緒にいたいの…朝でも昼でも夜でも、今日みたいに一日中ずっと―――」
ハッとしたのか、莉乃は名残惜しそうに指を離し、自身の膝に手を置いた。
「……ごめん、きもいよね。自分でもきもいって思うもん。こんなメンヘラな女だって知ってたら普通関わろうとしないよね……なのにごめん、裏切って……」
少し冷静になった莉乃は落ち着いた声でそう言った。
でも、先程よりも苦しそうに見える。後悔が入り混じり、自分で自分を否定し続けているようであった。
「うん、知らなかったよ。莉乃がそこまで俺に好意を抱いてくれてたなんて…流石にちょっとびっくりしたけど」
「幻滅したよね……ずっと幼馴染やってきたのに、本当にごめん……」
今にも泣きそうになる莉乃。
図らずも本当の自分を曝け出してしまい、今はただ後悔の念を抱いているのだろう。
否定されることを恐れ、ただただ俺に謝る姿は、これまで見たことのない俺の知らない莉乃だった。
「莉乃、顔上げてよ。大丈夫、怒らないって」
だから今度は俺から莉乃の手を握り返す。指の間に自身の指を差し入れ、固く握り返した。
「俺、むしろ嬉しいんだよ。莉乃をもっと知ることができたから」
莉乃へそう答える。本当に心からそう思ったから。
「……本当? 面倒な女って思わないの?」
「俺はむしろ嬉しかった……ほら、俺ってお前がいないとなんやかんやボッチだし……ある意味俺もメンヘラなところあるし……」
俺だって莉乃に俺のことをもっと知ってほしい。
たくさんのことを共有して、たくさんの思い出を作って、彼女の隣にいつまでも寄り添っていたい。
こんな独占欲が沸いてしまえば、もはや俺の勘違いでは片付けられない。
「…………全部莉乃のせいだからな。そんな真っ直ぐに想われたら……もう否定できないよ」
莉乃の気持ちにも、そして自分の気持ちにも、もう嘘はつけなかった。
寄りかかっていた莉乃の身体を強くこちらに寄せ、正面から莉乃を抱き込む。
「え……拓海……?」
突然のことに莉乃が困惑していた。
でも、俺は自分を誤魔化さないよう、莉乃の耳元にゆっくりと囁く―――
「好きだ、莉乃」
瞬間、莉乃がビクッと跳ねる。
何度も「えっ」と繰り返し、理解を拒んでいるように見えた。
だから、もう一度伝える。
「す、好きだって言ったんだよ」
「す、き―――……っ!?」
そう言うと、莉乃は息を荒立てながら、わなわなと震え出した。
「お、おい……なんで今更恥ずかしがってんだよ? もう俺の気持ち知ってんだろ……?」
「だ、だってぇ……! こんな近くで言われたら……っ、あ、拓海の匂いが…っ、ああ待って無理だって……し、死んじゃう……っ」
完全に脱力させ、全体重がこちらに襲ってくる。
「うあぁ…ヤバいって……恥ずかしいのに嬉しいし……っ、はぁはぁ……! ほ、ほんとに待って……っ、もう全然分かんないよ……!」
顔を埋め、小刻みに横に振る莉乃。髪がチクチクして痛い……
そう思っていると、莉乃は次第に嗚咽を漏らし始めた。
「うわああぁぁぁぁああぁぁぁぁああぁ……っ! ぅううぅっ、私を好きってぇぇっ、拓海が言ったぁぁぁあああ…………っ!」
何度も声をかけたが、莉乃に俺の声は全く届かなかった。
とにかく落ち着かせようと思い、背中をさすることに。
「うぅっ……っ、あ、ちょっと待って、触んないで……っ、絶対汗かいてるから……恥ずかしいって……っ」
「……今更だよ、もう」
「じゃあっ、もっと強く抱きしめてよぉ……っ! 痛いくらいにギュってしてよぉ……っ!」
「急に図々しいな、おい」
でも嫌だとは思わない。要求通り、強く抱きしめる。
莉乃の熱い体温が濃密に伝わってくる。汗なんてどうでもいい。
きっと俺も恥ずかしさでどうかしていると思うから。
「ああぁぁ安心する……拓海の匂いがする……!」
「莉乃って、そんなに匂いフェチだったのか」
「……はぁ、だって拓海が悪いんだもん……。いっつも隣でいい匂い出してるから、あぁもう好き……!」
初めて知った。莉乃は意外とそういう癖をお持ちのようだ。
「でも……好きなんでしょ? こんな面倒な幼馴染でも好きって言ってくれたもんね? もう取り消せないよ?」
「そうじゃないって、ただ妙に納得したというか」
俺の部屋に来た時、莉乃が隣に座ることを望んでいた理由。てっきり、誘惑するためだけに隣に来たのだとばかり。
あの時は、俺も勘違いしないように必死だった。
「まあ……莉乃が好きならそれでいいよ」
「ほんと? じゃあ今度泊まりに行ってもいい? 私、あの部屋大好き! あ、もちろん叔母さんにはちゃんと言うからさ」
「いや、小学生じゃないんだから流石にまずいって……」
「じゃあ突貫工事する? ドリルで穴開けて、拓海の部屋と行き来できるようにさ」
「軽いノリでやるもんじゃないだろ、それ……マンションなんだから管理人に怒られるぞ?」
「じゃあ私の部屋に泊まる? ベッドに拓海の匂いがつくならなんでもするよ?」
「お前……! そ、それも却下だ」
多分、莉乃は昂りすぎて酔いが回っているような状態なのでは……?
それ程に、通常とはかけ離れた倫理観だった。
「……莉乃、少しは考えて言葉にしろよ。後で絶対後悔すると思うぞ」
一応注意はしておく。でも、こんな莉乃を見れるのは新鮮だ。もう少しだけ堪能したい欲も同時に芽生えていた。
「だってぇ……もしかしたら今までの全部が夢かもしれないし……それだったら私、ずっとこのままがいい……」
「夢じゃないって…………な、なら、もう一回だけさ……キ、キスするか……?」
「でも……それで目が覚めたら嫌だよ?」
「白雪姫じゃないんだから……」
「え……! 私、お姫様……っ!?」
駄目だ。確かに莉乃は夢の中にいるみたいだ。いや、童話を持ち出した俺も同罪か。
でも恥ずかしいのは今更なんだ。ここまで言ったら、もうするしかない……!
「ほら、莉乃……」
そう言いながら莉乃の頬に手を置く。
すると、莉乃は嬉しそうに目を瞑ってくれた。迷いのない信頼に、こちらも嬉しさがこみ上げてくる。
本来ならば、俺がキスをしてあげるべきだった。
でも、初めては莉乃に奪われてしまった。それが少しだけ心残りになっていた。
「……じゃあ、するよ?」
莉乃は何も言わない。瞳を閉じて、ただ俺の証明を待っていた。
落ち着いて、そうだ、ゆっくりでいい。
俺が彼女に捧げるキスは絶対に失敗できない。
この先何年も、何十年も、初めした今日を思い出すから。
俺にとっても、莉乃にとっても、永遠にかけがえのない思い出にしたいから。
「(綺麗な唇だ……)」
初めて目の当たりにする莉乃の顔。いつもは見ないように避けてきた。
でもこれからは違う。
肌の艶めきも、長いまつげも、潤った唇も、全部全部独占したい。
今緊張していたら、それは叶わないんだ。
「…………」
俺も目を瞑る。
そしてゆっくりでいい。この瞬間を楽しむように、丁寧に、ゆっくりと、俺は顔を近づけて――――――
「―――あの……お客様?」
「……ん?」
なんか今……、聞き慣れない声が耳に入ってきたような……
気になり振り向く。
すると、
「え……?」
周りには大勢の観光客がこちらにスマホを向けて立っていた。
え、なにこの状況……?
困惑して、目をぱちくりさせていると、先程の声の主が再び声をかけてくる。
「お客様、他の方たちのご迷惑となりますので、そう言った行為は館内ではご遠慮いただいております」
声の主は、さっきの店員さんだった。
少し赤らめながら、耳打ちをするように続ける。
「カップルと言えども、それ以上は流石に……店の前でそういったものを見せられると、その……営業妨害にもなりますので……それに人だかりも……」
周囲を見渡す。
映画の撮影やら、卑猥なカップルやら、憶測が飛び交っていた。
「――――――…………ッ!?」
ようやく事態を把握する。すぐに謝り、その場から去ろうとした。
「リ、莉乃……! 立てるか……!?」
腕を引っ張り莉乃を立たせる。が、莉乃はぶつぶつと独り言を呟いていて、一向に顔を上げようとしない。
「やっぱり夢だったんだ……じゃあどこからが夢でどこまでが現実……? え、待ってもしかしたら初めから……?」
「夢じゃないから……! ほら、行くぞ……!」
足早にその場を去る。もうデートどころではなかった。
ベンチに置いていたペンギンフロートもとっくに溶け、莉乃の好きなペンギンも姿を消していた。
「(くそ……ッ! キス失敗してんじゃねーかッ!)」
水族館から退館するまでの間、俺の頭ではずっとそんな考えがぐるぐると回っていた。
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