77 / 143
第三章
14
しおりを挟むエリーと話しながら馬車置き場に向かう。
友達と探り合い無しで話せるのは楽しいわね。
今までも友達が居ないわけではないけど、貴族同士だと探り合いになったり、私が公爵家の娘だから気を遣われることが多くて、友達って感じがしないのよね。
「流れで馬車置き場に向かってるけど大丈夫?エリーも馬車で帰りますの?」
「今日はお父さんとお母さんが来てるから馬車だよ。明日からはどうしようかなって考えてるんだよね。馬車で来るか歩きで来るか迷い中なの」
「馬車で行けるなら馬車のほうが楽じゃないかしら?エリーがどの教科を選ぶか知らないですけど、教科によっては荷物が多いこともあるでしょうし」
我が家は学園から家までは歩きだと30分以上かかるから、絶対に馬車で登下校するつもりですけど、家が近い人は馬車での渋滞を避けるために、歩く人も居るってお兄様が言ってたわね。
確かにほぼ全校生徒が馬車で来たら、朝や帰りはかなりの渋滞になるわよね。
今日だって朝は学園の前で待つことになりましたし、今日は新入生とその保護者だけなのに、あの渋滞なんだから明日からは大変そうね。
「そっか………、授業が始まったら荷物が増えるんだよね。それなら馬車が良いかな?でも放課後に制服のままで友達とお出掛けとか憧れてたのにな~」
「楽しそうね。なら朝は馬車で来て、荷物が少ない日の放課後はお迎えを断って遊びに行けばいいと思うわよ。その時は一緒に遊びましょうね」
「良いの!?イリーナは公爵令嬢だから誘っても無理だと思ってたんだけど」
「隠れて護衛は居ると思うけど、街へのお出掛けは禁止はされてないわよ。家で静かに過ごすのは苦手だから、よくお出掛けするけど1人が多いから、エリーとお出掛け出来るなら嬉しいわ」
私は笑いながらそう言うと、エリーは私の両手をガシッと掴んでブンブン振る。
「嬉しい!!本当はイリーナとお出掛けしたいと思ってたの。イリーナ以外に友達出来るか分からないし、もしかしたら夢が叶えられないかもって不安だったんだよね~」
エリーはニコニコしながら心の底から嬉しそうにしてるのが分かる。
エリーは可愛いわね。
私が男だったらエリーを好きになってたかもしれない。
エリーを微笑ましく見てると、視界の隅に見たくないものが見えた。
そうよね…………、
リリヤが居るのだからあの人も居るわよね。
3年ぶりに見るあの人は、記憶にあるあの人よりもかなり老けた印象がある。
修道院での生活は苦労したみたいだから、そのせいで老けたのかもしれないわね。
あの人をジ―っと見すぎていたのか、あの人も私に気が付き一瞬目を見開くと、目を潤ませながらこちらに駆け寄って来る。
「イリーナ!!会いたかったわ。こんなに大きくなって」
「テイラー伯爵夫人お久しぶりです。お元気そうで良かったです」
「そんな他人行儀な態度はやめなさい。私はイワンと離婚をしてしまいたしたけど、貴女の母親であることに変わりはないわ」
この人は何を言ってるの?
離婚の意味を理解してないの?
貴族にとって離婚して離れた子供は他人になるなんて常識よ。
それに公爵家の当主であるお父様を今でも呼び捨てにするなんて失礼だわ。
この人はここまで常識がない人だったかしら?
リリヤの事がなかったら普通の人だと思ってたけど、私はこの人のことを理解してなかったのかも知れないわね。
恐らく隣にいる人が再婚したアベル•テイラー伯爵よね?
流石にこの人には常識があるみたいで、テイラー伯爵夫人の態度に困った顔をしている。
止めないみたいだからこの人も同罪かな?
「この人は知り合いなの?」
会えて喜んでる伯爵夫人と冷めた態度の私を見て、どういう状況なのか困惑したエリーが小声で声をかけてくる。
「一応は知り合いよ。元サフィナ公爵夫人だったテイラー伯爵夫人よ」
エリーはすぐに状況を理解したみたいで、何も分からなかったさっきとは違い今は困惑した顔をしている。
そうなるわよね。
貴族の離婚について説明したばかりなのだから、あれを聞いた後なら伯爵夫人の対応は間違ってると分かるはず。
常識の無さが親子揃って似過ぎじゃないかしら?
実の娘である私より、姪であるリリヤとの方が性格が似てるなんて不思議ね。
「そちらはイリーナのお友達かしら?どちらの家の娘さん?」
「初めまして、エリーと申します。ブランディー商会の会長の娘です」
「ブランディー商会の方なのね。はぁ~、お友達はちゃんと選ばないとイケないわよ。サフィナ公爵家の娘が庶民と馴れ合うなんて身分が釣り合ってないわ。私がずっと一緒に居たならこんな事にはなってなかったのに」
はぁ!?
私の交友関係に口出すなんて何様のつもりなの?
まだ母親のつもりなのかしら?
「貴女に心配される必要はありません。友人は自分で選びます。私と貴女は他人です。母親面はお止めください」
「サフィナ公爵令嬢、妻が申し訳ありません。2度とこのような事が無いように注意しますのでお許しください」
「今回だけですよ。2度目は許しません」
「はい!!」
私はエリーの腕を掴み、その場を離れようとする。
779
あなたにおすすめの小説
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
婚約破棄と暗殺で死んだはずの公爵令嬢ですが、前に出ずに全てを崩壊させます
鷹 綾
恋愛
フォールス・アキュゼーション。お前に全ての罪がある」
王太子フレイム・ファブリケイト・ロイヤル・ロードは、自らの失策を公爵令嬢フォールスに押し付け、婚約を破棄。
さらに証拠隠滅のため、彼女を追放し、暗殺まで差し向ける。
――彼女は、死んだことにされた。
だがフォールスは、生き延びた。
剣も魔法も持たず、復讐に燃えることもない。
選んだのは、前に出ないという生き方。
隣国で身を潜めながら、王弟エクイティ・フェアネス・ロイヤル・ロードのもと、
彼女は“構造の隣”に立つ。
暴かず、裁かず、叫ばない。
ただ、歪んだ仕組みを静かに照らし、
「選ばなかった者たち」を、自ら説明の場へと追い込んでいく。
切れない証人。
使えない駒。
しかし、消すこともできない存在。
これは、力で叩き潰すザマアではない。
沈黙と距離で因果を完成させる、知的で冷静な因果応報の物語。
――前に出ない令嬢が、すべての答えを置いていく。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる