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第五章
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しおりを挟むユーリ様にエスコートをされながら、会場の扉の前で呼ばれるのを待機する。
「大丈夫かい?表情が硬くなってる気がするけど?」
「今日から正式に王太子様の婚約者って認識されるのかと思ったら、急に緊張してきてしまいました」
「そんなに緊張するようなことかい?イリーナ嬢は慣れてると思ってたよ。小さい頃からミハイルの婚約者候補だったんだから、次期王太子妃だって思われていただろ?候補者の中でも正式に婚約者に選ばれる可能性が高かったからね」
確かに複数人いる婚約者候補で、選ばれるのは私じゃないかと言われてはいた。
でもそれは勝手に周りが言ってるだけで、私には全然実感がなかったのよね。
だってミハイル様には嫌われていましたし、最終的には他の人が選ばれると思っていた。
「あくまで当時の私は候補者でしたから、ミハイル様の婚約者って印象が薄かったんですよね。ミハイル様から嫌われていましたし、ミハイル様も王太子に正式に任命されてなかったので、王子の複数いる婚約者候補の1人ってだけだったので、そこまで緊張することもありませんでした」
パトリシア様が婚約者候補として、私以上に目立って居たのも緊張しなかった要因よね。
周りから選ばれるって言われてたのは私だったけど、ミハイル様に気に入られていたのはパトリシア様の方でしたし、私への当てつけが目的でしょうけど、ミハイル様の普段の行動のお陰で、完全にミハイル様に惹かれることはなかったから、私にはそこまでダメージはなかったのよね。
ミハイル様の婚約者って地位に一時期執着してたのも、婚約者に選ばれれば母親が喜ぶと思ったからですしね。
当時の私には恋愛というものがよく分からなかった。
いや………、知りたくないと思っていたって方が正しいかしら?
誰かを好きになっても叶わないですし、貴族令嬢として親が決めた相手と結婚しないといけない。
だから恋愛をしても苦しむだけ、それなら自分の婚約者を好きになれば良いって考えて、ミハイル様に必死に好きになろうとした。
その結果、当時の私は誰が見てもミハイル様に恋してる女だった、婚約しようって迷いもなく切り替えられたのは、前世の記憶を思い出したって理由もあるけど、私自身がミハイル様を本気で好きだったわけではないからなのよね。
だけど今の私は本気でユーリ様に惹かれている。
これは勘違いでも思い込みでもない。
好きな人と結婚できる私は恵まれてるのよね。
ユーリ様が私を好きになってくれたら嬉しいけど、これ以上は欲張ってはいけないわよね。
ユーリ様から大切にされてる今の状態に満足しないと、ユーリ様は私のことを妹のように可愛がってるだけかもしれないけど、嫌われてないだけマシよね。
「何があっても私が守るから、困ったことがあったら、些細なことでも報告して欲しい。イリーナ嬢は何でも我慢してしまいそうだからね」
ユーリ様は私のことをよく理解してるわね。
私は前世のことから、人を頼ったり、弱味を見せたりするのが苦手なのよね。
何か負けた気がしてしまう。
だけど王族に嫁ぐってことはそれでは駄目なのよね。
小さいことでもちょっとした火種が大火事になってしまうことがある。
油断はしてはいけない。
「わかりました。婚約者としてユーリ様を頼らせて頂きます」
「絶対だよ。男として婚約者に頼って貰えないのは、とても寂しいからね」
そんな事を言われたら頼らずには居られないわよね。
ユーリ様って口が上手いわね。
ユーリ様と結婚しても、周りからずっとモテてそうで不安になりそうね。
将来の妻として、夫がモテてるのは誇りに思うかもしれないけど、それと同時に不安にもなりそうね。
結婚後の事を妄想してると、私とユーリ様の名前が呼ばれる。
「それじゃあ入るよ」
「はい」
これから戦いの始まりだわ。
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