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マカリの過去
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「僕は――生まれた時に親に捨てられた」
「え?」
そんな、まさか――。だって、マカリにはおじいさんがいて。
「ヴィオラのいいたいこと、わかるよ。じいちゃんと、僕には血縁関係がないんだ。じいちゃんが僕を拾ったから」
驚いた私に、マカリは続ける。
「僕は、隣国で生まれたんだ。隣国では、黒髪は不吉だといわれてる。だから、橋の下に捨てられたんだと思う」
「そう……なのね。でも、私は、マカリの黒髪とっても大好きよ!」
微笑んで、テーブル越しに手を握る。
「うん。ありがとう。ヴィオラのまっすぐに伝えてくれるところも好きだよ」
微笑んだ星屑のようなその瞳には、私だけが映っていた。
「それで……話を戻すけれど。じいちゃんは、僕を拾ってくれて様々なことを教え、育ててくれた」
マカリが懐かしむように、目を細める。
「でも、隣国では僕に対する迫害が酷くて……そして、その被害はじいちゃんにまで及んだ。――じいちゃんは、僕を助けるために何度も僕の代わりに殴られたりもした」
それで今の国にきたのだとマカリは続けた。
「でもじいちゃんは、元々丈夫な方でもなかったし、体が環境変化に耐えられなくて……。じいちゃんは、僕の世界の中心だった」
「……うん」
そうだと思う。
マカリは、おじいさんを失ったあと、ずっと荒んだ瞳をしていたものね。
「でも、そんな僕にずっと、付きまとってくる子がいた」
「!」
それって、もしかして……。
「うん、そう。ヴィオラのこと」
マカリは小さく微笑むと私の手を握り返してくれた。
「最初は、正直うっとうしいって思ってた。でも……いつの日か、ヴィオラがいないと落ち着かなくなった」
――ヴィオラが好きなものを家におくようになった。食材一つ買うのに、ヴィオラの好みを気にするようになった。
続けられた言葉に、息が止まりそうになる。
「でも、僕は不吉だから。ヴィオラの愛の言葉には応えられなかったんだ」
「そんなことっ……!」
「うん、わかってるよ。ヴィオラが気にしないこと。でも、僕はもう大切な人を失いたくなかったんだ。だからヴィオラを絶対に幸せにできる証がほしかった」
……証。
そういわれて、ふと、星鉱石の指輪を見る。この星鉱石はとても貴重で、それを賞与としてもらえるってことは……。
「もしかして、マカリの研究が……」
「うん、認められたんだ。僕は、地位がほしい訳じゃない。だから、宮廷魔術師には興味がなかった」
マカリは人混みがきらいというのも理由の一つとしてあるものね。
「それに、お金が――お金だけが全てではないと知ってるけど。お金で得られる幸せもヴィオラに与えたかったんだ。だから、賞をとるまでは、ヴィオラに応えないって決めてた。でも……」
マカリはそこで言葉をきると、私を見つめた。
「ヴィオラを傷つけたこと、ごめん。ずっと、ヴィオラの気持ちを無視してるように見えたよね。――ほんとは、毎回すっごく嬉しかったのに」
「マカリ!」
私はたまらなくなって、立ち上がると、マカリに抱きついた。
「マカリ、大好きよ」
「……僕もヴィオラが好きだよ。愛してる」
「え?」
そんな、まさか――。だって、マカリにはおじいさんがいて。
「ヴィオラのいいたいこと、わかるよ。じいちゃんと、僕には血縁関係がないんだ。じいちゃんが僕を拾ったから」
驚いた私に、マカリは続ける。
「僕は、隣国で生まれたんだ。隣国では、黒髪は不吉だといわれてる。だから、橋の下に捨てられたんだと思う」
「そう……なのね。でも、私は、マカリの黒髪とっても大好きよ!」
微笑んで、テーブル越しに手を握る。
「うん。ありがとう。ヴィオラのまっすぐに伝えてくれるところも好きだよ」
微笑んだ星屑のようなその瞳には、私だけが映っていた。
「それで……話を戻すけれど。じいちゃんは、僕を拾ってくれて様々なことを教え、育ててくれた」
マカリが懐かしむように、目を細める。
「でも、隣国では僕に対する迫害が酷くて……そして、その被害はじいちゃんにまで及んだ。――じいちゃんは、僕を助けるために何度も僕の代わりに殴られたりもした」
それで今の国にきたのだとマカリは続けた。
「でもじいちゃんは、元々丈夫な方でもなかったし、体が環境変化に耐えられなくて……。じいちゃんは、僕の世界の中心だった」
「……うん」
そうだと思う。
マカリは、おじいさんを失ったあと、ずっと荒んだ瞳をしていたものね。
「でも、そんな僕にずっと、付きまとってくる子がいた」
「!」
それって、もしかして……。
「うん、そう。ヴィオラのこと」
マカリは小さく微笑むと私の手を握り返してくれた。
「最初は、正直うっとうしいって思ってた。でも……いつの日か、ヴィオラがいないと落ち着かなくなった」
――ヴィオラが好きなものを家におくようになった。食材一つ買うのに、ヴィオラの好みを気にするようになった。
続けられた言葉に、息が止まりそうになる。
「でも、僕は不吉だから。ヴィオラの愛の言葉には応えられなかったんだ」
「そんなことっ……!」
「うん、わかってるよ。ヴィオラが気にしないこと。でも、僕はもう大切な人を失いたくなかったんだ。だからヴィオラを絶対に幸せにできる証がほしかった」
……証。
そういわれて、ふと、星鉱石の指輪を見る。この星鉱石はとても貴重で、それを賞与としてもらえるってことは……。
「もしかして、マカリの研究が……」
「うん、認められたんだ。僕は、地位がほしい訳じゃない。だから、宮廷魔術師には興味がなかった」
マカリは人混みがきらいというのも理由の一つとしてあるものね。
「それに、お金が――お金だけが全てではないと知ってるけど。お金で得られる幸せもヴィオラに与えたかったんだ。だから、賞をとるまでは、ヴィオラに応えないって決めてた。でも……」
マカリはそこで言葉をきると、私を見つめた。
「ヴィオラを傷つけたこと、ごめん。ずっと、ヴィオラの気持ちを無視してるように見えたよね。――ほんとは、毎回すっごく嬉しかったのに」
「マカリ!」
私はたまらなくなって、立ち上がると、マカリに抱きついた。
「マカリ、大好きよ」
「……僕もヴィオラが好きだよ。愛してる」
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