恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理

文字の大きさ
6 / 7

マカリの過去

しおりを挟む
「僕は――生まれた時に親に捨てられた」
「え?」
 そんな、まさか――。だって、マカリにはおじいさんがいて。
「ヴィオラのいいたいこと、わかるよ。じいちゃんと、僕には血縁関係がないんだ。じいちゃんが僕を拾ったから」

 驚いた私に、マカリは続ける。
「僕は、隣国で生まれたんだ。隣国では、黒髪は不吉だといわれてる。だから、橋の下に捨てられたんだと思う」
「そう……なのね。でも、私は、マカリの黒髪とっても大好きよ!」
 微笑んで、テーブル越しに手を握る。
「うん。ありがとう。ヴィオラのまっすぐに伝えてくれるところも好きだよ」

 微笑んだ星屑のようなその瞳には、私だけが映っていた。

「それで……話を戻すけれど。じいちゃんは、僕を拾ってくれて様々なことを教え、育ててくれた」

 マカリが懐かしむように、目を細める。

「でも、隣国では僕に対する迫害が酷くて……そして、その被害はじいちゃんにまで及んだ。――じいちゃんは、僕を助けるために何度も僕の代わりに殴られたりもした」

 それで今の国にきたのだとマカリは続けた。

「でもじいちゃんは、元々丈夫な方でもなかったし、体が環境変化に耐えられなくて……。じいちゃんは、僕の世界の中心だった」
「……うん」

 そうだと思う。
 マカリは、おじいさんを失ったあと、ずっと荒んだ瞳をしていたものね。

「でも、そんな僕にずっと、付きまとってくる子がいた」
「!」

 それって、もしかして……。

「うん、そう。ヴィオラのこと」

 マカリは小さく微笑むと私の手を握り返してくれた。

「最初は、正直うっとうしいって思ってた。でも……いつの日か、ヴィオラがいないと落ち着かなくなった」

 ――ヴィオラが好きなものを家におくようになった。食材一つ買うのに、ヴィオラの好みを気にするようになった。

 続けられた言葉に、息が止まりそうになる。
「でも、僕は不吉だから。ヴィオラの愛の言葉には応えられなかったんだ」
「そんなことっ……!」
「うん、わかってるよ。ヴィオラが気にしないこと。でも、僕はもう大切な人を失いたくなかったんだ。だからヴィオラを絶対に幸せにできる証がほしかった」

 ……証。

 そういわれて、ふと、星鉱石の指輪を見る。この星鉱石はとても貴重で、それを賞与としてもらえるってことは……。

「もしかして、マカリの研究が……」
「うん、認められたんだ。僕は、地位がほしい訳じゃない。だから、宮廷魔術師には興味がなかった」

 マカリは人混みがきらいというのも理由の一つとしてあるものね。

「それに、お金が――お金だけが全てではないと知ってるけど。お金で得られる幸せもヴィオラに与えたかったんだ。だから、賞をとるまでは、ヴィオラに応えないって決めてた。でも……」

 マカリはそこで言葉をきると、私を見つめた。

「ヴィオラを傷つけたこと、ごめん。ずっと、ヴィオラの気持ちを無視してるように見えたよね。――ほんとは、毎回すっごく嬉しかったのに」
「マカリ!」

 私はたまらなくなって、立ち上がると、マカリに抱きついた。
「マカリ、大好きよ」
「……僕もヴィオラが好きだよ。愛してる」

 

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

ここだけの話だけど・・・と愚痴ったら、婚約者候補から外れた件

ひとみん
恋愛
国境防衛の最前線でもあるオブライト辺境伯家の令嬢ルミエール。 何故か王太子の妃候補に選ばれてしまう。「選ばれるはずないから、王都観光でもしておいで」という母の言葉に従って王宮へ。 田舎育ちの彼女には、やっぱり普通の貴族令嬢とはあわなかった。香水臭い部屋。マウントの取り合いに忙しい令嬢達。ちやほやされてご満悦の王太子。 庭園に逃げこみ、仕事をしていた庭師のおじさんをつかまえ辺境伯領仕込みの口の悪さで愚痴り始めるルミエール。 「ここだけの話だからね!」と。 不敬をものともしない、言いたい放題のルミエールに顔色を失くす庭師。 その後、不敬罪に問われる事無く、何故か妃選定がおこなわれる前にルミエールは除外。 その真相は? ルミエールは口が悪いです。言いたい放題。 頭空っぽ推奨!ご都合主義万歳です!

初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~

ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。 それが十年続いた。 だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。 そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。 好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。 ツッコミどころ満載の5話完結です。

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

口は禍の元・・・後悔する王様は王妃様を口説く

ひとみん
恋愛
王命で王太子アルヴィンとの結婚が決まってしまった美しいフィオナ。 逃走すら許さない周囲の鉄壁の護りに諦めた彼女は、偶然王太子の会話を聞いてしまう。 「跡継ぎができれば離縁してもかまわないだろう」「互いの不貞でも理由にすればいい」 誰がこんな奴とやってけるかっ!と怒り炸裂のフィオナ。子供が出来たら即離婚を胸に王太子に言い放った。 「必要最低限の夫婦生活で済ませたいと思います」 だが一目見てフィオナに惚れてしまったアルヴィン。 妻が初恋で絶対に別れたくない夫と、こんなクズ夫とすぐに別れたい妻とのすれ違いラブストーリー。 ご都合主義満載です!

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

処理中です...