【完結】悪役令嬢な私が、あなたのためにできること

夕立悠理

文字の大きさ
16 / 45

杞憂

しおりを挟む
――あと、二百六十五個の魔獣の心臓を、捧げると。
 この『悪魔』は『神』になるらしい。

 美味しそうに今日の成果である十個分の魔獣の心臓を食べている悪魔に話しかける。
「ねぇ、悪魔」
 私が名前を呼ぶと、悪魔は、最後の一つを口の中に押し込み、首を傾げた。
『どうした?』
「なぜ、私に契約を持ち掛けたの?」
『……なぜ、か』
 悪魔は、小さく嗤うと、ぺろりと舌で唇をなめた。そのあとは楽し気に、私の短い髪を触って遊んでいる。
「……なぁに?」
 教える気はないって、ことかしら。
 まぁ、それならそれで別にいいけれど。
『我の願いをかなえるためだ』
「あなたの、願い? それって、神になることよね?」
 確か、悪魔は元々は神だったといっていた。その悪魔がなぜか、今は悪魔と呼ばれているらしいけれど。
『……それもある』
 ……も。ということは他にもあるということ。
 他に何があるというんだろう。
「確認なんだけど、それって、リッカルド様に害があることじゃないわよね?」
 リッカルド様の笑顔が奪われるような姿、特にあの、絶望に染まった瞳はもう二度と見たくない。
『…:…さぁな』
 悪魔が言葉を濁したってことは、やっぱり、リッカルド様に害があるのかしら。
 でも、メリア様と幸せになれれば、リッカルド様は、もう二度と心中なんてことしないだろうし。その他に、リッカルド様に害がありそうなことってないわよね。……なんだ、ただの杞憂ならよかったわ。

『そんなことより』
 悪魔は私の髪を触っていた手を止めると、囁いた。
『……お前は我の贄だ』
「わかってるわ、そんなこと」
 さっきもじとりとした目で見ていたし。別に、リッカルド様とどうにかなる気も、どうにかなる可能性もない。
『そうではない』
 悪魔はなぜかひどく怒ったような顔をした。
「悪魔?」
 珍しいわね、そんな顔をするなんて――。
「!?」

 悪魔は私を抱き寄せた。
 悪魔の鼓動が聞こえる。……悪魔にも心臓のようなものはあるのね。

 そんな場違いなことを考えていると悪魔は、更にきつく私を抱きしめた。
「悪魔?」
 悪魔のほうが背が高いから、そうされると、悪魔の顔が見えない。それに、悪魔の意図もわからない。
『……お前は、我の贄だ』
「? ええ」
 何度も何度も確認しなくても、それくらいわかっている。
『だから――あまり無理をされては困る』

 ええー。せいぜい励めよ、っていったのは、悪魔じゃない。

 なんて、言える雰囲気ではなかったので、言いたい言葉を飲み込み、頷く。
「……わかったわ」

 今日は、失敗しちゃったけど、明日は、失敗しないようにする!

 心の中でそう誓っていると、悪魔は、私から体を離した。
『……我は――』

 複雑そうな顔で何かを言いかけた悪魔は、結局何も言わずに、消えた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

【完結】この地獄のような楽園に祝福を

おもち。
恋愛
いらないわたしは、決して物語に出てくるようなお姫様にはなれない。 だって知っているから。わたしは生まれるべき存在ではなかったのだと…… 「必ず迎えに来るよ」 そんなわたしに、唯一親切にしてくれた彼が紡いだ……たった一つの幸せな嘘。 でもその幸せな夢さえあれば、どんな辛い事にも耐えられると思ってた。 ねぇ、フィル……わたし貴方に会いたい。 フィル、貴方と共に生きたいの。 ※子どもに手を上げる大人が出てきます。読まれる際はご注意下さい、無理な方はブラウザバックでお願いします。 ※この作品は作者独自の設定が出てきますので何卒ご了承ください。 ※本編+おまけ数話。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

【完結】うちの悪役令嬢はヒロインよりも愛らしい

らんか
恋愛
前世の記憶を思い出した今なら分かる。  ヒロインだからって、簡単に王子様を手に入れていいの?  婚約者である悪役令嬢は、幼い頃から王子妃になる為に、厳しい淑女教育を受けて、頑張ってきたのに。  そりゃ、高圧的な態度を取る悪役令嬢も悪いけど、断罪するほどの事はしていないでしょ。  しかも、孤独な悪役令嬢である彼女を誰も助けようとしない。    だから私は悪役令嬢の味方なると決めた。  ゲームのあらすじ無視ちゃいますが、問題ないよね?

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

処理中です...