とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

文字の大きさ
26 / 73

王都で舞台

しおりを挟む
 孤児院で2週間開催した舞台とマルシェは大盛況のうち終了となった。
 
 あまりに評判でチケットが取れないとクレームが殺到し、2週間後にまた1か月開催することとなったらしい。すごい!

 売り上げも上々でマルシェ出展者も増え、舞台スタッフも気合が入り、孤児院も潤いすべてがうまく回っていた。

 そんな中、以前レイが出版社に持ちかけていた王都での舞台があっという間に初日を迎えた。
 出版社のご厚意で、レイと私、あと数名招待できるとのことで、恋仲進展中?なプリシラちゃんとオスカーを招待することにした。
 
 今日はみんなで初日舞台を見に行くために、私の別宅に集合していた。
 
 私とプリシラちゃんは今回は王都での舞台ということで、町娘スタイルでなくもう少し上品な服装で行こうと商会でこれから流行させたいらしいワンピースや小物を身に着ていくことになった。
 
 私が伯爵令嬢のアイテムのモチーフになっているアイリスをモチーフにしたワンピースと小物を、プリシラちゃんは、伯爵令嬢のお友達が愛用しているライラックをモチーフにしたワンピースと小物を身に着けていた。
 
 「男性の皆さま、お待たせしました~!」

 可愛いいプリシラちゃんは本当に何を着ても可愛いっ!羨ましいなぁ~。横でオスカーがデレデレしているが、気にしないでおこう。

 私は元々の顔立ちが貴族特有…いや、母親譲りのクールな印象を与えがちなため、可愛いらしい服はあまり似合わないのだが、今回のアイリスをモチーフにしたワンピースは、大人可愛いデザインで、私でも何とかマイナスイメージにならず着こなせているはず。

「……レイ、どうかな?私がモデルでも大丈夫?」

 サザーランド商会支給の大切なワンピースでもあるし、広告塔の私が失敗するわけにはいかない。

 「……今回も可愛い」

 「…え?」

 消え入りそうな程かすかな声で呟かれたため、思わず聞き返してしまった。

 「似合ってる?」

  レイが頷いた。やっぱり、嬉しい。

 私もようやく安心したので、皆で気分良く場所に乗り込んだった。

 向かう先は王都の劇場。

 そこで出版社の社長と編集長と落ち合う予定だ。

 「しかし、リリーは、授賞式も、サイン会も拒否したからな。編集長が頭抱えてたよ……」
 
 だって、今は顔出しする訳にはいかないし、せめて侯爵になるまでは日陰にいないと。
 私は項垂れるしかなかった。レイ、すまない!

 「本の売れ行きも好調らしいし、今度隣国で翻訳されて販売されるらしいな」

 海外版の話は出版社から頂いていて、それらはミスボス商会で契約することになっていた。

 「そういえば、オスカー。確かウィングビルド商会から孤児院ビジネスのビジネスモデル契約の話があるそうじゃない?」
 
 レイから聞いていた話をオスカーに投げ掛けた。私としては権利ビジネスとしてフランチャイズにしてどんどん広げてもらいたかった。
 
「ああ。あのマリーベルからな」
 
 オスカーが心底嫌そうにぶっきらぼうに答える。
 
「あれは前向きに検討すると伝えたぞ」
「……ああ。構わない。けど、折角俺が代表の商会なのに、ウィングビルドと契約ってのが少し癪だけどな。まあ、ビジネスとしてはありがたいからな」
 
 ちなみに、もちろんレイのサザーランド商会とも契約は完了し、近いうちにサザーランド領内で孤児院ビジネスがスタートするらしい。
 
「これでまた白薔薇ワンピースも大人気になるね!また商品考えないと」
 
 実は、白薔薇化粧品シリーズも展開予定で、原料と生産工場の視察も来月に予定されている。
 
「本当にミスボスはすごいですよね!アイデアマンです!」
 
 プリシラちゃんに褒められ、照れてしまう私。
 
「……ありがとう!可愛い女の子に褒めらると嬉しい!」
 
 私はプリシラちゃんに抱きついた。
 
「……コホン。リリー。ちなみに、出版社の社長は俺の友人なんだ」
 
「ん?レイ。もう一度?」
 
「社長は、俺の友人」
 
「え?そうなの?そんなの初耳だよ!友だちだったの?」
 
 ……レイ、友だち多すぎです!
 
「……すっかり忘れてた。ごめん。学院の同級生だった奴だ。まあ、昔からの腐れ縁?」
 
 ひょえー。としたら上位のお貴族様かしら?
 
「まあ、後で紹介するよ」
 
 そしてまた驚きの展開になるのだった。

 劇場に到着すると、ドでかい『伯爵令嬢と救国の騎士』のポスターが目に飛び込んできた。素直に嬉しいやら恥ずかしいやらで私は見上げながら固まってしまった。

 そんな私を見つけた編集長のキャサリンさんが駆け寄ってきてくれた。
 
「お久しぶり~!リリアーヌさん。会いたかった!」
 
「私もです、編集長!いろいろわがままいってご迷惑おかけしました」
 
「いいのよ~。事情が事情だからね。でも、本の売れ行きが好調だから、劇以外にも企画したいなと思っているわ。サザーランド商会からも商品企画はもらって……。あ、そうそう!リリアーヌさんを見習って、劇場の中にマルシェスポットも作ったの~。このワンピースも販売してるし、後で見学してね」
 
 レイの提案、抜け目なし!よくしゃべる明るい編集長は、更におしゃべりを続ける。
 
「あ、ごめんなさい。私、まだご挨拶してなかったわ」

 私とレイの後ろを歩くオスカーとプリシラに気づき、足を止めた。

「私、ムーン出版のキャサリンと申します。リリアーヌさんの本の編集を担当させて頂いてます。あと、劇や商品企画も。よろしくね」

「ご丁寧にありがとうございます。俺はミスボス商会の代表のオスカーです。こちらは、ミスボス商会が展開する孤児院舞台の主演女優のプリシラです」
 
 プリシラも笑顔で応対していた。

「あの劇、王都でも噂になってたの~。プリシラさん、今日は何か勉強になれば良いのだけど。楽しんでいってね」

「王都でもなんて、嬉しいです!こちらこそ、本日は貴重な企画をありがとうございました!」

「もう劇が始まりそうだから急ぎましょう。後で社長とも会ってもらうから」

 私たちは劇場内の関係者席に急ぎ向かった。
 
 ◇◇◇
「素晴らしかったねー!」

 舞台があけ、私とプリシラちゃんは興奮覚めやらず、きゃっきゃきゃっきゃと話していた。

「あの騎士様、素敵でした……!やっぱり、女性はああいう少し強引だけど、愛情が真っ直ぐな男性に弱いですよねー」
 
「本当に!自分で書いた原作だけど、本当に楽しかった!あー、私もやっぱりあんな恋がしたい!」
 
 こんな会話の裏で、男性陣はなぜか無言で歩いていた。
 
「社長室に案内するわね」
 
 キャサリンさんも私たちのトークに参戦し、ますますヒートアップしていく。
 
 やはりきちんとした劇場は、音響から照明など全てが一流で、感情移入もしやすかった。
 
「私、感動してハンカチがもう涙でびしょびしょです……」
 
 私も~とまた盛り上がる三人。
 
 ……男性陣、ドン引きですか?
 
 (私が書いた原作なのに!レイにあとで聞かなくては!)
 
「社長室はここよ」
 
 キャサリンさんたちとおしゃべりに夢中になっていたら、どの道を通ってきたかもよく分からなかった。レイの友人であるムーン出版の社長と対面である。
 
「じゃあ、入るわね」
 
 キャサリンさんが全員に目配せした。
 
 ノックをすると、中からどうぞ、と男性の声が聞こえた。
 
「キャサリンです。お客様をお連れしました」
 
「開いている。入ってくれ」
 
 扉を開けると、意外にも三人の男性の姿があった。
 
 片手をあげ、レイを手招きをする男性が、すぐに社長だと分かった。
 
「レイ、ちょうど良かった。紹介したい人たちがいるんだ」
 
 レイは分かった、と一歩前に進んだ。
 
「こちら、隣国のミリオニアの方々で、クラニエル商会の副会長とその秘書だ」
 
 紹介された男性たちもだいたいレイと同世代の男性で、これまた容姿端麗すぎて眩しいくらいの輝きだった。おまけに、クラニエル商会は、私でも知ってるくらい大きな商会だ。
 
「カイル・クラニエルだ。よろしく」
 
(確か……クラニエル家も公爵家だったはず。……レイ同様に、次期代表なのね。ああ、公爵家ってまた、公爵家~)
 
 私は少ない隣国の知識を総動員しながら、また公爵家の知り合いが増えたことに驚いていた。
 
「こちらこそ。ブレイブの友人でもある。サザーランド商会のアルフォンス・サザーランドだ」
 二人は満足げに握手をした。
 
「で、後ろの美女たちは?」
 
 ブレイブがレイに私たちの紹介を促した。
 
「ああ。こちらが、ミスボス商会のオーナーで、リリアーヌ・フォンデンベグ嬢。俺の未来の婚約者だ。あと、こちらがミスボス商会主催の舞台の主演女優のプリシラさん。それと、ミスボス商会の代表のオスカーだ」
 
「お!ようやく会えた!ブレイブ・ミーリングだ。リリアーヌ嬢。噂はレイから聞いていたから、どんな人物か会ってみたかったんだ!へー!なるほど。見た目は貴族で、中身は商人と作家かあ。…………実に興味深い。君の書いた小説も売れ行き好調だし、助かってるよ!」
 
 褒められてるのかからかわれているのか今1つはっきりしないけど、とりあえずは私は社長にとっては役にたっている人間なんだろう。
 
(ブレイブ・ミーリング……?ミーリングってもしかしたら、もしかするよね……?)
 
 そう、ミーリング家は、誰もが知る名門公爵家だ。
 また出た!公爵家。もう私の人生でお腹いっぱいです……。
 
「お会い出来て光栄です。いつもキャサリン編集長にはご迷惑ばかりおかけしているのに、とても良くして頂いています。ありがとうございます」
 
 私は感謝のお辞儀をした。
 
「そうそう。そんなに堅苦しくならずに、さ。あと、ここにいるクラニエルの次期代表がね、ミスボス商会と取引したいみたいなんだ。だから後で話しきいてもらえない?」
 
「かしこまりました。喜んで」
 
「まだこっちに滞在するみたいだから、連絡とってみて」
 
 そんなこんなで、クラニエル商会と後日契約の話しをすることになったのだけれど、まさかこの契約がとんでもないことになるなんて、この時の私は知るよしもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

処理中です...