とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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メイドの噂

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ふー。また、すごい家柄と繋がってしまった……!
 
 いや、ありがたい。
 大変ありがたいのである。
 何だか一生分の運を使ってしまった感じがする……。

 (何だか怖い……のは気のせい?)

 でも、使用人服に身を包むと、やっぱり現実に引き戻される。あと二年、頑張らなくては。

(最近、ギャップ差に悩むわ……)

 昨日の王都の楽しい思い出を胸に、今日は朝から使用人ライフ。次の休みまであと何日……だっけ?

(さーて、とっとと片付けるぞー!)

 使用人服を着て、使用人棟の使用人頭のところに朝の挨拶に向かっていた。毎回、めんどくさい小言を聞かされながら仕事の割り振りを聞く。

(絶対に私が侯爵になったら、追い出してやる……!)

 ちなみに、頭の中ではもう追放リストは決まっていて、使用人の9割はいなくなる予定だ。

 その穴は、もちろん孤児院から補うつもりだった。そして、実は数ヶ月前から試しに一人使用人として潜り込ませてもらっていた。

 (オスカーにまた人物リストをピックアップしてもらわないとだ。他の孤児院にもオファーしてもいいかも?)
 
 使用人ライフを通して、いかに血のつながりが儚くてもろいかも痛感したし、いかに身分ではなく、志と人柄と能力だ、ということもビジネスを通して学んでいた。

 結局は人の本質を見極める目が大切、ということ。

「使用人頭、リリアーヌです」
 
 深呼吸してから扉をノックした。

 「入りなさい」
 
 少しイライラしたような声が返ってきた。
 
(はあ……。小言、長くなるかな……?)
 
 使用人頭は、もちろん義母が連れてきた人物で、当たり前だが非常に私には厳しい人だ。能力的には普通だし、単に義母の都合が良かっただけの人物なんだろうが、都合悪いと当たり散らすのはやめて欲しい。

「全く……。メイドはみんな噂好きね。まあ、あんたには関係ない噂だけどね。さあ今日はシーツ交換をやったら、カーテンの洗濯をお願い。終わったらまた来るように」
 
(噂……?)
 
 私とは目すら合わせずに、会話は終了した。私なんて見るにも値しないのだろう。

 噂なら毎日の御飯レベルで新しいものが溢れているが、今日の使用人頭の口調では、あまり使用人頭にとっては良い噂でないのだろう。
 
(後で調査しなくちゃ!まずはシーツ交換~!)
 
「では、失礼致します」
 
 最低限の礼だけをしてそそくさと使用人頭の部屋を後にした。

 シーツ交換は大抵2名で行うのだが、最近のシーツ交換は大抵エマと組むことが多かった。

 そして、このエマこそがオスカーが送り込んでくれた孤児院出身使用人第一号で、ミスボス商会からも少しばかり謝礼を支払っている。

 ちなみに、エマは私より年上の18才。

(こんなに上手く潜り込めるなら、次の募集に備えてやっぱり準備しなくちゃ)

 エマは当然表向きは私と敵対しているように見せているが、二人っきりの時はオスカーからの伝言や、書類の受け渡しなどをしてもっている。

 そのために、お休みの日をあえてずらすようにもしていた。

 リネン室に立ち入るとシーツの準備をしているエマがいた。
 
「遅くなりました」
 
 エマは私をチラッと見ると、軽く頷きながら作業を続けていた。他人の手前、目立つ場所では最低限の接触にしている。
 
「枚数は数えたから、交換に行くわよ」
 
 私はエマに渡されたシーツを持ち、エマと共に使用人部屋のシーツ交換に向かった。

 部屋に入るとリリアーヌは早速エマに噂について質問してみる。
 
「ねぇ、エマ。さっき、使用人頭が噂がどうの言っててかなりイライしてたんだけど、噂って何?」
 
 手早くシーツを外しながら、二人でシーツをかけていく。
 
「聞いた話しだと、孤児院でほら、エリアルが騒動起こしたでしょ?あれを何でも他の貴族が見てたみたいで。最初は私があの孤児院出身だからって犯人扱いされて大変だったんだよー」
 
「そうだったんだ……。ごめんね……」
 
「だって、リリーのせいじゃないでしょ?あの騒動の衝撃が凄すぎて、次期侯爵は大丈夫か?って噂」
 
「……まあ、そもそも彼女は次期侯爵じゃないしね。単なる居候?貴族ですらないし。それはそうと、だから最近何だか本館が荒れてるんだよねー」
 
 以前から義母と義妹の横暴ぶりは使用人たちからしたら公然の秘密だったわけで、今までは怖くて話すら出来なかったのが、今回この騒動が起きてその黒い噂は勢いよく広がっているらしい。
 
「彼女達はお金使いも荒いし、人使いもひどいし。エリアルの婚約者も腰巾着と評価は最悪だし。最近は本館で当たり散らしてるみたいで、辞める人も多いみたいよー」
 
 お?辞める?
 
(……本館に潜り込ませるのは危険かなあ?でも、スパイがいてくれると助かるしなー。オスカーに相談してみよっと)
 
「あ、そうだ。リリー。プリシラからの預りものは?」
 
 危うく忘れるところだった!エマとプリシラは仲の良い親友で、昨日プリシラから預りものをしていた。
 
「はい、これ」
 
 私はポケットから取り出してエマに手渡した。
 
「ありがとう!プリシラは元気だった?」
 
「元気だったし、相変わらず可愛いかった~!オスカーとは何だかいい感じだったよ。プリシラちゃん、オスカーのこと何か言ってた?」
 
 二人の恋路は気になるところだ。
 
 「プリシラもオスカーさんのことは好意的に思っているみたいだよ。よく話に出てくるし。でも、彼の身分の問題があるからって」
 
 「オスカーならそんなこと気にしないんじゃない?家を継ぐわけでもないしさ。私は二人を応援したいなー。最悪ほら、私が侯爵になったら養子縁組してもらってもいいし?」
 
 「そこまで彼女が考えてるかわからないけど、何か話に出たらちょっと話してみるね~」
 「ありがとう!」
 
 「それこそ、リリーこそ、レイ様と婚約するって聞いたよ?」
 
 「……一応、プロポーズされて、喜んでって答えたんだけどさ。問題はまだ山積みだよね……」
 
 エマが私の肩をポンポンと叩いてくれた。
 
 「頼れる未来の旦那様が何とかしてくれるでしょ?私もそうなってもらわないとここで頑張って働く意味がないしね。未来の侯爵様~」
 
 エマは毎日コツコツと働いて安定した職業を持ちたいという思いがあり、それを知ったオスカーがこの使用人の話を持ち掛けてくれた。
 
 その際に、リリーのことや、ミスボス商会のことなども話きいたらしい。
 今では応援してくれる人の一人だ。
 
 「さーて、ではカーテンの回収、行きますか!」
 
 慣れは恐ろしい……。

 口も動くは、手も動いている。
 使用人のスキルがどんどん上がるのであった。
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