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エメラルドグリーンの瞳
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カイル様からの突然の申し出に驚いたものの、その趣旨を聞いて即座に納得した。
一緒にランチを取りながら、話をしたいというものだった。
(まあ、そうよね。ぽっと出来た商会と契約するのだからね……)
オーナーである私の人となりを見極めたい、という意図があるのだろう。
「終わったら、我々のほうで責任をもって指定の場所まで送り届けるので安心してほしい」
俺も行く、とオスカーはついてくる気満々だったが、先方にあえなく却下されてしまった。
(大丈夫だから、オスカー。念のためヒュースに着いてきてもらって?)
私はそうオスカーに耳打ちした。
「では、時間も惜しいので参りましょうか?」
私はカイル様のエスコートで馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
「……どちらか召し上がりになりたいレストランなどはございますか?」
こんなことになるのだったら、別宅でマリアに準備しておいてもらえば良かったなと頭によぎるが時すでに遅し……。
「フォンデンベルク領で一番賑やかな場所を案内してもらいたい。そこで適当に店に入ろう」
カイル様の提案に私はこくんとうなずいた。
私は御者に行き先を伝える。カイル様もアレク様も無言のまま馬車は走り始めた。
(何とも気まずい雰囲気だ……。えーと、何か話せ、リリアーヌ!)
「カイル様とアレク様はいつミリオニアに戻られるのですか」
苦し紛れに適当に質問をしてみた。
(レイとだったら無言でも特に感じないんだけど、はぁ……。ほぼ初対面だし、会話が続くかな……)
「ああ、もう少ししたら戻る予定だ。実は、この間の孤児院の劇も見に来ていたんだよ、なあ?アレク」
ええー?そうだったの?!
「それは存じませんでした。失礼致しました……」
もしかしてあの茶番劇も見ていた?!さすがにそれは聞けないな……。
「面白いものも見れたしな。ますます君に興味が沸いたって訳だ」
面白いもの?!ってまさかあれ?!そして、……私に興味?
カイル様は何やらクスクス笑っているし、アレク様は無表情を貫いていた。
「だから、リリアーヌ嬢のことも調べさせてもらったよ。な、アレク?」
なんだかアレク様の表情がどんどんと……そう頬が赤みを帯びているというか、何なのだ?
「普段は使用人してるんだって?」
「あー、はい。一応侯爵家の長女なんですけどね……。使用人棟で掃除とか洗濯とかしてます。でも、そのおかげで舞台劇を書くことができたので今では感謝しています」
「貴族学院も通えなくなったそうじゃないか」
え?そこまで知ってるの……?
「よくご存じですね。そうなんです。義母が手を回したとしか思えないのですが……。まあ、そのおかげで商会設立することができたので、それもまた感謝しないといけないのかもしれません」
学院に通っていたらまた違う未来があったかもしれない。
けれど、学院に通わなかったからこそ、レイと出会い、オスカーたちとも出会い、商会も設立できたのだ。こうして、カイル様と出会えたことも感謝しなくては。
「本来なら単なる悲しい話なんだが、リリアーヌ嬢と話をしているとその……すべてが原動力になっているようで実に逞しい」
「あ、アリガトウゴザイマス?」
「アレク、お前も何とか話したらどうだ?もとはといえば、お前のために……」
「……?」
……アレク様のため?
「すまない。アレクは仕事もできるし、まじめでいい奴なんだが、何というかこう異性に対しては消極的とういか……」
……アレク様、お顔が真っ赤!
「リリアーヌ嬢、申し訳ないんだが、今からこいつとデートしてやってくれないか?」
「で、デート?!」
……断れないよね、この展開。
(……レイ、ごめんなさい!)
私はとりあえずはアレク様の話を聞くことになったのだった。
◇◇◇
「……じゃあ、俺はここで。いったん宿に戻るから、馬車はまた回す」
それだけ言い残すと、カイル様は風のように去って行ってしまった。
残されたのは私とエメラルドグリーンの瞳が素敵すぎるカイル様の二人。
フォンデンベルク領でも一番にぎわっている町に取り残された私たちは、とりあえずは町を散策しながらお昼を食べることにした。
「……カイルが突然すまかった」
長い沈黙の後に、アルク様が本当に申し訳なさそうに謝ってくれた。
とういか、上司を呼び捨てですか?アルク様?プライベートだからかな?
「いいえ、どんでもないです!私もここに来るのはあまりに久しぶりなので、一緒に楽しみましょう!」
「……ありがとう、リリアーヌ嬢」
「何がお好きですか?嫌いなものはありますか?」
「あ、いや、任せる……」
「畏まりました。では、私が食べたいものに決めてしまいますよ!」
……というか、アルク様ってちょっとレイとタイプが似ているかも?
そんなことが頭に浮かんでしまった。
(あー。ダメダメ!私にはレイがいるんだから……!)
私が選んだのは無難な洋食店だった。
(何がお好きか分からないからいろいろあるほうが選びやすいしね……)
このお店はいわゆる老舗の洋食屋で、小さい頃から何度か来ているお店だった。
ちょうど個室も空いていたのでそちらに通してもらった。
「アレク様、ここは私のいわゆる行きつけのお店です!オムライスもカレーもハンバーグも美味しいと思います。エビフライもおすすめですよ!」
「……そうか。では、リリアーヌ嬢と同じものでお願いしたい」
「畏まりました。では、エビフライとハンバーグセットにしましょう」
私はアレク様の分もまとめてオーダーした。
食事を待つ間、アレク様がいきなりブレゼントを下さった。
緑のリボンをあしらった小さな箱から出てきたのはとっても素敵なエメラルドがきらびやかな髪かざりだった。
(……これ、宝石だよね?高過ぎない……?)
空けてしまった手前、どうしたものか……。
「あ、アレク様。これはあまりにもその……高価すぎて頂けません……!」
私は向かい側に座るアレク様に失礼かと思ったが、箱ごと突き返した。
「今日の突然のデートに付き合わせたお詫びだ。受けとって欲しい」
「……いや、その……」
私がまごまごしていると、アレク様が立ち上がり、髪かざりを手に取ると、自ら私の髪につけてしまった。
「……良く似合ってる」
私は手をのばして髪かざりの輪郭を触る。
「……ありがとうございます。大切にしますね」
アレク様が笑顔で頷いた。
「……すまない。自己紹介を忘れていた」
私は慌てるアレク様が可愛くてクスクス笑ってしまった。
「……では、どうぞ?」
「私は、アレクサンダー・ミリオニア。24才だ。兄と妹がいる。カイルの手伝いは最近始めたが、なかなか面白いな。普段は政治絡みの仕事がメインだ」
…えーっと。
私は思わず自分の耳を疑った。
「あのー。今、聞き間違えでなければミリオニアとおっしゃいましたか?」
「……ああ、間違いない」
「もしかして……」
「……ああ、たぶんそうだ」
はぁ……。
ミリオニアという姓。
エメラルドグリーンの瞳。
カイル様に対して敬語不要。
政治絡みの仕事。
(うん、そうよね?)
「私はミリオニア国の第二王子だ」
……どうしてこうなった?
何だかまた大変なことになりそうな予感しかしなかった。
一緒にランチを取りながら、話をしたいというものだった。
(まあ、そうよね。ぽっと出来た商会と契約するのだからね……)
オーナーである私の人となりを見極めたい、という意図があるのだろう。
「終わったら、我々のほうで責任をもって指定の場所まで送り届けるので安心してほしい」
俺も行く、とオスカーはついてくる気満々だったが、先方にあえなく却下されてしまった。
(大丈夫だから、オスカー。念のためヒュースに着いてきてもらって?)
私はそうオスカーに耳打ちした。
「では、時間も惜しいので参りましょうか?」
私はカイル様のエスコートで馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
「……どちらか召し上がりになりたいレストランなどはございますか?」
こんなことになるのだったら、別宅でマリアに準備しておいてもらえば良かったなと頭によぎるが時すでに遅し……。
「フォンデンベルク領で一番賑やかな場所を案内してもらいたい。そこで適当に店に入ろう」
カイル様の提案に私はこくんとうなずいた。
私は御者に行き先を伝える。カイル様もアレク様も無言のまま馬車は走り始めた。
(何とも気まずい雰囲気だ……。えーと、何か話せ、リリアーヌ!)
「カイル様とアレク様はいつミリオニアに戻られるのですか」
苦し紛れに適当に質問をしてみた。
(レイとだったら無言でも特に感じないんだけど、はぁ……。ほぼ初対面だし、会話が続くかな……)
「ああ、もう少ししたら戻る予定だ。実は、この間の孤児院の劇も見に来ていたんだよ、なあ?アレク」
ええー?そうだったの?!
「それは存じませんでした。失礼致しました……」
もしかしてあの茶番劇も見ていた?!さすがにそれは聞けないな……。
「面白いものも見れたしな。ますます君に興味が沸いたって訳だ」
面白いもの?!ってまさかあれ?!そして、……私に興味?
カイル様は何やらクスクス笑っているし、アレク様は無表情を貫いていた。
「だから、リリアーヌ嬢のことも調べさせてもらったよ。な、アレク?」
なんだかアレク様の表情がどんどんと……そう頬が赤みを帯びているというか、何なのだ?
「普段は使用人してるんだって?」
「あー、はい。一応侯爵家の長女なんですけどね……。使用人棟で掃除とか洗濯とかしてます。でも、そのおかげで舞台劇を書くことができたので今では感謝しています」
「貴族学院も通えなくなったそうじゃないか」
え?そこまで知ってるの……?
「よくご存じですね。そうなんです。義母が手を回したとしか思えないのですが……。まあ、そのおかげで商会設立することができたので、それもまた感謝しないといけないのかもしれません」
学院に通っていたらまた違う未来があったかもしれない。
けれど、学院に通わなかったからこそ、レイと出会い、オスカーたちとも出会い、商会も設立できたのだ。こうして、カイル様と出会えたことも感謝しなくては。
「本来なら単なる悲しい話なんだが、リリアーヌ嬢と話をしているとその……すべてが原動力になっているようで実に逞しい」
「あ、アリガトウゴザイマス?」
「アレク、お前も何とか話したらどうだ?もとはといえば、お前のために……」
「……?」
……アレク様のため?
「すまない。アレクは仕事もできるし、まじめでいい奴なんだが、何というかこう異性に対しては消極的とういか……」
……アレク様、お顔が真っ赤!
「リリアーヌ嬢、申し訳ないんだが、今からこいつとデートしてやってくれないか?」
「で、デート?!」
……断れないよね、この展開。
(……レイ、ごめんなさい!)
私はとりあえずはアレク様の話を聞くことになったのだった。
◇◇◇
「……じゃあ、俺はここで。いったん宿に戻るから、馬車はまた回す」
それだけ言い残すと、カイル様は風のように去って行ってしまった。
残されたのは私とエメラルドグリーンの瞳が素敵すぎるカイル様の二人。
フォンデンベルク領でも一番にぎわっている町に取り残された私たちは、とりあえずは町を散策しながらお昼を食べることにした。
「……カイルが突然すまかった」
長い沈黙の後に、アルク様が本当に申し訳なさそうに謝ってくれた。
とういか、上司を呼び捨てですか?アルク様?プライベートだからかな?
「いいえ、どんでもないです!私もここに来るのはあまりに久しぶりなので、一緒に楽しみましょう!」
「……ありがとう、リリアーヌ嬢」
「何がお好きですか?嫌いなものはありますか?」
「あ、いや、任せる……」
「畏まりました。では、私が食べたいものに決めてしまいますよ!」
……というか、アルク様ってちょっとレイとタイプが似ているかも?
そんなことが頭に浮かんでしまった。
(あー。ダメダメ!私にはレイがいるんだから……!)
私が選んだのは無難な洋食店だった。
(何がお好きか分からないからいろいろあるほうが選びやすいしね……)
このお店はいわゆる老舗の洋食屋で、小さい頃から何度か来ているお店だった。
ちょうど個室も空いていたのでそちらに通してもらった。
「アレク様、ここは私のいわゆる行きつけのお店です!オムライスもカレーもハンバーグも美味しいと思います。エビフライもおすすめですよ!」
「……そうか。では、リリアーヌ嬢と同じものでお願いしたい」
「畏まりました。では、エビフライとハンバーグセットにしましょう」
私はアレク様の分もまとめてオーダーした。
食事を待つ間、アレク様がいきなりブレゼントを下さった。
緑のリボンをあしらった小さな箱から出てきたのはとっても素敵なエメラルドがきらびやかな髪かざりだった。
(……これ、宝石だよね?高過ぎない……?)
空けてしまった手前、どうしたものか……。
「あ、アレク様。これはあまりにもその……高価すぎて頂けません……!」
私は向かい側に座るアレク様に失礼かと思ったが、箱ごと突き返した。
「今日の突然のデートに付き合わせたお詫びだ。受けとって欲しい」
「……いや、その……」
私がまごまごしていると、アレク様が立ち上がり、髪かざりを手に取ると、自ら私の髪につけてしまった。
「……良く似合ってる」
私は手をのばして髪かざりの輪郭を触る。
「……ありがとうございます。大切にしますね」
アレク様が笑顔で頷いた。
「……すまない。自己紹介を忘れていた」
私は慌てるアレク様が可愛くてクスクス笑ってしまった。
「……では、どうぞ?」
「私は、アレクサンダー・ミリオニア。24才だ。兄と妹がいる。カイルの手伝いは最近始めたが、なかなか面白いな。普段は政治絡みの仕事がメインだ」
…えーっと。
私は思わず自分の耳を疑った。
「あのー。今、聞き間違えでなければミリオニアとおっしゃいましたか?」
「……ああ、間違いない」
「もしかして……」
「……ああ、たぶんそうだ」
はぁ……。
ミリオニアという姓。
エメラルドグリーンの瞳。
カイル様に対して敬語不要。
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