31 / 73
細やかな夢(アレク視点)
しおりを挟む
私アレクサンダー・ミリオニアは、ミリオニア国の第二王子として生まれた。兄である王太子とは仲も良く、同じ王妃を母に持つ。
王位継承権は今のところは第二位だが、兄が結婚したので子供が生まれたら順位は下がる。それを目処に、私自身は兄の補佐としての立場にあればいい、と思っているし、最近はカイルの手伝いも楽しくなってきたので、商会をやるのも良いかも知れない。
そんな少しだけ遠い未来を考えていた時に、カイルが仕事で隣国のキールにいくから一緒にいかないか、と誘われた。ここで、外交的なことや貿易を学ぶのも悪くないと思い、カイルに同行することにした。
ちなみに、カイルとの出会いは、幼馴染みであるカイルの兄で宰相補佐をしているバークレーから面倒を見てやってくれ、と半ば強引に紹介されたことがきっかけだった。
カイルは、真面目で頭が切れ優秀な人物だが、あまり隙がなく、可愛げはない。が、謎の才覚があり、流行を見極める力がずば抜けていた。これからますますクラニエル商会は拡大していくだろう。
そんなカイルが今回目をつけたのが、キール国で行われる舞台劇だった。最初は何で注目したのかわ分からなかったが、流行を作るポイントが押さえられている素晴らしいビジネスモデルがある、のだそうで一緒に行くことにした。
(後にこの話は、出版社の社長経由で雑談レベルで聞いただけの話だと知る……)
その舞台劇をお忍びの視察で見に行ったのだが、何と会場は孤児院で、キャストも孤児。孤児院内ではマルシェと呼ばれる市場が開かれ、物が売れていた。何より、舞台劇が素晴らしく、満員御礼で素晴らしい熱気に包まれていた。
更に私の興味を駆り立てたのは、このビジネスを取り仕切っているのがたった16才の貴族の女の子、ということだった。
少なくても、私の回りにはその年齢でビジネスをしている女性はいないし、まして貴族なら殊更だった。
興味を持ちすぎたため、その女性に関して勿論調べることにした。
その彼女の名前は、リリアーヌ・フォンデンベルグ。キール国の侯爵家の長女で、次期侯爵。16才。最近設立されたミスボス商会のオーナーで、小説家。舞台劇の脚本も手掛けるという。
家庭環境はよくありがちな貴族の家庭で、数年前に前侯爵である母親がなくなってからは、乗り込んできた義母のイザベラと、その腹違いの妹のエリアルに虐げられ、使用人同様の扱いを受けており、現在は使用人として働かされている。
婚約者であった伯爵家次男であるロビン・クアイリーは義妹の婚約者となっており、現在は婚約者不在。ただし、サザーランド公爵家次男のアルフォンス・サザーランドと恋仲であり、近いうちに婚約する予定。
――知れば知るほど興味深い女性だな。
それが第一印象だった。
そして、出版社で偶然にも挨拶が出来た。
彼女は、想像していたよりも幼くて、そして、底抜けに可愛いかった。
従来の貴族女性が持ついわゆる淑女という殻を自分の境遇と自分の力で脱皮した、まるで宝箱のような女性だった。
こんな女性といたら毎日楽しいだろう。
こんな女性といたら一緒に仕事をするのも楽しいだろう。
一瞬で未来が描ける、そんな女性だった。
だから、キールでも名高いサザーランド公爵家の人間にも認められたのだろう。
――愛する価値のある女性
――守るべき価値のある女性
それが、リリアーヌだった。
カイルも彼女に興味がありそうだったが、先手を打ち、彼女に近づきたい旨を告げた。カイルはすぐにその意味を理解して協力してくれることになった。
「アレク様が女性に興味を持つなんて驚きました」
とカイルには言われた。
それくらい今まではあまり女性に興味もなかった。
身分的には言い寄ってくる女性はたくさんいたが、特定の婚約者を選ぶには至らなかった。というよりも、拒否していた。
政治の権力闘争の駒になる気もなければ、王位に就くつもりもない。
結婚したならば、愛する人と共に国を支え、家族を作りたい。それだけだった。
そんな自分の細やかな夢にふさわしい女性がようやく見つかった。
聞けば、ミスボス商会はリリアーヌ嬢が正式に侯爵を継ぐまではオスカーという人物を表にたてる、と。このオスカーという人物の人選もまた素晴らしいと関心した。
(公爵家の妾腹の子供かー)
そして、サザーランド公爵を味方につけている点も申し分なかった。
それに、このミリオニアの人間が何人か商会に携わっているのもまた驚きだった。
(まさか、あのヒュースまでいたとはな)
ますます面白い。
自分がリリアーヌ嬢と婚約したら、サザーランド公爵家とも揉めるかも知れない。が、そこもまた計算のうちだった。
少なくても、まだ彼女は誰とも婚約していない。
その事実だけあれば十分だった。
彼女がミリオニアに来てくれることになった。多少強引だったが致し方ない。
まずは先に彼女の名目上の父親に会おう。
そして、ミリオニアで勝負を決める。
負け戦はしないつもりだ。
王位継承権は今のところは第二位だが、兄が結婚したので子供が生まれたら順位は下がる。それを目処に、私自身は兄の補佐としての立場にあればいい、と思っているし、最近はカイルの手伝いも楽しくなってきたので、商会をやるのも良いかも知れない。
そんな少しだけ遠い未来を考えていた時に、カイルが仕事で隣国のキールにいくから一緒にいかないか、と誘われた。ここで、外交的なことや貿易を学ぶのも悪くないと思い、カイルに同行することにした。
ちなみに、カイルとの出会いは、幼馴染みであるカイルの兄で宰相補佐をしているバークレーから面倒を見てやってくれ、と半ば強引に紹介されたことがきっかけだった。
カイルは、真面目で頭が切れ優秀な人物だが、あまり隙がなく、可愛げはない。が、謎の才覚があり、流行を見極める力がずば抜けていた。これからますますクラニエル商会は拡大していくだろう。
そんなカイルが今回目をつけたのが、キール国で行われる舞台劇だった。最初は何で注目したのかわ分からなかったが、流行を作るポイントが押さえられている素晴らしいビジネスモデルがある、のだそうで一緒に行くことにした。
(後にこの話は、出版社の社長経由で雑談レベルで聞いただけの話だと知る……)
その舞台劇をお忍びの視察で見に行ったのだが、何と会場は孤児院で、キャストも孤児。孤児院内ではマルシェと呼ばれる市場が開かれ、物が売れていた。何より、舞台劇が素晴らしく、満員御礼で素晴らしい熱気に包まれていた。
更に私の興味を駆り立てたのは、このビジネスを取り仕切っているのがたった16才の貴族の女の子、ということだった。
少なくても、私の回りにはその年齢でビジネスをしている女性はいないし、まして貴族なら殊更だった。
興味を持ちすぎたため、その女性に関して勿論調べることにした。
その彼女の名前は、リリアーヌ・フォンデンベルグ。キール国の侯爵家の長女で、次期侯爵。16才。最近設立されたミスボス商会のオーナーで、小説家。舞台劇の脚本も手掛けるという。
家庭環境はよくありがちな貴族の家庭で、数年前に前侯爵である母親がなくなってからは、乗り込んできた義母のイザベラと、その腹違いの妹のエリアルに虐げられ、使用人同様の扱いを受けており、現在は使用人として働かされている。
婚約者であった伯爵家次男であるロビン・クアイリーは義妹の婚約者となっており、現在は婚約者不在。ただし、サザーランド公爵家次男のアルフォンス・サザーランドと恋仲であり、近いうちに婚約する予定。
――知れば知るほど興味深い女性だな。
それが第一印象だった。
そして、出版社で偶然にも挨拶が出来た。
彼女は、想像していたよりも幼くて、そして、底抜けに可愛いかった。
従来の貴族女性が持ついわゆる淑女という殻を自分の境遇と自分の力で脱皮した、まるで宝箱のような女性だった。
こんな女性といたら毎日楽しいだろう。
こんな女性といたら一緒に仕事をするのも楽しいだろう。
一瞬で未来が描ける、そんな女性だった。
だから、キールでも名高いサザーランド公爵家の人間にも認められたのだろう。
――愛する価値のある女性
――守るべき価値のある女性
それが、リリアーヌだった。
カイルも彼女に興味がありそうだったが、先手を打ち、彼女に近づきたい旨を告げた。カイルはすぐにその意味を理解して協力してくれることになった。
「アレク様が女性に興味を持つなんて驚きました」
とカイルには言われた。
それくらい今まではあまり女性に興味もなかった。
身分的には言い寄ってくる女性はたくさんいたが、特定の婚約者を選ぶには至らなかった。というよりも、拒否していた。
政治の権力闘争の駒になる気もなければ、王位に就くつもりもない。
結婚したならば、愛する人と共に国を支え、家族を作りたい。それだけだった。
そんな自分の細やかな夢にふさわしい女性がようやく見つかった。
聞けば、ミスボス商会はリリアーヌ嬢が正式に侯爵を継ぐまではオスカーという人物を表にたてる、と。このオスカーという人物の人選もまた素晴らしいと関心した。
(公爵家の妾腹の子供かー)
そして、サザーランド公爵を味方につけている点も申し分なかった。
それに、このミリオニアの人間が何人か商会に携わっているのもまた驚きだった。
(まさか、あのヒュースまでいたとはな)
ますます面白い。
自分がリリアーヌ嬢と婚約したら、サザーランド公爵家とも揉めるかも知れない。が、そこもまた計算のうちだった。
少なくても、まだ彼女は誰とも婚約していない。
その事実だけあれば十分だった。
彼女がミリオニアに来てくれることになった。多少強引だったが致し方ない。
まずは先に彼女の名目上の父親に会おう。
そして、ミリオニアで勝負を決める。
負け戦はしないつもりだ。
68
あなたにおすすめの小説
「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。
海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。
アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。
しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。
「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」
聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。
※本編は全7話で完結します。
※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
大嫌いな幼馴染の皇太子殿下と婚姻させられたので、白い結婚をお願いいたしました
柴野
恋愛
「これは白い結婚ということにいたしましょう」
結婚初夜、そうお願いしたジェシカに、夫となる人は眉を顰めて答えた。
「……ああ、お前の好きにしろ」
婚約者だった隣国の王弟に別れを切り出され嫁ぎ先を失った公爵令嬢ジェシカ・スタンナードは、幼馴染でありながら、たいへん仲の悪かった皇太子ヒューパートと王命で婚姻させられた。
ヒューパート皇太子には陰ながら想っていた令嬢がいたのに、彼女は第二王子の婚約者になってしまったので長年婚約者を作っていなかったという噂がある。それだというのに王命で大嫌いなジェシカを娶ることになったのだ。
いくら政略結婚とはいえ、ヒューパートに抱かれるのは嫌だ。子供ができないという理由があれば離縁できると考えたジェシカは白い結婚を望み、ヒューパートもそれを受け入れた。
そのはず、だったのだが……?
離縁を望みながらも徐々に絆されていく公爵令嬢と、実は彼女のことが大好きで仕方ないツンデレ皇太子によるじれじれラブストーリー。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる