とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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後悔(リリー父目線)

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久しぶりに、本邸に足を運んだ。

 イザベラ達に会わないよう、こっそりと使用人棟に直接足を運んだ。使用人頭には金を少々握らせ、私が来たことを口止めした。それ以前に当然ながら誰も私が誰かも知らなかったし、聞かなかった。

 隣国の王子と公爵家が乗り込んで来たと思ったら、娘との婚約の話だった。

 父親である私は何もしていないが、娘が自ら掴んだ最高レベルの縁に驚いた。それ以上に、彼らが調査した我が侯爵家の現状に身震いがした。

 ーイザベラ達がリリーを追い出した?
 ーエリアルは私の子供ではない?

 その驚くべき内容に反応すら出来なかった。

 彼らは、イザベラ達を逮捕するつもりだ。
 そうなれば、私も終わる。
 ああ、今更ながら今までのツケが一気に押し寄せてきた。全ての責任から逃げてきた自分。

 リリーのことは嫌いだった訳ではない。
 リリーの母親であるミシェリーも自分なりに愛そうとしていた。

 だが気がついた時には寄生虫のようにイザベラがいた。そして、それが当たり前だと思ってしまった。

 今更償いなど出来ないのも分かっているし、したいとも思っていない。

 なのに、弱い自分は娘に命乞いに来ていた。
 娘なら、何とかしてくれるだろうと。

 が、使用人服を着て現れた娘はまるで別人だった。

 外見だけは母親そっくりになっていた。

 娘の口から発せられる言葉は、情け容赦なかった。ナイフよりも鋭いその言葉は、私の胸に突き刺さって抜けない楔のようだった。

 ー決別宣言。

 冷たく見下すような鋭い視線。

 彼女は次期侯爵の顔をしていた。

 私は今の愛人と早く逃げるべきなんだろうか。

 それとも、イザベラ達に娘のことを告げるべきなんだろうか。

 それとも、表面だけでも娘に命乞いし続けるべきだろうか?

 父親としても情けない。
 夫としても役に立たない。
 侯爵代行としても無能。
 全てから逃げていただけだった。

 だから、私は自由に生きた。自由に振る舞った。

 全ては来るべき時が来たのだ。

 いつも通りに流されるままにいるだけなのだろうか?

 私の居場所はどこにも、なかった。
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