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48《大泊瀬皇子の告白》
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「でも私に皇子の役に立つような価値があるとは正直思えないです」
それを聞いた大泊瀬皇子は、何故かひどく愕然とした態度を彼女に見せる。
そして彼は急に彼女から少し体を離した。
韓媛も一体どうしたのだろうかと少し不思議そうにして、そんな彼を見つめた。
そして彼はいよいよ我慢の限界を越えたようで、彼女に自身の本音をぶつけた。
「韓媛、お前もいい加減に気付け!! 俺はお前のことが好きなんだ。そんなお前をどうして殺せるっていうんだ!!」
(え、大泊瀬皇子が私のことを好き?)
韓媛が一瞬何のことだか分からないといった表情をして見せると、彼は強引に彼女の顔を上げさせる。そして彼女の唇をそのまま自身の口でふさいだ。
韓媛は皇子から急に口付けされたことに気付き、思わず彼から離れようとした。
だが彼は彼女の背中に腕を回して、彼女が離れようとするのを止めさせる。
本人の腕の力はとても強かったが、思いのほか彼からの口付けは優しかった。
結局韓媛は彼から離れることができず、そのまま彼の口付けを受け続けることになる。
そしてしばらくして、やっと大泊瀬皇子は彼女から唇を離した。
韓媛は余りのことに体から少し力がぬけ、そして頬も少し赤みがかっていた。
大泊瀬皇子は片手だけ彼女の腰に回し、もう片方の手をそのまま彼女の頬に添えて言った。
「韓媛、これで分かったか。俺がお前のことをどう思ってるのか」
韓媛もさすがにここまでされるとそれは十分に理解した。
だがそうなると少し疑問に思うことも出てくる。まずはあの皇子の婚姻の問題だ。
「でも大泊瀬皇子いってましたよね、自分には心に決めた女性がいるって」
そもそも韓媛はこの件が原因で悩んでいた。彼には意中の女性がいるからと。
それを聞いた皇子は、両手で彼女の腰を持ち直し、続けて話した。
「確かにその件は本当に紛らわしくしてすまなかった。その女性というのはお前のことだ。
だが先に正妃の話しが上がったので、先送りにせざる得なかった……」
(皇子そういうことだったの。でも意中の女性は前々からいたような感じに見えた。でも私は彼とは4年も会っていなかったのに)
「でも私と大泊瀬皇子は4年もの間会っていませんでしたよね?。それなのにどうして皇子が私のことを」
その時韓媛は自分でいってみて、ふと何か大事なことを忘れていないかと考えてみる。
(大泊瀬皇子は前々から私のことが好きだった……)
「そういえば昔、大泊瀬皇子が私を妃にするとかいっていたことがありましたよね。まさかその頃から?」
大泊瀬皇子はそれを聞いて、大きくため息をして見せる。
「確かにあの時は今程本気でいった訳ではない。だがあの頃から俺はお前を妃にしたいとはずっと思っていた」
韓媛からしてみればこれはかなり意外だ。当時大泊瀬皇子はまだ12歳で、その頃から彼は自分のことを好いていたということになる。
「すみません、大泊瀬皇子。あの時はてっきり冗談でいってるものとばかりに……」
「まぁ恐らくそうだろとは思っていたが」
皇子は彼女からはっきりそう言われてしまい、少し傷ついたような表情を見せる。
(あら、大泊瀬皇子を少し傷付けてしまったかしら?)
それから大泊瀬皇子は、韓媛にこれまでの経過を話すから聞いて欲しいといってきた。
なので韓媛もとりあえずは彼の話しを聞いてみることにした。
それから大泊瀬皇子は韓媛から体を離して座り直し、少し距離を取ってから話を始めた。
「俺は子供のころ割りと問題の多い子供で、周りの子供からもよく怖がられていた。でもそんな中、お前だけは普通に接してくれた。幼心にその優しさが正直俺には嬉しかった。だからお前なら将来自分の妃にしても良いと思った」
「皇子、それだけの理由で決められたのですか?」
韓媛からしてもこれは何とも意外な理由だなと思う。
「まぁそれもそうだが……それにお前は当時から割りと可愛かった。だから普通に好きだったのも本当だ」
大泊瀬皇子は少し恥ずかしそうにしながら答えた。韓媛はそんな彼を見て少し可愛いと思う。
「だが当時のお前はまだ恋に疎く、それでお前が年頃になるまで待つしかないと思った。だがずっと幼馴染のまま見られるのも嫌で、それで葛城に行くのをやめることにした」
「まあ、皇子はそれで葛城にこられなくなったのですね」
韓媛もこれで彼が4年間も葛城にこなくなった理由が分かった。だが実際に分かってみると何とも単純な理由である。
「それでお前が14歳になるのを待ってから葛城に行った。そして葛城円にお前を妃にしたいと申し出た。
丁度お前と子供の頃に良く遊んだ木の下で再会した時だ」
(だからお父様は皇子が私を見捨てることはしないと断言できたのね)
しかもこの婚姻は政略的な物とは中々考えにくい。これはどうみても大泊瀬皇子の純粋な恋心からきている。
「それでお父様はその話を聞いて、何といってきたのですか?」
「円も最初は少し驚いていたが、その後に『娘の韓媛が心から納得するなら、この婚姻は認めましょう』といってきた。彼は権力云々よりも娘の幸せを優先したかったようだ」
韓媛はそれを聞いて確かにあの父親ならいいそうだなと思った。
「まぁ俺としてもお前とは強制的ではなく、ちゃんと気持ちを通わせて婚姻を結びたいと思っていた。
だから何とかお前を俺に振り向かせようとして……
だが先ほども言ったように、その途中で草香幡梭姫との婚姻が上がってしまった」
(なるほどね。だいぶ皇子の事情が読めてきたわ)
ここまでくると韓媛もだいぶ気持ちが落ち着いてきた。始めはどんな重たい内容がくるのかと冷や冷やしていたが。
「だが前回の事件の際に、円は眉輪を見逃してもらう代わりに、娘のお前を俺に差し出すといってきた。
その時はよく分からなかったが、もしかすると自身の死期を悟っていたのかもしれない」
「お父様がそのようなことを。もしかすると、そうすることで私を守りたかったのかもしれませんね」
(あとはお父様は私の気持ちに気付いていたってことは……まさかそれはないわね)
韓媛もさすがに父親がそこまで感ずくことはないだろと考える。ただこればかりは本人に聞いていないので、絶対とはいいきれないが。
「確かに円なら考えそうだ。どのみち俺はそのつもりでいたから、お前の身を守るためにも良いと考えたのかもしれない。まぁ円本人がもういないので、確認のしようはないが」
葛城円はきっと娘が幸せになれるよう、そこまで色々と考えていたのであろう。韓媛はそう思うと、父にはただただ感謝の思いでいっぱいだ。
それを聞いた大泊瀬皇子は、何故かひどく愕然とした態度を彼女に見せる。
そして彼は急に彼女から少し体を離した。
韓媛も一体どうしたのだろうかと少し不思議そうにして、そんな彼を見つめた。
そして彼はいよいよ我慢の限界を越えたようで、彼女に自身の本音をぶつけた。
「韓媛、お前もいい加減に気付け!! 俺はお前のことが好きなんだ。そんなお前をどうして殺せるっていうんだ!!」
(え、大泊瀬皇子が私のことを好き?)
韓媛が一瞬何のことだか分からないといった表情をして見せると、彼は強引に彼女の顔を上げさせる。そして彼女の唇をそのまま自身の口でふさいだ。
韓媛は皇子から急に口付けされたことに気付き、思わず彼から離れようとした。
だが彼は彼女の背中に腕を回して、彼女が離れようとするのを止めさせる。
本人の腕の力はとても強かったが、思いのほか彼からの口付けは優しかった。
結局韓媛は彼から離れることができず、そのまま彼の口付けを受け続けることになる。
そしてしばらくして、やっと大泊瀬皇子は彼女から唇を離した。
韓媛は余りのことに体から少し力がぬけ、そして頬も少し赤みがかっていた。
大泊瀬皇子は片手だけ彼女の腰に回し、もう片方の手をそのまま彼女の頬に添えて言った。
「韓媛、これで分かったか。俺がお前のことをどう思ってるのか」
韓媛もさすがにここまでされるとそれは十分に理解した。
だがそうなると少し疑問に思うことも出てくる。まずはあの皇子の婚姻の問題だ。
「でも大泊瀬皇子いってましたよね、自分には心に決めた女性がいるって」
そもそも韓媛はこの件が原因で悩んでいた。彼には意中の女性がいるからと。
それを聞いた皇子は、両手で彼女の腰を持ち直し、続けて話した。
「確かにその件は本当に紛らわしくしてすまなかった。その女性というのはお前のことだ。
だが先に正妃の話しが上がったので、先送りにせざる得なかった……」
(皇子そういうことだったの。でも意中の女性は前々からいたような感じに見えた。でも私は彼とは4年も会っていなかったのに)
「でも私と大泊瀬皇子は4年もの間会っていませんでしたよね?。それなのにどうして皇子が私のことを」
その時韓媛は自分でいってみて、ふと何か大事なことを忘れていないかと考えてみる。
(大泊瀬皇子は前々から私のことが好きだった……)
「そういえば昔、大泊瀬皇子が私を妃にするとかいっていたことがありましたよね。まさかその頃から?」
大泊瀬皇子はそれを聞いて、大きくため息をして見せる。
「確かにあの時は今程本気でいった訳ではない。だがあの頃から俺はお前を妃にしたいとはずっと思っていた」
韓媛からしてみればこれはかなり意外だ。当時大泊瀬皇子はまだ12歳で、その頃から彼は自分のことを好いていたということになる。
「すみません、大泊瀬皇子。あの時はてっきり冗談でいってるものとばかりに……」
「まぁ恐らくそうだろとは思っていたが」
皇子は彼女からはっきりそう言われてしまい、少し傷ついたような表情を見せる。
(あら、大泊瀬皇子を少し傷付けてしまったかしら?)
それから大泊瀬皇子は、韓媛にこれまでの経過を話すから聞いて欲しいといってきた。
なので韓媛もとりあえずは彼の話しを聞いてみることにした。
それから大泊瀬皇子は韓媛から体を離して座り直し、少し距離を取ってから話を始めた。
「俺は子供のころ割りと問題の多い子供で、周りの子供からもよく怖がられていた。でもそんな中、お前だけは普通に接してくれた。幼心にその優しさが正直俺には嬉しかった。だからお前なら将来自分の妃にしても良いと思った」
「皇子、それだけの理由で決められたのですか?」
韓媛からしてもこれは何とも意外な理由だなと思う。
「まぁそれもそうだが……それにお前は当時から割りと可愛かった。だから普通に好きだったのも本当だ」
大泊瀬皇子は少し恥ずかしそうにしながら答えた。韓媛はそんな彼を見て少し可愛いと思う。
「だが当時のお前はまだ恋に疎く、それでお前が年頃になるまで待つしかないと思った。だがずっと幼馴染のまま見られるのも嫌で、それで葛城に行くのをやめることにした」
「まあ、皇子はそれで葛城にこられなくなったのですね」
韓媛もこれで彼が4年間も葛城にこなくなった理由が分かった。だが実際に分かってみると何とも単純な理由である。
「それでお前が14歳になるのを待ってから葛城に行った。そして葛城円にお前を妃にしたいと申し出た。
丁度お前と子供の頃に良く遊んだ木の下で再会した時だ」
(だからお父様は皇子が私を見捨てることはしないと断言できたのね)
しかもこの婚姻は政略的な物とは中々考えにくい。これはどうみても大泊瀬皇子の純粋な恋心からきている。
「それでお父様はその話を聞いて、何といってきたのですか?」
「円も最初は少し驚いていたが、その後に『娘の韓媛が心から納得するなら、この婚姻は認めましょう』といってきた。彼は権力云々よりも娘の幸せを優先したかったようだ」
韓媛はそれを聞いて確かにあの父親ならいいそうだなと思った。
「まぁ俺としてもお前とは強制的ではなく、ちゃんと気持ちを通わせて婚姻を結びたいと思っていた。
だから何とかお前を俺に振り向かせようとして……
だが先ほども言ったように、その途中で草香幡梭姫との婚姻が上がってしまった」
(なるほどね。だいぶ皇子の事情が読めてきたわ)
ここまでくると韓媛もだいぶ気持ちが落ち着いてきた。始めはどんな重たい内容がくるのかと冷や冷やしていたが。
「だが前回の事件の際に、円は眉輪を見逃してもらう代わりに、娘のお前を俺に差し出すといってきた。
その時はよく分からなかったが、もしかすると自身の死期を悟っていたのかもしれない」
「お父様がそのようなことを。もしかすると、そうすることで私を守りたかったのかもしれませんね」
(あとはお父様は私の気持ちに気付いていたってことは……まさかそれはないわね)
韓媛もさすがに父親がそこまで感ずくことはないだろと考える。ただこればかりは本人に聞いていないので、絶対とはいいきれないが。
「確かに円なら考えそうだ。どのみち俺はそのつもりでいたから、お前の身を守るためにも良いと考えたのかもしれない。まぁ円本人がもういないので、確認のしようはないが」
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(2022.04.04)
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