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61《市辺皇子と阿佐津姫の会話》
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その後韓媛は大泊瀬皇子と一緒に時間を過ごすことにする。そして気が付くと周りはすっかり夕方に差しかかっていた。
それから彼女は、大泊瀬皇子達が明日狩りに行く予定なので、自分は忍坂姫達とどう過ごすかの相談をするため、忍坂姫と阿佐津姫を探すことにした。
「大泊瀬皇子、ちょっと皇后さま達の所に行ってきますね」
韓媛はそれまで寄り添っていた大泊瀬皇子から、体を離して立ち上がった。
「あぁ、分かった。もう夕方だから早く済ませて帰ってこい。暗くなったらお前を探すのは大変だからな」
大泊瀬皇子は少し心配そうにしながら彼女にそういう。時間も夕方頃になったので少し気にしているようだ。
「はい、分かりました。出来るだけ早く戻ってきますね」
韓媛はそういって、大泊瀬皇子の元を離れて忍坂姫と阿佐津姫を探すことにした。
韓媛が外を歩いていると、少し夕日が出はじめていた。そんな外の景色を見て彼女は何て美しい光景だろうと感じる。
今回息長に来てみて本当に良かったと彼女は思った。
そして彼女が歩いていると、どこからか人の声が聞こえてきた。
どうやら息長の住居から少し外に出た場所のようで、側は林に少しおおわれている。
(誰かが話でもしてるのかしら?)
韓媛は誰がいるのか分からず、盗み聞きするのも悪いと思い、そのまま通りすぎようかとした。
だがその声はどうやら彼女の知っている人物のようだ。
「あら、これは阿佐津姫の声かしら?」
韓媛はとりあえずそっと側に行ってみる。
するとさらにもう一人の声が聞こえてきた。その相手はどうやら市辺皇子のようだ。
(え、阿佐津姫と市辺皇子?)
韓媛は余り仲の良くない2人が、どうして一緒にこんな人気のない所で話しをしているのか、少し疑問に感じた。
とりあえず2人に気付かれないようにして隠れ、そっと会話を聞いてみることにする。
「お前は昔から本当に変わらないな、阿佐津姫」
市辺皇子は少し愉快そうにしながら、彼女に話しかける。
彼自身は阿佐津姫を嫌ってるふうには見えない。だが彼女に対しては、確かに彼は少し意地の悪い言い方をしているように見える。
「久々に話しでもしようというから来てあげたのに、相変わらず人を馬鹿にしたような口調ね。あなたのそう言う所は本当に腹がたつわ」
阿佐津姫は少し気分を害したような表情を見せながら、そう彼に答える。
きっと昔からこの2人は、このようなやり取りをずっと繰り返していたのだろう。
韓媛には正直この2人の関係がいまいち理解出来ない。
特に市辺皇子にとって、阿佐津姫は過去に一度婚姻を持ちかけた相手だ。それならもう少し態度も違ってきそうにも思える。
だがもしかすると、彼にとってもその話は既に過去のこととなっており、もう彼女に対しては何の想いもないのだろうか。
(もう、2人の関係は既に終ってしまったのかもしれないわね……)
韓媛はとりあえずそう理解することにした。
そもそも2人の婚姻の話しは韓媛が生まれるよりも前の話である。
そんな昔のことを今もお互いに気にするのも少し変だろう。
市辺皇子はそんな阿佐津姫を見て少しやれやれといった表情を見せた。
だが彼からしてみれば、彼女からいわれる嫌味の1つや2つは別に珍しいことでもないだろう。
「阿佐津姫、お前は俺に一体何を期待しているんだ。残念だが、今ここでお前が期待するような言葉をいうはずもないだろう」
阿佐津姫は市辺皇子にそうあっさりといわれてしまい、ますます腹を立てる。そしてさらに彼に罵りをかけていった。
「あなたなんて本当に嫌いよ。そうやっていつも私を馬鹿にするようなことばかりいってきて……
他の人にはいつも愛想良くするくせに、その癖本音では何を考えてるのかさっぱり分からないわ」
阿佐津姫はもうこれ以上ここで話をしても無駄だと思い「もう、私は行くわ」といってその場を離れようとした。
するとどういう訳か、市辺皇子はいきなり阿佐津姫の腕をつかんで彼女が離れようとするのをやめさせた。
「ち、ちょっと離しなさいよ! もうあなたとの話は終わりよ!」
阿佐津姫は無理やり彼から腕を振り払おうとした丁度その時だった。
急に市辺皇子がを思いっきり彼女を抱きしめる。
「お前は本当に何も分かってない。俺達の関係はもうとっくに終わってる。俺はお前に優しい言葉なんて何一つかけてやれない……」
市辺皇子はそういうと、さらに阿佐津姫を強く抱きしめる。
阿佐津姫は彼のいっている言葉の意味をどうやら理解しているようで「やっぱりあなたは嫌いよ」といって、彼の胸にうずくまる。
そして少し目からは涙を浮かべていた。
そんな彼女を市辺皇子は無言でただただ抱きしめている。
そんな2人のやり取りを隠れて見ていた韓媛はかなりの衝撃を受ける。
この2人の間に、かつては恋愛感情もあったのだろう。だがきっと何かの問題や行き違いが出来て、結局2人は一緒にはなれなかったに違いない。
そして2人はそのことに対して、きっと今も後悔と相手に対する想いを引きずっている。
(この2人に一体何があったのかしら……)
韓媛は流石にこれ以上ここに隠れて聞いているのは悪い気がして、2人に気付かれないようにしながら、そっとその場から離れることにした。
それから彼女は、大泊瀬皇子達が明日狩りに行く予定なので、自分は忍坂姫達とどう過ごすかの相談をするため、忍坂姫と阿佐津姫を探すことにした。
「大泊瀬皇子、ちょっと皇后さま達の所に行ってきますね」
韓媛はそれまで寄り添っていた大泊瀬皇子から、体を離して立ち上がった。
「あぁ、分かった。もう夕方だから早く済ませて帰ってこい。暗くなったらお前を探すのは大変だからな」
大泊瀬皇子は少し心配そうにしながら彼女にそういう。時間も夕方頃になったので少し気にしているようだ。
「はい、分かりました。出来るだけ早く戻ってきますね」
韓媛はそういって、大泊瀬皇子の元を離れて忍坂姫と阿佐津姫を探すことにした。
韓媛が外を歩いていると、少し夕日が出はじめていた。そんな外の景色を見て彼女は何て美しい光景だろうと感じる。
今回息長に来てみて本当に良かったと彼女は思った。
そして彼女が歩いていると、どこからか人の声が聞こえてきた。
どうやら息長の住居から少し外に出た場所のようで、側は林に少しおおわれている。
(誰かが話でもしてるのかしら?)
韓媛は誰がいるのか分からず、盗み聞きするのも悪いと思い、そのまま通りすぎようかとした。
だがその声はどうやら彼女の知っている人物のようだ。
「あら、これは阿佐津姫の声かしら?」
韓媛はとりあえずそっと側に行ってみる。
するとさらにもう一人の声が聞こえてきた。その相手はどうやら市辺皇子のようだ。
(え、阿佐津姫と市辺皇子?)
韓媛は余り仲の良くない2人が、どうして一緒にこんな人気のない所で話しをしているのか、少し疑問に感じた。
とりあえず2人に気付かれないようにして隠れ、そっと会話を聞いてみることにする。
「お前は昔から本当に変わらないな、阿佐津姫」
市辺皇子は少し愉快そうにしながら、彼女に話しかける。
彼自身は阿佐津姫を嫌ってるふうには見えない。だが彼女に対しては、確かに彼は少し意地の悪い言い方をしているように見える。
「久々に話しでもしようというから来てあげたのに、相変わらず人を馬鹿にしたような口調ね。あなたのそう言う所は本当に腹がたつわ」
阿佐津姫は少し気分を害したような表情を見せながら、そう彼に答える。
きっと昔からこの2人は、このようなやり取りをずっと繰り返していたのだろう。
韓媛には正直この2人の関係がいまいち理解出来ない。
特に市辺皇子にとって、阿佐津姫は過去に一度婚姻を持ちかけた相手だ。それならもう少し態度も違ってきそうにも思える。
だがもしかすると、彼にとってもその話は既に過去のこととなっており、もう彼女に対しては何の想いもないのだろうか。
(もう、2人の関係は既に終ってしまったのかもしれないわね……)
韓媛はとりあえずそう理解することにした。
そもそも2人の婚姻の話しは韓媛が生まれるよりも前の話である。
そんな昔のことを今もお互いに気にするのも少し変だろう。
市辺皇子はそんな阿佐津姫を見て少しやれやれといった表情を見せた。
だが彼からしてみれば、彼女からいわれる嫌味の1つや2つは別に珍しいことでもないだろう。
「阿佐津姫、お前は俺に一体何を期待しているんだ。残念だが、今ここでお前が期待するような言葉をいうはずもないだろう」
阿佐津姫は市辺皇子にそうあっさりといわれてしまい、ますます腹を立てる。そしてさらに彼に罵りをかけていった。
「あなたなんて本当に嫌いよ。そうやっていつも私を馬鹿にするようなことばかりいってきて……
他の人にはいつも愛想良くするくせに、その癖本音では何を考えてるのかさっぱり分からないわ」
阿佐津姫はもうこれ以上ここで話をしても無駄だと思い「もう、私は行くわ」といってその場を離れようとした。
するとどういう訳か、市辺皇子はいきなり阿佐津姫の腕をつかんで彼女が離れようとするのをやめさせた。
「ち、ちょっと離しなさいよ! もうあなたとの話は終わりよ!」
阿佐津姫は無理やり彼から腕を振り払おうとした丁度その時だった。
急に市辺皇子がを思いっきり彼女を抱きしめる。
「お前は本当に何も分かってない。俺達の関係はもうとっくに終わってる。俺はお前に優しい言葉なんて何一つかけてやれない……」
市辺皇子はそういうと、さらに阿佐津姫を強く抱きしめる。
阿佐津姫は彼のいっている言葉の意味をどうやら理解しているようで「やっぱりあなたは嫌いよ」といって、彼の胸にうずくまる。
そして少し目からは涙を浮かべていた。
そんな彼女を市辺皇子は無言でただただ抱きしめている。
そんな2人のやり取りを隠れて見ていた韓媛はかなりの衝撃を受ける。
この2人の間に、かつては恋愛感情もあったのだろう。だがきっと何かの問題や行き違いが出来て、結局2人は一緒にはなれなかったに違いない。
そして2人はそのことに対して、きっと今も後悔と相手に対する想いを引きずっている。
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