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考えてみたら、発情期以外で智明は僕に触れようとしない。距離も縮めない。いつも落ち着いて見守ってくれている。それはまるで、幼い子を見守る親のように・・・。
僕は智明を好きになったからこそ、智明が僕を好きじゃないことに気づいてしまった。
そう言えば、智明はあの時も傍にいて欲しいとは言ったけど、好きだとは一言も言ってない。
心臓がギュッと痛くなった。
僕が智明に申し訳ないと思うように、智明もまた、僕がこうなったのは自分のせいだと思ってるのかもしれない。
責任感の強い智明。
クラスではいつも、学級委員をやっていた。誰かが困っていたらすぐ見つけて手を差し伸べて、分け隔てなく助けていた。
僕がこんな風になったから、責任を取ってくれようとしたのか・・・。
発情期の事故とは言え、同意なく僕を犯し、それが原因で子供が産めなくなった僕への罪滅ぼし。好きでもないのに、僕の人生を壊してしまった責任を感じて、僕の全ての面倒を見てくれようとしているんだ。
バカで子供が産めないオメガなんて、誰ももらってくれない。でも一人で生きていくには学歴もない僕にはちゃんとした仕事は無理だ。だから智明が、僕を養ってくれるのか。
そのことに気がついて、僕の口からは笑いがこぼれた。
僕はなんて馬鹿なんだろう。
なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろう。
考えたらすぐに分かることなのに。
智明に対して、僕は自分が悪いと思っているけど、周りは違った。両親ですら、智明と智明の両親を責めたじゃないか。
責任感の強い智明がうちの両親に責められ、さらに僕の身体に一生治らない傷をつけてしまったと知ったら、自分を責めて責任を取るに決まってるじゃないか。
僕は笑いながら涙が零れた。
なんでもっと早くに気づかなかったんだろう。
僕がこんなに好きになる前に気づいていたら、決して好きにはならなかったのに・・・。
笑いはいつしか嗚咽に変わり、僕は一人で泣いた。
なんでこんなことになってしまったんだろう・・・。
もし戻ることができるなら、あのクリスマスの日に戻りたい。そうしたら、僕はスマホを取りに行かなかったのに・・・。
僕は誰もいない部屋の中で、涙が枯れるまで泣いた。思いっきり泣いて、智明が帰るまでにいつもの顔を作るのだ。
智明が責任のために完璧なパートナーを演じるのなら、僕も今まで通り何も知らない振りをして、幸せを演じなくてはいけない。
優しいパートナーが傍にいてくれて幸せだよ。
そういう顔をしていなければ・・・。
僕たちはそうやってお互いに演技をしながら過ごした。表面上は仲のいい二人。
穏やかで静かで笑顔が絶えない。お互いを思いやり、助け合っている若い夫夫だ。その姿に初めは難色を示していた僕の両親も安心したと胸をなでおろしている。
うん。とっても僕は幸せだよ。
僕はみんなに、笑顔でそう言っていた。
智明は変わらない。いつでもずっと優しくて、僕を守ってくれる。発情期も決して我を通さず、僕の欲しいことばかりしてくれる。優しくて、激しくて・・・。
それがどんなに智明に我慢を強いているかと思うとやるせなくなる。だけど僕は何も知らない振りをする。だからいつも、笑顔で言うんだ。
『いつもありがとう』
だから今回も笑顔を作る。
「智。今回も優しくしてくれてありがとう」
あれから10年目を迎えるクリスマスを前に訪れた発情期の終わりの朝、僕は目覚めて初めにそう言った。
智明は今から会社に行く。
起き抜け一番にそういった僕に、智明はふわりと微笑む。
「佐奈もお疲れ様。佐奈は今日まで休みだね。疲れただろう?今日はゆっくり休んでて。片付けも僕がやるからそのままにしてていいよ」
優しい智明の言葉。
「ありがとう。智も仕事頑張ってね」
僕も笑顔で返す。そして智明は僕に笑って頷くと寝室から出ていった。
これから自分の部屋に行って着替えて家を出るのだ。
完璧なパートナーは僕のために朝食をテーブルに用意して、出かけに一言言ってから会社へと向かった。
僕は智明を好きになったからこそ、智明が僕を好きじゃないことに気づいてしまった。
そう言えば、智明はあの時も傍にいて欲しいとは言ったけど、好きだとは一言も言ってない。
心臓がギュッと痛くなった。
僕が智明に申し訳ないと思うように、智明もまた、僕がこうなったのは自分のせいだと思ってるのかもしれない。
責任感の強い智明。
クラスではいつも、学級委員をやっていた。誰かが困っていたらすぐ見つけて手を差し伸べて、分け隔てなく助けていた。
僕がこんな風になったから、責任を取ってくれようとしたのか・・・。
発情期の事故とは言え、同意なく僕を犯し、それが原因で子供が産めなくなった僕への罪滅ぼし。好きでもないのに、僕の人生を壊してしまった責任を感じて、僕の全ての面倒を見てくれようとしているんだ。
バカで子供が産めないオメガなんて、誰ももらってくれない。でも一人で生きていくには学歴もない僕にはちゃんとした仕事は無理だ。だから智明が、僕を養ってくれるのか。
そのことに気がついて、僕の口からは笑いがこぼれた。
僕はなんて馬鹿なんだろう。
なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろう。
考えたらすぐに分かることなのに。
智明に対して、僕は自分が悪いと思っているけど、周りは違った。両親ですら、智明と智明の両親を責めたじゃないか。
責任感の強い智明がうちの両親に責められ、さらに僕の身体に一生治らない傷をつけてしまったと知ったら、自分を責めて責任を取るに決まってるじゃないか。
僕は笑いながら涙が零れた。
なんでもっと早くに気づかなかったんだろう。
僕がこんなに好きになる前に気づいていたら、決して好きにはならなかったのに・・・。
笑いはいつしか嗚咽に変わり、僕は一人で泣いた。
なんでこんなことになってしまったんだろう・・・。
もし戻ることができるなら、あのクリスマスの日に戻りたい。そうしたら、僕はスマホを取りに行かなかったのに・・・。
僕は誰もいない部屋の中で、涙が枯れるまで泣いた。思いっきり泣いて、智明が帰るまでにいつもの顔を作るのだ。
智明が責任のために完璧なパートナーを演じるのなら、僕も今まで通り何も知らない振りをして、幸せを演じなくてはいけない。
優しいパートナーが傍にいてくれて幸せだよ。
そういう顔をしていなければ・・・。
僕たちはそうやってお互いに演技をしながら過ごした。表面上は仲のいい二人。
穏やかで静かで笑顔が絶えない。お互いを思いやり、助け合っている若い夫夫だ。その姿に初めは難色を示していた僕の両親も安心したと胸をなでおろしている。
うん。とっても僕は幸せだよ。
僕はみんなに、笑顔でそう言っていた。
智明は変わらない。いつでもずっと優しくて、僕を守ってくれる。発情期も決して我を通さず、僕の欲しいことばかりしてくれる。優しくて、激しくて・・・。
それがどんなに智明に我慢を強いているかと思うとやるせなくなる。だけど僕は何も知らない振りをする。だからいつも、笑顔で言うんだ。
『いつもありがとう』
だから今回も笑顔を作る。
「智。今回も優しくしてくれてありがとう」
あれから10年目を迎えるクリスマスを前に訪れた発情期の終わりの朝、僕は目覚めて初めにそう言った。
智明は今から会社に行く。
起き抜け一番にそういった僕に、智明はふわりと微笑む。
「佐奈もお疲れ様。佐奈は今日まで休みだね。疲れただろう?今日はゆっくり休んでて。片付けも僕がやるからそのままにしてていいよ」
優しい智明の言葉。
「ありがとう。智も仕事頑張ってね」
僕も笑顔で返す。そして智明は僕に笑って頷くと寝室から出ていった。
これから自分の部屋に行って着替えて家を出るのだ。
完璧なパートナーは僕のために朝食をテーブルに用意して、出かけに一言言ってから会社へと向かった。
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