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自分がオメガであること。発情期は自分をコントロールできないこと。そして自分の意志とは関係なくアルファを引き付け狂わせてしまうこと。そしてそれによって、自分が傷ついてしまうこと。
そのことがなんの準備もないまま僕を襲い、僕の心は深く傷つき、恐怖に支配された。
よく知っている智明にすら、あの時恐怖を覚えた。それが全然知らない赤の他人だったら。そしてそれが一人じゃなかったら・・・。
そう思うと恐怖で足が竦む。
このままではダメだと、外に出ようとしたこともあった。だけど、玄関を出て、エレベーターに乗ってエントランスを抜けて・・・そこが限界だった。僕はその場で吐いて、動けなくなった。
怖いのはアルファだけじゃない。
ベータやオメガの視線も怖かった。
もともとオメガ自体、淫乱で低知能のイメージがある。
なのに、子供が産めないのに発情期はあって、さらに高校にも行ってない僕のことを、世間がどう見てるのか。
よく考えれば誰もそんなこと知らないのだから、どうもこうもないのだけど、その時の僕は痛いくらいに他人の視線が怖かった。みんなが僕を見て、淫乱で馬鹿なオメガだと囁いているように思えたからだ。
そんな僕を、智明は優しく包み込んでくれた。
いつも僕の傍にいて、穏やかに温かく見守ってくれる。決して声を荒らげることも無く、なかなか前に踏み出せない僕にイラつきもせず、僕に合わせて寄り添ってくれる。
そして僕は、いつしかそんな智明に惹かれていった。
家から出れない僕に合わせてなのか、智明は学校以外には出歩かない。寄り道もしない。友達からの連絡もない。だからいつも僕の傍にいてくれる。何かを一緒にする訳でもなく、話をする訳でもない。だけど、なるべく自室には籠らず、リビングで一緒に過ごしてくれるのだ。
本当は僕たちの寝室は別々にある。だからお互いそこに籠ってしまえば普段は顔を合わさずに過ごす事もできるはずなのに智明はそうせず、なぜか共有スペースであるリビングで常に過ごしてくれていた。
初め僕は自室に籠っていたけど、智明がリビングにいることを知って、僕もそうすることにした。どうして智明がリビングで過ごしているのか分からなかったけど、一人でいると心が沈んでしまう僕は少しでもいいから誰かの傍にいたかった。誰かの気配を近くで感じるだけで、僕の心は安定したからだ。
さらに、僕達の家にはお互いの寝室の他にもう一つ、別の寝室がある。
アルファとオメガが一緒に住むということは、発情期を共に過ごすということだ。
おそらくは主寝室として作られた部屋なのだろう。そこは直接バスルームに繋がっていて、 発情期の間はそことバスルームを他のところを通らずに行き来出来る。だからそこに大きなベッドを置き、替えの寝具やミニ冷蔵庫などを置いてその期間、そこから出なくてもいいようにしてあるのだ。
そうやって発情期は一緒に寝室で過ごし、それ以外の時はリビングで共に過す。そうして僕達は、いつしかお互い空気のような存在になっていた。いるのが当たり前で、いないと落ち着かない。
そうして穏やかに過ごすうちに、僕の中で智明の存在が大きくなり、好きだと認識するようになった。
僕の中で今まで、智明は友達の一人だった。特に二人で出かけるわけでもなく、あくまで友達グループの一人。だから智明も同じように思っていると思ってたけど、あの時・・・僕の傍にいたいと言ってくれたあの時、もしかして僕のことが好きなのかな、と思ってしまった。そうでなければあんなこと言わないし、こうやってずっと一緒にいてくれるはずがない。こんなに甘やかに優しく接してくれるわけがない。
退院してしばらくはなんにも考えられなかったけど、生活にも慣れて心が落ち着き始めると、そんなことを思い始めた。
最初はそんな智明の思いに応えられないと申し訳なく思ってたけど、自分の中でも智明の存在が大きくなって来ると、それを智明に伝えたいと思い始めた。
僕も智明が好きだよ。
だけど、いざ言おうと思うとなかなか言い出せず、僕達の関係はそのまま変わらず過ぎていった。
だけど、ある時気がついた。
智明を好きだと自覚して初めて、僕は智明の行動がおかしいことに気がついたんだ。
だって、好きだったらどきどきする。そしてもっと近づきたい。近づいて触れたい。そして、キスしてそれから・・・。
僕は智明を好きになって、そしてそれを言い出せない間、もっともっと傍に寄りたいと思った。
だから一定の距離を置く智明にもどかしさすら覚えた。
智明はそれで平気なの?
もっと近づきたいとか触れたいとか思わないの?
僕がそんなふうに思っていても、智明は変わらず優しく温かく僕の傍にいる。だけど、それ以上は近づかない。
そのことがなんの準備もないまま僕を襲い、僕の心は深く傷つき、恐怖に支配された。
よく知っている智明にすら、あの時恐怖を覚えた。それが全然知らない赤の他人だったら。そしてそれが一人じゃなかったら・・・。
そう思うと恐怖で足が竦む。
このままではダメだと、外に出ようとしたこともあった。だけど、玄関を出て、エレベーターに乗ってエントランスを抜けて・・・そこが限界だった。僕はその場で吐いて、動けなくなった。
怖いのはアルファだけじゃない。
ベータやオメガの視線も怖かった。
もともとオメガ自体、淫乱で低知能のイメージがある。
なのに、子供が産めないのに発情期はあって、さらに高校にも行ってない僕のことを、世間がどう見てるのか。
よく考えれば誰もそんなこと知らないのだから、どうもこうもないのだけど、その時の僕は痛いくらいに他人の視線が怖かった。みんなが僕を見て、淫乱で馬鹿なオメガだと囁いているように思えたからだ。
そんな僕を、智明は優しく包み込んでくれた。
いつも僕の傍にいて、穏やかに温かく見守ってくれる。決して声を荒らげることも無く、なかなか前に踏み出せない僕にイラつきもせず、僕に合わせて寄り添ってくれる。
そして僕は、いつしかそんな智明に惹かれていった。
家から出れない僕に合わせてなのか、智明は学校以外には出歩かない。寄り道もしない。友達からの連絡もない。だからいつも僕の傍にいてくれる。何かを一緒にする訳でもなく、話をする訳でもない。だけど、なるべく自室には籠らず、リビングで一緒に過ごしてくれるのだ。
本当は僕たちの寝室は別々にある。だからお互いそこに籠ってしまえば普段は顔を合わさずに過ごす事もできるはずなのに智明はそうせず、なぜか共有スペースであるリビングで常に過ごしてくれていた。
初め僕は自室に籠っていたけど、智明がリビングにいることを知って、僕もそうすることにした。どうして智明がリビングで過ごしているのか分からなかったけど、一人でいると心が沈んでしまう僕は少しでもいいから誰かの傍にいたかった。誰かの気配を近くで感じるだけで、僕の心は安定したからだ。
さらに、僕達の家にはお互いの寝室の他にもう一つ、別の寝室がある。
アルファとオメガが一緒に住むということは、発情期を共に過ごすということだ。
おそらくは主寝室として作られた部屋なのだろう。そこは直接バスルームに繋がっていて、 発情期の間はそことバスルームを他のところを通らずに行き来出来る。だからそこに大きなベッドを置き、替えの寝具やミニ冷蔵庫などを置いてその期間、そこから出なくてもいいようにしてあるのだ。
そうやって発情期は一緒に寝室で過ごし、それ以外の時はリビングで共に過す。そうして僕達は、いつしかお互い空気のような存在になっていた。いるのが当たり前で、いないと落ち着かない。
そうして穏やかに過ごすうちに、僕の中で智明の存在が大きくなり、好きだと認識するようになった。
僕の中で今まで、智明は友達の一人だった。特に二人で出かけるわけでもなく、あくまで友達グループの一人。だから智明も同じように思っていると思ってたけど、あの時・・・僕の傍にいたいと言ってくれたあの時、もしかして僕のことが好きなのかな、と思ってしまった。そうでなければあんなこと言わないし、こうやってずっと一緒にいてくれるはずがない。こんなに甘やかに優しく接してくれるわけがない。
退院してしばらくはなんにも考えられなかったけど、生活にも慣れて心が落ち着き始めると、そんなことを思い始めた。
最初はそんな智明の思いに応えられないと申し訳なく思ってたけど、自分の中でも智明の存在が大きくなって来ると、それを智明に伝えたいと思い始めた。
僕も智明が好きだよ。
だけど、いざ言おうと思うとなかなか言い出せず、僕達の関係はそのまま変わらず過ぎていった。
だけど、ある時気がついた。
智明を好きだと自覚して初めて、僕は智明の行動がおかしいことに気がついたんだ。
だって、好きだったらどきどきする。そしてもっと近づきたい。近づいて触れたい。そして、キスしてそれから・・・。
僕は智明を好きになって、そしてそれを言い出せない間、もっともっと傍に寄りたいと思った。
だから一定の距離を置く智明にもどかしさすら覚えた。
智明はそれで平気なの?
もっと近づきたいとか触れたいとか思わないの?
僕がそんなふうに思っていても、智明は変わらず優しく温かく僕の傍にいる。だけど、それ以上は近づかない。
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