12 / 40
12
しおりを挟む
そう思って僕はゆっくりとベッドを降りて着替えを始めた。
そして軽く食事を摂ったあと、スマホを見ながら考える。両親に連絡した方がいいよね。
さすがにもう智明も僕がいないのには気づいてると思うけど、実家に連絡したのかな?母さんたちはもう知ってるのかな・・・。
今日は土曜日だから父さんもいるよね。
僕はスマホを手に取って非通知で実家に電話を入れた。すると、すぐに電話から母の声がする。
『はい。水森です』
「あ・・・母さん、僕。佐奈」
その僕の声に母が大きな声を出す。
『佐奈!あなた一体どこにいるの?!』
その言葉に、既に僕のことを聞いてることが分かる。でも、なんて聞いてるんだろう?
「母さん、ごめん。・・・あのさ、母さんたちは僕のこと、どんな風に聞いてるの?」
『あなたが昨夜帰らなかったって、智明くんから電話が来たの』
帰らなかった、か・・・。
「それだけ?」
『それだけよ』
僕が家を出たことは言わなかったんだ。
「僕さ、家を出たんだ。智と別れる」
どこまで話せばいいんだろう。迷いながらも、とりあえず事実を話した。
『別れる、て・・・あなた達上手くやってたんじゃないの?』
「やってたよ。これ以上ないくらい」
『だったらどうして・・・』
母の言葉に言葉が詰まる。
だけど、今まで散々心配をかけてきた。もし僕がここで誤魔化したとしても、結局色々考えて心配してしまうのだ。だったら本当のことを話そう。
僕は、この10年の僕たちの関係を話した。
僕が智明を好きになってしまったこと。だけど智明は僕を好きになってくれなかったこと。なのに自分を犠牲にして僕に尽くしてくれたこと。
「辛いんだ、母さん。僕にやさしくしてくれればくれるほど、僕は辛くなる。だってそれは、僕を好きだからじゃないんだ。あの時の責任を取るためなんだよ」
話してるうちに涙が出てくる。もう枯れたと思ったのに・・・。
「智はね、すごく優しいの。僕に対して何でもしてくれて、怒ったりもしないし、苛立ったりもしない。この10年、本当に優しい智しか知らない。でも、それって智にとってはすごく辛いことだったんじゃないかと思うんだ。好きでもない相手に合わせて傍にいるなんて、どれだけ自分を押し殺してきたのかと思うと、僕も辛くて・・・。だから、お互い辛いなら、もうやめた方がいいでしょ?」
涙声になってしまっているのに母は気づいているのだろう。何も言わずに僕の話を聞いてくれる。
「僕はもう、高校受験に失敗して先が見えない子供じゃない。仕事もしてお金も稼げる。智のお世話にならなくても、十分生活できるんだよ。だから解放してあげたいんだ。僕という枷から。だから母さんたちも、もう智を責めないで。僕は大丈夫だから」
最後にそう締めくくると。母はようやく口を開いた。
『本当に大丈夫なの?』
「大丈夫だよ。家はちゃんとオメガ専用だし、仕事も決まってる。年明けから出社することになってるんだ」
『どこにいるのかは教えてくれないの?』
心配する母の言葉。だけど、僕は言えない。
「今はまだ言えない。母さんに言って智に知れたら、きっと智は僕のところに来てしまう。責任感の強い智は僕の話なんて聞いてくれないよ」
『あなた達、話し合ってないの?』
「話してない。僕が黙って出てきた」
『佐奈』
「母さん。智の責任感は筋金入りなんだ。僕が何を言っても、どんなに懇願しても、きっと聞いてくれない。智は僕の身体がこうなったのは自分のせいだと思ってる。だからいくら僕が一人でも生きていけると言ったって、きっと僕の傍から離れない」
僕が一人で寂しく人生を送らないように、ずっと傍に居てくれる。それが智明の責任の取り方なんだ。
『でも言ってないんでしょ?あなたの気持ちを』
僕の気持ち?
智明を好きだという気持ち?
「言ってないよ。あっちは好きになんてなるつもりがないのに、僕だけ好きになっちゃったなんて、恥ずかしくて言えない」
それに惨めだ。
そして軽く食事を摂ったあと、スマホを見ながら考える。両親に連絡した方がいいよね。
さすがにもう智明も僕がいないのには気づいてると思うけど、実家に連絡したのかな?母さんたちはもう知ってるのかな・・・。
今日は土曜日だから父さんもいるよね。
僕はスマホを手に取って非通知で実家に電話を入れた。すると、すぐに電話から母の声がする。
『はい。水森です』
「あ・・・母さん、僕。佐奈」
その僕の声に母が大きな声を出す。
『佐奈!あなた一体どこにいるの?!』
その言葉に、既に僕のことを聞いてることが分かる。でも、なんて聞いてるんだろう?
「母さん、ごめん。・・・あのさ、母さんたちは僕のこと、どんな風に聞いてるの?」
『あなたが昨夜帰らなかったって、智明くんから電話が来たの』
帰らなかった、か・・・。
「それだけ?」
『それだけよ』
僕が家を出たことは言わなかったんだ。
「僕さ、家を出たんだ。智と別れる」
どこまで話せばいいんだろう。迷いながらも、とりあえず事実を話した。
『別れる、て・・・あなた達上手くやってたんじゃないの?』
「やってたよ。これ以上ないくらい」
『だったらどうして・・・』
母の言葉に言葉が詰まる。
だけど、今まで散々心配をかけてきた。もし僕がここで誤魔化したとしても、結局色々考えて心配してしまうのだ。だったら本当のことを話そう。
僕は、この10年の僕たちの関係を話した。
僕が智明を好きになってしまったこと。だけど智明は僕を好きになってくれなかったこと。なのに自分を犠牲にして僕に尽くしてくれたこと。
「辛いんだ、母さん。僕にやさしくしてくれればくれるほど、僕は辛くなる。だってそれは、僕を好きだからじゃないんだ。あの時の責任を取るためなんだよ」
話してるうちに涙が出てくる。もう枯れたと思ったのに・・・。
「智はね、すごく優しいの。僕に対して何でもしてくれて、怒ったりもしないし、苛立ったりもしない。この10年、本当に優しい智しか知らない。でも、それって智にとってはすごく辛いことだったんじゃないかと思うんだ。好きでもない相手に合わせて傍にいるなんて、どれだけ自分を押し殺してきたのかと思うと、僕も辛くて・・・。だから、お互い辛いなら、もうやめた方がいいでしょ?」
涙声になってしまっているのに母は気づいているのだろう。何も言わずに僕の話を聞いてくれる。
「僕はもう、高校受験に失敗して先が見えない子供じゃない。仕事もしてお金も稼げる。智のお世話にならなくても、十分生活できるんだよ。だから解放してあげたいんだ。僕という枷から。だから母さんたちも、もう智を責めないで。僕は大丈夫だから」
最後にそう締めくくると。母はようやく口を開いた。
『本当に大丈夫なの?』
「大丈夫だよ。家はちゃんとオメガ専用だし、仕事も決まってる。年明けから出社することになってるんだ」
『どこにいるのかは教えてくれないの?』
心配する母の言葉。だけど、僕は言えない。
「今はまだ言えない。母さんに言って智に知れたら、きっと智は僕のところに来てしまう。責任感の強い智は僕の話なんて聞いてくれないよ」
『あなた達、話し合ってないの?』
「話してない。僕が黙って出てきた」
『佐奈』
「母さん。智の責任感は筋金入りなんだ。僕が何を言っても、どんなに懇願しても、きっと聞いてくれない。智は僕の身体がこうなったのは自分のせいだと思ってる。だからいくら僕が一人でも生きていけると言ったって、きっと僕の傍から離れない」
僕が一人で寂しく人生を送らないように、ずっと傍に居てくれる。それが智明の責任の取り方なんだ。
『でも言ってないんでしょ?あなたの気持ちを』
僕の気持ち?
智明を好きだという気持ち?
「言ってないよ。あっちは好きになんてなるつもりがないのに、僕だけ好きになっちゃったなんて、恥ずかしくて言えない」
それに惨めだ。
72
あなたにおすすめの小説
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
王子殿下が恋した人は誰ですか
月齢
BL
イルギアス王国のリーリウス王子は、老若男女を虜にする無敵のイケメン。誰もが彼に夢中になるが、自由気ままな情事を楽しむ彼は、結婚適齢期に至るも本気で恋をしたことがなかった。
――仮装舞踏会の夜、運命の出会いをするまでは。
「私の結婚相手は、彼しかいない」
一夜の情事ののち消えたその人を、リーリウスは捜す。
仮面を付けていたから顔もわからず、手がかりは「抱けばわかる、それのみ」というトンデモ案件だが、親友たちに協力を頼むと(一部強制すると)、優秀な心の友たちは候補者を五人に絞り込んでくれた。そこにリーリウスが求める人はいるのだろうか。
「当たりが出るまで、抱いてみる」
優雅な笑顔でとんでもないことをヤらかす王子の、彼なりに真剣な花嫁さがし。
※性モラルのゆるい世界観。主人公は複数人とあれこれヤりますので、苦手な方はご遠慮ください。何でもありの大人の童話とご理解いただける方向け。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
アルファだけど愛されたい
屑籠
BL
ベータの家系に生まれた突然変異のアルファ、天川 陸。
彼は、疲れていた。何もかもに。
そんな時、社の視察に来ていた上流階級のアルファに見つかったことで、彼の生活は一変する。
だが……。
*甘々とか溺愛とか、偏愛とか書いてみたいなぁと思って見切り発車で書いてます。
*不定期更新です。なるべく、12月までメインで更新していきたいなとは思っていますが、ムーンライトノベルさんにも書きかけを残していますし、イスティアもアドラギも在りますので、毎日は出来ません。
完結まで投稿できました。
至高のオメガとガラスの靴
むー
BL
幼なじみのアカリちゃんは男の子だけどオメガ。
誰よりも綺麗で勉強も運動も出来る。
そして、アカリちゃんから漂うフェロモンは誰もが惹きつけらる。
正に"至高のオメガ"
僕-ヒロ-はアルファだけど見た目は普通、勉強も普通、運動なんて普通以下。
だから周りは僕を"欠陥品のアルファ"と呼ぶ。
そんな僕をアカリちゃんはいつも「大好き」と言って僕のそばに居てくれる。
周りに群がる優秀なアルファなんかに一切目もくれない。
"欠陥品"の僕が"至高"のアカリちゃんのそばにずっと居ていいのかな…?
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】←今ココ
↓
【金の野獣と薔薇の番】
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる