さかなのみるゆめ

ruki

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いつもふわふわ笑って、下手したら半分以上冗談に聞こえてしまう木佐さんの言葉は真剣そのもの。だけど、そんなことより・・・。

「木佐さんて、アルファだったんですか?」

僕と番うということは、アルファだよね?

僕は思った疑問をそのまま口にしただけなのに、真剣な表情だった木佐さんの顔がきょとんとなる。

「・・・今まで知らなかったの?」

木佐さんのバースですか?

「はい」

だって今はバースはあまり公表されないし、女性に年齢を訊くくらい相手にバースを訊くのは失礼とされている。本人の口から出ない限り分からない。

「だって分かるでしょ?フェロモンとかで」

フェロモン?

今度は僕がきょとんのなる。そんな僕に少し困った顔をした木佐さんは一つ息をついた。

「そうか・・・君はフェロモンに鈍い人なんだね」

「フェロモンて、発情期に出るやつですか?」

相手を狂わせてしまう。

「それは強烈なやつね。アルファもオメガも普段からフェロモンは出しているんだよ。相手に影響を与えない程度に。それを嗅ぎ分けて、アルファもオメガもパートナーを探すんだ」

フェロモンて常に出てるの?
僕からも出てる?

「水森くん、今までよく無事でいたね。大体のオメガはフェロモンを嗅ぎ分けて、自分に寄ってくるアルファを警戒するんだよ。でないと、みんながみんないいアルファとは限らないからね」

僕は木佐さんの話にびっくりした。オメガって、そうやって身を守らなきゃいけないんだ。
知らなかった。引きこもりの時期が長かったからかな?オメガの知り合いもいないし、早くに家を出たから母さんともそんな話はしなかった。

「あの・・・僕からも出てますか?フェロモン」

心配になって訊いてみると、木佐さんは頷いた。

「君からもとてもいい香りがするよ」

その言葉に僕は思わず自分の手首の匂いを嗅いでみたけど、全然分からなかった。

「自分じゃ分からないよ。でも人のは分かるはずなんだけどな・・・」

え?僕は珍しいタイプ?

「時々鈍い子はいるけど、水森くんほど分からない子は初めて会ったよ。・・・ということは、うちの他の社員のバースも知らないの?」

他の社員?それは柳瀬さんと神田さんと戸田さん?
確かに知らない。

僕はこくりと頷いた。そんな僕に苦笑いをして木佐さんが教えてくれる。

「みんなアルファだよ。僕が独立して会社を起こした時に気の合う奴を引っ張って来たら、見事にアルファばかりでね。結果的にアルファしかいない会社になったんだ。で、それじゃまずいと役所から注意されて、今回の社員募集になったわけ」

企業は色々なバースの人を雇わなければならない。特に国はオメガ雇用を促している。そのためアルファしかいないこの会社は、他のバースの社員も雇うように注意されてしまったようだ。

それにしても会社の人達、全員アルファだったのか・・・。

「君の前にも何人かオメガの子が受けに来てくれたんだけど、アルファばかりの社内を見ると面接も受けずに帰ってしまう子ばかりで、これは先にベータの人を雇わなきゃならないのかとみんなで話していたところに君が来て・・・」

僕は全然気づいてないので普通に面接して普通に帰ったのか・・・。

昨日木佐さんは一目惚れして採用した、みたいなことを言ってたけど、本当は鈍いオメガだから採用されたのだろうか・・・。

なんだなちょっと釈然としないような・・・。

僕が難しい顔をしたせいだろうか、木佐さんは慌てたように付け足した。

「君のデザインもとても素晴らしかったからだよ。前の会社で手がけた仕事も見事だったし、採用の一番の決め手はデザインだ」

昨日はデザインは後から見たって言ってたけど・・・。

僕がじっと木佐さんを見ると、少し焦ったようににこっと笑った。その姿がなんだかかわいく見えて笑ってしまった。10歳以上も年が上の、しかも上司に向けて思うのは失礼だけど・・・。

その時ふと、胸のむかつきが治まってることに気づいた。

あれ?気持ち悪くない。

もしかして自覚はないけど、木佐さんのフェロモンを感じとってるのかもしれない。それで、そのフェロモンは僕と相性がいいのかも・・・。

そんなことを思っていたら、木佐さんが立ち上がった。

「僕はちょっと会社に顔を出してくるから、水森くんはここで休んでてね。さっきも言ったけど、好きに使っていいから。それから君の妊娠のこともみんなに話そうと思う。まだまだ今は無理して欲しくないから、話してみんなに状況を理解してもらおう」
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