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そう言うと木佐さんは颯爽と家を出ていってしまった。その木佐さんを『いってらっしゃい』と見送ったけど・・・。
あれ?僕、何普通にここにいるんだろう?まだ住むって決めたわけじゃないのに・・・。
だけど木佐さんのペースに巻き込まれたのか、僕の腰はすっかり落ち着いている。
ここにいてもいいのかな?
そう思っても、当の木佐さんはいて欲しいって言ってくれてるんだし、実際僕もここは心地よいと思ってしまった。
しばらくお世話になろうかな・・・。
木佐さんの言葉じゃないけど、ここにいる間に僕は木佐さんのことを好きになるかもしれない。今年の目標は『智明を忘れること』だ。ここで木佐さんからの愛情を受けながら智明への思いを忘れて、木佐さんを好きになれるように頑張ってみてもいいかもしれない。
家に一人でいても悶々とするだけだものね。
甘えて・・・みようか、木佐さんに。
そう決めてしまったら、なんだか心が少し落ち着いた。本当はすこし不安があったのだ。僕の人生の再スタートは始まったばかりなのに、嬉しい事とはいえ想定外のことが起こって、上手くやって行けるか心配だったのだ。
だけど木佐さんが傍にいてくれるなら、きっと大丈夫だ。
僕は半分本気で、でももう半分は無理矢理そう思った。無理にでも思っていたら、きっといつかそれが本当になる。
こうやって少しづつ自分に言い聞かせて、智明のことを忘れていこう。
大丈夫。
僕にはこの子がいる。
僕はそっとお腹に手をあてると、なんとも言えない多幸感が湧き上がる。
ゆっくりでいいから無事に育って、そして僕にお顔を見せてね。
僕は心の中で赤ちゃんに語りかけた。
心を決めてしまうと、なんだか眠くなってきた。これも悪阻の一種だと医師が言っていたので、今は無理せず身体が要求するようにすることにした。
僕にあてがわれた部屋に行くと、そこはきちんとベッドメイクされていて、着替えもちゃんとベッドに置いてあった。
これ、いつ置いたんだろう?
僕と帰ってきた時はずっと僕の傍にいたから、これを用意する暇なかったよね?もしかして、最初から僕がここに住むこと決めていたのかな?
もしそうなら、昨日帰ってからこれらを用意したのかな?
ベッドに置いてある部屋着は新品で、僕のサイズだった。それにクローゼットを開けると、替えの下着も新しいものが入っている。
これも僕のサイズだ。
見上げるほど背が高い木佐さんが僕と同じサイズなわけないから、やっぱり僕のために用意してくたんだろう。
今日僕の顔の血色が良くて元気だったらどうするつもりだったんだろう?
そのことを思うとちょっと笑えてくる。
優しい木佐さん。
ほんの少しだけ、甘えさせてください。
悪阻が治まって、心が元気になったらちゃんとあなたに向き合うので、だからそれまでの間だけ、智明のことを思わせて。
僕はそう思いながら木佐さんが用意してくれた部屋着に着替え、ベッドに入った。愛しい智明の子がいるお腹を抱えながら・・・。
僕は本当に眠くて、人ってこんなに寝れるの?ていうくらい寝ていた。途中何度かトイレに起きたり、水分を取ったりしたけど、ほとんど僕はベッドの中で寝ていた。
玄関のドアの開く音がする。
僕は夢現の中でその音を聞く。
智明が帰ってきた。
靴を脱いでスリッパを履いて、廊下を歩く音が聞こえる。その足音はいつもリビングに入って行くけど、今は何故か僕の部屋の前で止まった。そして、とんとんとドアを叩く音がする。
その音に夢だと気づく。
智明は僕の部屋には来ない。だからノックもしない。
だけど、夢だと分かりつつも僕は智明を追ってしまう。
遠慮がちに開くドア。そして近づく足音。そして頬に触れる優しい指先。その感触に僕は重たい目を開けて、その指の主を見る。
「おかえりなさい。木佐さん」
分かっているのに、その顔が智明でないことに落胆する。
「ただいま。ずっと寝てたの?」
優しく微笑む木佐さんは、僕の落胆に気づいてるだろうか?
「なんだかすごく眠くて・・・」
まだ目が開けきらない。
そんな僕の頭を木佐さんは優しく撫でてくれる。
「いいよ。そのまま寝てて。あ、寝ながらでいいけど、嫌だったら言ってね」
そう言うと僕の鼻先に何かを近づけた。
いい香り。
りんご?
それから続けてバナナ、いちご、みかん。色々な果物の香りがする。そして最後にしたのはミルク。
「気持ち悪くなったのあった?」
その言葉に首を横に振る。
「大丈夫です」
どれも平気だった。その言葉に木佐さんは笑って『待ってて』と言うと、部屋を出て行ってしまった。
あれ?僕、何普通にここにいるんだろう?まだ住むって決めたわけじゃないのに・・・。
だけど木佐さんのペースに巻き込まれたのか、僕の腰はすっかり落ち着いている。
ここにいてもいいのかな?
そう思っても、当の木佐さんはいて欲しいって言ってくれてるんだし、実際僕もここは心地よいと思ってしまった。
しばらくお世話になろうかな・・・。
木佐さんの言葉じゃないけど、ここにいる間に僕は木佐さんのことを好きになるかもしれない。今年の目標は『智明を忘れること』だ。ここで木佐さんからの愛情を受けながら智明への思いを忘れて、木佐さんを好きになれるように頑張ってみてもいいかもしれない。
家に一人でいても悶々とするだけだものね。
甘えて・・・みようか、木佐さんに。
そう決めてしまったら、なんだか心が少し落ち着いた。本当はすこし不安があったのだ。僕の人生の再スタートは始まったばかりなのに、嬉しい事とはいえ想定外のことが起こって、上手くやって行けるか心配だったのだ。
だけど木佐さんが傍にいてくれるなら、きっと大丈夫だ。
僕は半分本気で、でももう半分は無理矢理そう思った。無理にでも思っていたら、きっといつかそれが本当になる。
こうやって少しづつ自分に言い聞かせて、智明のことを忘れていこう。
大丈夫。
僕にはこの子がいる。
僕はそっとお腹に手をあてると、なんとも言えない多幸感が湧き上がる。
ゆっくりでいいから無事に育って、そして僕にお顔を見せてね。
僕は心の中で赤ちゃんに語りかけた。
心を決めてしまうと、なんだか眠くなってきた。これも悪阻の一種だと医師が言っていたので、今は無理せず身体が要求するようにすることにした。
僕にあてがわれた部屋に行くと、そこはきちんとベッドメイクされていて、着替えもちゃんとベッドに置いてあった。
これ、いつ置いたんだろう?
僕と帰ってきた時はずっと僕の傍にいたから、これを用意する暇なかったよね?もしかして、最初から僕がここに住むこと決めていたのかな?
もしそうなら、昨日帰ってからこれらを用意したのかな?
ベッドに置いてある部屋着は新品で、僕のサイズだった。それにクローゼットを開けると、替えの下着も新しいものが入っている。
これも僕のサイズだ。
見上げるほど背が高い木佐さんが僕と同じサイズなわけないから、やっぱり僕のために用意してくたんだろう。
今日僕の顔の血色が良くて元気だったらどうするつもりだったんだろう?
そのことを思うとちょっと笑えてくる。
優しい木佐さん。
ほんの少しだけ、甘えさせてください。
悪阻が治まって、心が元気になったらちゃんとあなたに向き合うので、だからそれまでの間だけ、智明のことを思わせて。
僕はそう思いながら木佐さんが用意してくれた部屋着に着替え、ベッドに入った。愛しい智明の子がいるお腹を抱えながら・・・。
僕は本当に眠くて、人ってこんなに寝れるの?ていうくらい寝ていた。途中何度かトイレに起きたり、水分を取ったりしたけど、ほとんど僕はベッドの中で寝ていた。
玄関のドアの開く音がする。
僕は夢現の中でその音を聞く。
智明が帰ってきた。
靴を脱いでスリッパを履いて、廊下を歩く音が聞こえる。その足音はいつもリビングに入って行くけど、今は何故か僕の部屋の前で止まった。そして、とんとんとドアを叩く音がする。
その音に夢だと気づく。
智明は僕の部屋には来ない。だからノックもしない。
だけど、夢だと分かりつつも僕は智明を追ってしまう。
遠慮がちに開くドア。そして近づく足音。そして頬に触れる優しい指先。その感触に僕は重たい目を開けて、その指の主を見る。
「おかえりなさい。木佐さん」
分かっているのに、その顔が智明でないことに落胆する。
「ただいま。ずっと寝てたの?」
優しく微笑む木佐さんは、僕の落胆に気づいてるだろうか?
「なんだかすごく眠くて・・・」
まだ目が開けきらない。
そんな僕の頭を木佐さんは優しく撫でてくれる。
「いいよ。そのまま寝てて。あ、寝ながらでいいけど、嫌だったら言ってね」
そう言うと僕の鼻先に何かを近づけた。
いい香り。
りんご?
それから続けてバナナ、いちご、みかん。色々な果物の香りがする。そして最後にしたのはミルク。
「気持ち悪くなったのあった?」
その言葉に首を横に振る。
「大丈夫です」
どれも平気だった。その言葉に木佐さんは笑って『待ってて』と言うと、部屋を出て行ってしまった。
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