さかなのみるゆめ

ruki

文字の大きさ
22 / 40

22

しおりを挟む
待っててと言われても、家主が帰ってきたのにだらだらとベッドに横になっている訳には行かない。

僕は眠たい目を擦りながらベッドから降りると、リビングへ行った。するとそこからゴーっと言う機械音。

「ベッドで待っててよかったのに」

そう言う木佐さんはキッチンに立っていた。そして音の正体はミキサー。

ちょうど出来上がったのか、木佐さんはスイッチを切って中身をマグカップに移している。それを持って僕のところに来てソファに促すと、そのマグカップを渡してくれた。

「大丈夫そうなら飲んでみて」

これってさっきのフルーツのジュース?

僕はくんの匂いを嗅いで、それから一口飲んでみた。するとトロリとした甘い、でも爽やかな液体が口の中に広がり、喉の奥に流れていく。

おいしい。

「大丈夫そう?」

心配げに見つめる木佐さんに僕は微笑んだ。

「大丈夫です。すごくおいしいです。僕、こんなの初めて飲みました」

今日は朝、食パンを齧ったきりなので、僕はお腹がびっくりしないように少しずつジュースを飲んでいく。

「良かった。本当はバナナとフルーツの缶詰を使うんだけど、せっかくフレッシュな果物があったから・・・でもごめん、みかんだけはやっぱり缶詰を使ったよ。皮がね・・・舌触りが悪くって」

なんで缶詰だとごめんなんだろう?
変なところにこだわりのある木佐さんがおかしくて笑ってしまう。

そんな僕を木佐さんは目を細めてみている。

「良かった。大分顔色が良くなったね」

「たっぷり寝てしまいました。明日は会社に行けそうです」

胸のむかつきももやもや程度だし、明日は大丈夫そう・・・て、昨日の夜もそんなに調子悪くなかったんだよね。

明日大丈夫かな・・・?

それが顔に出てしまったのか、木佐さんはくすりと笑って僕の頭をぽんぽんと軽く叩く。

「明日のことは明日考えよう」

僕はそれに頷いた。

「さて、水森くんごはん食べられそう?僕は今から食べるけど、匂いとか大丈夫かな?」

そう言って出てきたのはコンビニ弁当。

「木佐さん、ごはんいつもそれですか?」

僕はちょっとびっくりして訊いてしまった。

「大体は外で済ませて帰ってくるんだけど、時間が無い時とか面倒な時はこれだよ」

そう言ってさらにおにぎりとパンも出てきた。

「食べられそうなもがあったら、食べてもらいたいんだけど、どうかな?」

そう言ってくれるけど、僕のお腹はジュースで満たされてしまった。

そうでなくても好き嫌いは無いので、今出してくれたものは全部食べられるけど、今の僕には分からない。

「今はもうお腹いっぱいなので大丈夫です。でも今後のために匂いとか試してみてもいいですか?」

と言っても片っ端から開けちゃっても、木佐さんもこんなに食べないよね?

「木佐さん、どれ食べますか?」

その意図が分かったのか、木佐さんはパンをよけた。

「パンは明日の朝食べるから、お弁当かな?あとおにぎり」

そう言っておにぎりの封を開けた。そこに鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。

「大丈夫です」

全然大丈夫だった。

良かった。ごはんと海苔は大丈夫だ。それを見て木佐さんがお弁当のフタを少し開ける。これは鼻を近づけなくても匂いが飛んできた。

あ、これも大丈夫。

僕の顔を見て大丈夫だったことが分かったのか、木佐さんはお弁当の蓋を全部とった。

「案外大丈夫でした。ということは今のところピザまんだけかな?」

あ、でもあの後部屋に立ちこめる中華まんの匂いでもダメだったから・・・。

「いや、中華まん全般があやしい」

同じことを思ったのか、木佐さんが言う。

「ですね。当分コンビニには近寄らないようにします」

今は中華まんの季節。いつでもどこでもほかほかの肉まんが置いてある。

「そのほうがいいね」

木佐さんも頷いた。

その後食事をする木佐さんに付き合ってリビングでお話をしてからお風呂をいただいて、この日はベッドに入った。あんなに寝たのに僕のまぶたは程なくして閉じ、僕は眠りの底に落ちて行った。

次の日の朝、僕の体調は思ったほど悪くはなく、相変わらず胸のむかつきはあるものの会社に行けないほどじゃなかった。そんな僕の顔色を見て木佐さんからもOKが出て、この日は出社することが出来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

会長様を手に入れたい

槇瀬陽翔
BL
生徒会長の聖はオメガでありながらも、特に大きな発情も起こさないまま過ごしていた。そんなある日、薬を服用しても制御することができないほどの発作が起きてしまい、色んな魔の手から逃れていきついた場所は謎が多いと噂されている風紀委員長の大我のもとだった…。

【完結】運命じゃない香りの、恋

麻田夏与/Kayo Asada
BL
オメガ性のリュカ・レバノンは、王国の第一王子ダイセルが見初めた、彼の運命の番だ。だが、ダイセル王子に無体な真似を働かれ、リュカは婚約の王命を断ろうとする。当然、王宮からの追っ手が来たところで──「そなた、何やら素晴らしい香りをしているな」。その声は、国一番の魔術師兼調香師のマシレ・グラースのものだった。調香師アルファ×不幸めオメガのラブストーリー。

運命のつがいと初恋

鈴本ちか
BL
三田村陽向は幼稚園で働いていたのだが、Ωであることで園に負担をかけてしまい退職を決意する。今後を考えているとき、中学の同級生と再会して……

名もなき花は愛されて

朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。 太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。 姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。 火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。 断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。 そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく…… 全三話完結済+番外編 18禁シーンは予告なしで入ります。 ムーンライトノベルズでも同時投稿 1/30 番外編追加

冷遇されたΩは運命の竜に守られ花嫁となる

花里しろ
BL
*誤字報告ありがとうございます! 稀少なオメガとして王都に招かれたリュカは、夜会で酷い辱めを受ける。 悲しみに暮れるリュカはテラスに出ると、夜空を見上げて幼い頃に出会った初恋の相手を思いその名を呼んだ。 リュカ・アレオンは男爵家の末っ子次男だ。病弱なリュカは両親と兄・姉、そして領民達に見守られすくすくと育つ。ある時リュカは、森で不思議な青年クラウスと出会う。彼に求婚され頷くも、事情がありすぐには迎えられないと告げられるリュカ。クラウスは「国を平定したら迎えに来る」と約束し、リュカに指輪を渡すと去って行く。 時は流れ王太子の番として選ばれたリュカは、一人王都へ連れて来られた。思い人がいるからと、リュカを見向きもしない王太子。田舎者だと馬鹿にする貴族達。 辛い日々を耐えていたリュカだが、夜会で向けられた悪意に心が折れてしまう。 テラスから身を投げようとしたその時、夜空に竜が現れリュカの元に降り立つ。 「クラウス……なの?」 「ああ」 愛しい相手との再会し、リュカの運命が動き出す。 ファンタジーオメガバースです。 エブリスタにも掲載しています。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

オメガな王子は孕みたい。

紫藤なゆ
BL
産む性オメガであるクリス王子は王家の一員として期待されず、離宮で明るく愉快に暮らしている。 ほとんど同居の獣人ヴィーは護衛と言いつついい仲で、今日も寝起きから一緒である。 王子らしからぬ彼の仕事は町の案内。今回も満足して帰ってもらえるよう全力を尽くすクリス王子だが、急なヒートを妻帯者のアルファに気づかれてしまった。まあそれはそれでしょうがないので抑制剤を飲み、ヴィーには気づかれないよう仕事を続けるクリス王子である。

処理中です...