21 / 40
21
しおりを挟む
そう言うと木佐さんは颯爽と家を出ていってしまった。その木佐さんを『いってらっしゃい』と見送ったけど・・・。
あれ?僕、何普通にここにいるんだろう?まだ住むって決めたわけじゃないのに・・・。
だけど木佐さんのペースに巻き込まれたのか、僕の腰はすっかり落ち着いている。
ここにいてもいいのかな?
そう思っても、当の木佐さんはいて欲しいって言ってくれてるんだし、実際僕もここは心地よいと思ってしまった。
しばらくお世話になろうかな・・・。
木佐さんの言葉じゃないけど、ここにいる間に僕は木佐さんのことを好きになるかもしれない。今年の目標は『智明を忘れること』だ。ここで木佐さんからの愛情を受けながら智明への思いを忘れて、木佐さんを好きになれるように頑張ってみてもいいかもしれない。
家に一人でいても悶々とするだけだものね。
甘えて・・・みようか、木佐さんに。
そう決めてしまったら、なんだか心が少し落ち着いた。本当はすこし不安があったのだ。僕の人生の再スタートは始まったばかりなのに、嬉しい事とはいえ想定外のことが起こって、上手くやって行けるか心配だったのだ。
だけど木佐さんが傍にいてくれるなら、きっと大丈夫だ。
僕は半分本気で、でももう半分は無理矢理そう思った。無理にでも思っていたら、きっといつかそれが本当になる。
こうやって少しづつ自分に言い聞かせて、智明のことを忘れていこう。
大丈夫。
僕にはこの子がいる。
僕はそっとお腹に手をあてると、なんとも言えない多幸感が湧き上がる。
ゆっくりでいいから無事に育って、そして僕にお顔を見せてね。
僕は心の中で赤ちゃんに語りかけた。
心を決めてしまうと、なんだか眠くなってきた。これも悪阻の一種だと医師が言っていたので、今は無理せず身体が要求するようにすることにした。
僕にあてがわれた部屋に行くと、そこはきちんとベッドメイクされていて、着替えもちゃんとベッドに置いてあった。
これ、いつ置いたんだろう?
僕と帰ってきた時はずっと僕の傍にいたから、これを用意する暇なかったよね?もしかして、最初から僕がここに住むこと決めていたのかな?
もしそうなら、昨日帰ってからこれらを用意したのかな?
ベッドに置いてある部屋着は新品で、僕のサイズだった。それにクローゼットを開けると、替えの下着も新しいものが入っている。
これも僕のサイズだ。
見上げるほど背が高い木佐さんが僕と同じサイズなわけないから、やっぱり僕のために用意してくたんだろう。
今日僕の顔の血色が良くて元気だったらどうするつもりだったんだろう?
そのことを思うとちょっと笑えてくる。
優しい木佐さん。
ほんの少しだけ、甘えさせてください。
悪阻が治まって、心が元気になったらちゃんとあなたに向き合うので、だからそれまでの間だけ、智明のことを思わせて。
僕はそう思いながら木佐さんが用意してくれた部屋着に着替え、ベッドに入った。愛しい智明の子がいるお腹を抱えながら・・・。
僕は本当に眠くて、人ってこんなに寝れるの?ていうくらい寝ていた。途中何度かトイレに起きたり、水分を取ったりしたけど、ほとんど僕はベッドの中で寝ていた。
玄関のドアの開く音がする。
僕は夢現の中でその音を聞く。
智明が帰ってきた。
靴を脱いでスリッパを履いて、廊下を歩く音が聞こえる。その足音はいつもリビングに入って行くけど、今は何故か僕の部屋の前で止まった。そして、とんとんとドアを叩く音がする。
その音に夢だと気づく。
智明は僕の部屋には来ない。だからノックもしない。
だけど、夢だと分かりつつも僕は智明を追ってしまう。
遠慮がちに開くドア。そして近づく足音。そして頬に触れる優しい指先。その感触に僕は重たい目を開けて、その指の主を見る。
「おかえりなさい。木佐さん」
分かっているのに、その顔が智明でないことに落胆する。
「ただいま。ずっと寝てたの?」
優しく微笑む木佐さんは、僕の落胆に気づいてるだろうか?
「なんだかすごく眠くて・・・」
まだ目が開けきらない。
そんな僕の頭を木佐さんは優しく撫でてくれる。
「いいよ。そのまま寝てて。あ、寝ながらでいいけど、嫌だったら言ってね」
そう言うと僕の鼻先に何かを近づけた。
いい香り。
りんご?
それから続けてバナナ、いちご、みかん。色々な果物の香りがする。そして最後にしたのはミルク。
「気持ち悪くなったのあった?」
その言葉に首を横に振る。
「大丈夫です」
どれも平気だった。その言葉に木佐さんは笑って『待ってて』と言うと、部屋を出て行ってしまった。
あれ?僕、何普通にここにいるんだろう?まだ住むって決めたわけじゃないのに・・・。
だけど木佐さんのペースに巻き込まれたのか、僕の腰はすっかり落ち着いている。
ここにいてもいいのかな?
そう思っても、当の木佐さんはいて欲しいって言ってくれてるんだし、実際僕もここは心地よいと思ってしまった。
しばらくお世話になろうかな・・・。
木佐さんの言葉じゃないけど、ここにいる間に僕は木佐さんのことを好きになるかもしれない。今年の目標は『智明を忘れること』だ。ここで木佐さんからの愛情を受けながら智明への思いを忘れて、木佐さんを好きになれるように頑張ってみてもいいかもしれない。
家に一人でいても悶々とするだけだものね。
甘えて・・・みようか、木佐さんに。
そう決めてしまったら、なんだか心が少し落ち着いた。本当はすこし不安があったのだ。僕の人生の再スタートは始まったばかりなのに、嬉しい事とはいえ想定外のことが起こって、上手くやって行けるか心配だったのだ。
だけど木佐さんが傍にいてくれるなら、きっと大丈夫だ。
僕は半分本気で、でももう半分は無理矢理そう思った。無理にでも思っていたら、きっといつかそれが本当になる。
こうやって少しづつ自分に言い聞かせて、智明のことを忘れていこう。
大丈夫。
僕にはこの子がいる。
僕はそっとお腹に手をあてると、なんとも言えない多幸感が湧き上がる。
ゆっくりでいいから無事に育って、そして僕にお顔を見せてね。
僕は心の中で赤ちゃんに語りかけた。
心を決めてしまうと、なんだか眠くなってきた。これも悪阻の一種だと医師が言っていたので、今は無理せず身体が要求するようにすることにした。
僕にあてがわれた部屋に行くと、そこはきちんとベッドメイクされていて、着替えもちゃんとベッドに置いてあった。
これ、いつ置いたんだろう?
僕と帰ってきた時はずっと僕の傍にいたから、これを用意する暇なかったよね?もしかして、最初から僕がここに住むこと決めていたのかな?
もしそうなら、昨日帰ってからこれらを用意したのかな?
ベッドに置いてある部屋着は新品で、僕のサイズだった。それにクローゼットを開けると、替えの下着も新しいものが入っている。
これも僕のサイズだ。
見上げるほど背が高い木佐さんが僕と同じサイズなわけないから、やっぱり僕のために用意してくたんだろう。
今日僕の顔の血色が良くて元気だったらどうするつもりだったんだろう?
そのことを思うとちょっと笑えてくる。
優しい木佐さん。
ほんの少しだけ、甘えさせてください。
悪阻が治まって、心が元気になったらちゃんとあなたに向き合うので、だからそれまでの間だけ、智明のことを思わせて。
僕はそう思いながら木佐さんが用意してくれた部屋着に着替え、ベッドに入った。愛しい智明の子がいるお腹を抱えながら・・・。
僕は本当に眠くて、人ってこんなに寝れるの?ていうくらい寝ていた。途中何度かトイレに起きたり、水分を取ったりしたけど、ほとんど僕はベッドの中で寝ていた。
玄関のドアの開く音がする。
僕は夢現の中でその音を聞く。
智明が帰ってきた。
靴を脱いでスリッパを履いて、廊下を歩く音が聞こえる。その足音はいつもリビングに入って行くけど、今は何故か僕の部屋の前で止まった。そして、とんとんとドアを叩く音がする。
その音に夢だと気づく。
智明は僕の部屋には来ない。だからノックもしない。
だけど、夢だと分かりつつも僕は智明を追ってしまう。
遠慮がちに開くドア。そして近づく足音。そして頬に触れる優しい指先。その感触に僕は重たい目を開けて、その指の主を見る。
「おかえりなさい。木佐さん」
分かっているのに、その顔が智明でないことに落胆する。
「ただいま。ずっと寝てたの?」
優しく微笑む木佐さんは、僕の落胆に気づいてるだろうか?
「なんだかすごく眠くて・・・」
まだ目が開けきらない。
そんな僕の頭を木佐さんは優しく撫でてくれる。
「いいよ。そのまま寝てて。あ、寝ながらでいいけど、嫌だったら言ってね」
そう言うと僕の鼻先に何かを近づけた。
いい香り。
りんご?
それから続けてバナナ、いちご、みかん。色々な果物の香りがする。そして最後にしたのはミルク。
「気持ち悪くなったのあった?」
その言葉に首を横に振る。
「大丈夫です」
どれも平気だった。その言葉に木佐さんは笑って『待ってて』と言うと、部屋を出て行ってしまった。
59
あなたにおすすめの小説
結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった
釦
BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。
にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。
王子殿下が恋した人は誰ですか
月齢
BL
イルギアス王国のリーリウス王子は、老若男女を虜にする無敵のイケメン。誰もが彼に夢中になるが、自由気ままな情事を楽しむ彼は、結婚適齢期に至るも本気で恋をしたことがなかった。
――仮装舞踏会の夜、運命の出会いをするまでは。
「私の結婚相手は、彼しかいない」
一夜の情事ののち消えたその人を、リーリウスは捜す。
仮面を付けていたから顔もわからず、手がかりは「抱けばわかる、それのみ」というトンデモ案件だが、親友たちに協力を頼むと(一部強制すると)、優秀な心の友たちは候補者を五人に絞り込んでくれた。そこにリーリウスが求める人はいるのだろうか。
「当たりが出るまで、抱いてみる」
優雅な笑顔でとんでもないことをヤらかす王子の、彼なりに真剣な花嫁さがし。
※性モラルのゆるい世界観。主人公は複数人とあれこれヤりますので、苦手な方はご遠慮ください。何でもありの大人の童話とご理解いただける方向け。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
至高のオメガとガラスの靴
むー
BL
幼なじみのアカリちゃんは男の子だけどオメガ。
誰よりも綺麗で勉強も運動も出来る。
そして、アカリちゃんから漂うフェロモンは誰もが惹きつけらる。
正に"至高のオメガ"
僕-ヒロ-はアルファだけど見た目は普通、勉強も普通、運動なんて普通以下。
だから周りは僕を"欠陥品のアルファ"と呼ぶ。
そんな僕をアカリちゃんはいつも「大好き」と言って僕のそばに居てくれる。
周りに群がる優秀なアルファなんかに一切目もくれない。
"欠陥品"の僕が"至高"のアカリちゃんのそばにずっと居ていいのかな…?
※シリーズものになっていますが、どの物語から読んでも大丈夫です。
【至高のオメガとガラスの靴】←今ココ
↓
【金の野獣と薔薇の番】
↓
【魔法使いと眠れるオメガ】
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる