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そんなことを思いながら中に進んでいくと、ちょうど柳瀬さんがコーヒーを入れているところだった。でもそのカップは来客用だ。
「あら水森くん、いらっしゃい。今日は予定日じゃなかった?」
急に来たのに柳瀬さんは普通に迎えてくれる。木佐さんから僕が来ることを聞いてたのかな?
「そうなんですけど全然で、いっぱい歩くように言われちゃいました。なので今日はお散歩がてらクリニックから歩いて来たんですけど、お客さんですか?お茶菓子買ってきたんで・・・」
これを一緒に出してください、と言おうと思ったところで急に来客用の部屋のドアが開いた。そして現れた人物に、僕は驚いて持っていた洋菓子屋さんの袋を取り落としてしまった。
「佐奈・・・!」
ドアを開けて出てきた人物は僕の名を呼び、けれど僕のお腹を見て驚いたように目を見開いて固まった。
どうして・・・?
そこにいたのは智明だった。
なんで?
どうして?
そんなことが頭の中を瞬時に駆け巡り、けれど僕は考える間もなく叫んでいた。
「なんでここにいるの・・・!」
その瞬間、何かがパシャんと弾ける感覚がした。そして下肢がじわりと温かくなり、水が足を伝っていく。
あっと思った時には足元に水たまりができ、腹部を強烈な痛みが襲った。
そのあまりの痛みに僕はお腹を抱えてうずくまる。それを隣で見ていた柳瀬さんは素早く僕の元にしゃがみこんで僕を支えると、腰を摩ってくれる。
「神田くん、クリニックに電話。木佐さんは車回して」
痛みに何も言えない僕は柳瀬さんに支えられて近くの椅子に座る。
破水したのだ。
今までなんともなかったお腹が急に締め付けられるように張りだし、下腹部に力が入る。
「君、水森くんを支えてあげて」
いつの間にか近くまで来ていた智明は、柳瀬さんにそう言われて替わるように僕を支えてくれる。その智明の手が僕に触れた瞬間、僕の不安が少し和らぐ。
でも痛い。
声も出せないほど痛い。
その痛さがなぜか智明への理不尽な怒りに変わった。
なんだかわけも分からない怒りがふつふつと沸き上がり、支える智明の腕をぐっと握る。とその時、木佐さんが車を回して来てくれた。
「水森くん、歩けるかな?三守くん、そのまま支えて来て」
その木佐さんの言葉に智明は僕を優しく支えながら立ち上がらせ、ゆっくり歩き出す。
「下に車置いてあるから、ゆっくり歩いてきて」
そう僕達に言うと、木佐さんは柳瀬さんと神田さんに何かを指示し、足早に僕達の側まで来た。
そのまま車まで来ると木佐さんが後部座席のドアを開けてくれたので、そこへ智明に支えられながら座ると、智明は僕から離れようとした。そんな智明の腕を僕は思わず掴む。
そんな僕に戸惑う智明の背中を押して座席に座らせると、木佐さんは後部座席のドアを閉めて運転席に座った。
「三守くんも行くんだよ」
そういうと木佐さんは車を発進させた。
歩いて30分の道のりは、本来だったらすぐのはずなのに、僕の中では異常に長く感じる。その間も智明の手を握り、痛みの波がくると爪が食い込むほど握りしめた。なのに智明は文句も言わずそのまま僕に手を握らせている。
その態度にまた腹が立つ。
なんでこんなに腹が立つのか。
今のこの状況のなにもかもが智明のせいのような気がする。
あ・・・また来た・・・。
グググッとお腹を強く締め付けられるような痛みに身体が震え、手に力が入る。
ばか・・・っ。
その痛みに思わず出てしまう言葉は、本当に声になっているのかも分からない。けれど、一度出てしまった悪態は止まることなく出続ける。
痛い。
すごく痛い。
智のせい。
なんで来るんだよ。
あまりの痛さに涙が出る。
ばかばかばかばか。
その度に『うん、うん』と言う智明の相づちが聞こえたような気がするけど、そんなのには構ってられない。
さっきまで何ともなかったのに。
智のせい。
もっとゆっくり痛くなるはずなのに。
なんで初めからこんなに痛いんだよっ。
その間も智明が相づちを打ってるような気がするけど、痛みにそれどころでは無い。
どれくらい経ったのだろう。ようやく車が止まった。
クリニックの入口では看護師さんが車椅子を用意して待っていてくれたのでそれに支えられながら座り、押してもらって中に入る。そしてそのままエレベーターに乗せられ、2階に行くとそのまま分娩室に運ばれた。
「あれ?さっき帰ったばかりなのにもう来たの?実はせっかちさん?」
などと呑気な声を出しながら医師が来ると、どれどれと言うように内診を始める。
「破水したんだね・・・と、子宮口もほぼ全開だ。このままお産に入るよ。水森くんは立ち会い希望だったね。用意してあげて」
最後はそう看護師さんに指示をした。そして恐らく医師の言葉通り、看護師さんが木佐さんのところに行ったのだろう。
「あら水森くん、いらっしゃい。今日は予定日じゃなかった?」
急に来たのに柳瀬さんは普通に迎えてくれる。木佐さんから僕が来ることを聞いてたのかな?
「そうなんですけど全然で、いっぱい歩くように言われちゃいました。なので今日はお散歩がてらクリニックから歩いて来たんですけど、お客さんですか?お茶菓子買ってきたんで・・・」
これを一緒に出してください、と言おうと思ったところで急に来客用の部屋のドアが開いた。そして現れた人物に、僕は驚いて持っていた洋菓子屋さんの袋を取り落としてしまった。
「佐奈・・・!」
ドアを開けて出てきた人物は僕の名を呼び、けれど僕のお腹を見て驚いたように目を見開いて固まった。
どうして・・・?
そこにいたのは智明だった。
なんで?
どうして?
そんなことが頭の中を瞬時に駆け巡り、けれど僕は考える間もなく叫んでいた。
「なんでここにいるの・・・!」
その瞬間、何かがパシャんと弾ける感覚がした。そして下肢がじわりと温かくなり、水が足を伝っていく。
あっと思った時には足元に水たまりができ、腹部を強烈な痛みが襲った。
そのあまりの痛みに僕はお腹を抱えてうずくまる。それを隣で見ていた柳瀬さんは素早く僕の元にしゃがみこんで僕を支えると、腰を摩ってくれる。
「神田くん、クリニックに電話。木佐さんは車回して」
痛みに何も言えない僕は柳瀬さんに支えられて近くの椅子に座る。
破水したのだ。
今までなんともなかったお腹が急に締め付けられるように張りだし、下腹部に力が入る。
「君、水森くんを支えてあげて」
いつの間にか近くまで来ていた智明は、柳瀬さんにそう言われて替わるように僕を支えてくれる。その智明の手が僕に触れた瞬間、僕の不安が少し和らぐ。
でも痛い。
声も出せないほど痛い。
その痛さがなぜか智明への理不尽な怒りに変わった。
なんだかわけも分からない怒りがふつふつと沸き上がり、支える智明の腕をぐっと握る。とその時、木佐さんが車を回して来てくれた。
「水森くん、歩けるかな?三守くん、そのまま支えて来て」
その木佐さんの言葉に智明は僕を優しく支えながら立ち上がらせ、ゆっくり歩き出す。
「下に車置いてあるから、ゆっくり歩いてきて」
そう僕達に言うと、木佐さんは柳瀬さんと神田さんに何かを指示し、足早に僕達の側まで来た。
そのまま車まで来ると木佐さんが後部座席のドアを開けてくれたので、そこへ智明に支えられながら座ると、智明は僕から離れようとした。そんな智明の腕を僕は思わず掴む。
そんな僕に戸惑う智明の背中を押して座席に座らせると、木佐さんは後部座席のドアを閉めて運転席に座った。
「三守くんも行くんだよ」
そういうと木佐さんは車を発進させた。
歩いて30分の道のりは、本来だったらすぐのはずなのに、僕の中では異常に長く感じる。その間も智明の手を握り、痛みの波がくると爪が食い込むほど握りしめた。なのに智明は文句も言わずそのまま僕に手を握らせている。
その態度にまた腹が立つ。
なんでこんなに腹が立つのか。
今のこの状況のなにもかもが智明のせいのような気がする。
あ・・・また来た・・・。
グググッとお腹を強く締め付けられるような痛みに身体が震え、手に力が入る。
ばか・・・っ。
その痛みに思わず出てしまう言葉は、本当に声になっているのかも分からない。けれど、一度出てしまった悪態は止まることなく出続ける。
痛い。
すごく痛い。
智のせい。
なんで来るんだよ。
あまりの痛さに涙が出る。
ばかばかばかばか。
その度に『うん、うん』と言う智明の相づちが聞こえたような気がするけど、そんなのには構ってられない。
さっきまで何ともなかったのに。
智のせい。
もっとゆっくり痛くなるはずなのに。
なんで初めからこんなに痛いんだよっ。
その間も智明が相づちを打ってるような気がするけど、痛みにそれどころでは無い。
どれくらい経ったのだろう。ようやく車が止まった。
クリニックの入口では看護師さんが車椅子を用意して待っていてくれたのでそれに支えられながら座り、押してもらって中に入る。そしてそのままエレベーターに乗せられ、2階に行くとそのまま分娩室に運ばれた。
「あれ?さっき帰ったばかりなのにもう来たの?実はせっかちさん?」
などと呑気な声を出しながら医師が来ると、どれどれと言うように内診を始める。
「破水したんだね・・・と、子宮口もほぼ全開だ。このままお産に入るよ。水森くんは立ち会い希望だったね。用意してあげて」
最後はそう看護師さんに指示をした。そして恐らく医師の言葉通り、看護師さんが木佐さんのところに行ったのだろう。
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