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序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない
第12話:その手で育てられぬならば、導くだけ
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考え抜いた末に思い至ったのは――
悪いのは、先生だ。
私は、魔法使い。
戦士職への指導そのものが無理なのだ。
一瞬、彼女を魔法使いとして育てる方向も考えた。
しかし、それではダメだ。
たとえ"魔法型の勇者"が最強になって、
既存の勇者像を覆したとしても、
人間たちの"聖剣への信仰"が崩れることはない。
彼女は、聖剣勇者として、
私に倒されねばならない。
それ以外に意味がない。
――ならば、戦士職の指導者を探すしかない。
モリアは私と同じ魔法系。
ルー? あれは論外。
人にモノを教える性格をしていない。
地獄に当たってみることも一瞬考えたが、
ミカエルは間違いなくこっちに殺しに来る。
となれば、残るは――人間の戦士、か。
三日の旅の末、
私たちは王都に一番近い町、
グラナールに到着した。
ここは貿易が盛んで、
冒険者が集まる大きな町。
『勇者、世界一周遊記』にはそう書かれていた。
当然、王都に近いということは、
セリナの悪評もすぐに届く。
余計な騒ぎを起こさせないために、
私は事前に予約した宿にセリナを匿った。
見張りはモリア。
安心この上ない。
ルー……あの子は命令されることを何より嫌っている。
放っておこう。
まずは冒険者ギルドへ。
人間の町は建物が多く、人も多い。
勇者モノの中の歴代魔王たちが
「人間はゴミのようだ」と言っていたが、
まさにその通り。
一年中発情している種族のやることは違う。
だから人間は。
地図は事前に用意していた。
しかし、この人波の前では無意味だ。
いっそ、魔法で全てをきれいに――
という誘惑は何度も頭をよぎったが、
最後まで理性で抑えた。
「すみません」
一人の男が私に声をかけた。
高級そうな服。
『勇者ハラルド戦記』に登場した神官の服装に似ている。
神殿関係者か。
神殿は、
表向きにはセリナに友好的な態度をとっている。
だが、それが確かなものかどうか、
証拠はまだ不十分だ。
警戒すべきだろう。
「このくらいの背丈の、
少女――いや、少年のような者を見ませんでしたか?」
身長はセリナと同じくらい。
少女と言いかけて、少年に言い直した。
つまり、見た目が判別しにくいということ。
セリナを探しているのか?
それとも、ただの偶然か?
だが、彼がこの町にセリナがいることを知っているとすれば、
私が同行していることも当然想定しているはず。
それでも、私に直接聞いてくるのか。
興味深い。
彼にとって、その子はそれほど重要なのか。
神官自ら探しに来るとは、
やはりただ事ではない。
「いいえ、見ていません。
私も今日この町に着いたばかりですので。
お役に立てず、申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそ。
もし見かけたら、
神殿へ情報をください。
必ずお礼をいたしますので」
軽く礼をして去っていく神官を見送りながら、
私は確信した。
その少女、必ず見つけてやる。
神殿が見つけるより先に。
――と、その時。
「泥棒よ!」
人混みの中では、犯罪が起きやすい。
人間の劣等性がもたらす当然の帰結だ。
せいぜい、内輪で争っていればいい。
――そう思った瞬間。
視界が揺れ、
気づけば、
誰かに腕を掴まれ、
顔を地面に押しつけられていた。
……まさか。
これは、ひったくりを装った襲撃?
しまった、油断した!
体勢を立て直し、反撃を――
そして、ルーに信号を――
さて、まずは、時間を停止しよう――
「この泥棒め! 捕まえたぞ!」
……どうやら今日は、私は運がいい。
探していた相手のほうから、
こちらにやってきてくれるとは。
探していた相手のほうから、
こちらにやってきてくれるとは。
悪いのは、先生だ。
私は、魔法使い。
戦士職への指導そのものが無理なのだ。
一瞬、彼女を魔法使いとして育てる方向も考えた。
しかし、それではダメだ。
たとえ"魔法型の勇者"が最強になって、
既存の勇者像を覆したとしても、
人間たちの"聖剣への信仰"が崩れることはない。
彼女は、聖剣勇者として、
私に倒されねばならない。
それ以外に意味がない。
――ならば、戦士職の指導者を探すしかない。
モリアは私と同じ魔法系。
ルー? あれは論外。
人にモノを教える性格をしていない。
地獄に当たってみることも一瞬考えたが、
ミカエルは間違いなくこっちに殺しに来る。
となれば、残るは――人間の戦士、か。
三日の旅の末、
私たちは王都に一番近い町、
グラナールに到着した。
ここは貿易が盛んで、
冒険者が集まる大きな町。
『勇者、世界一周遊記』にはそう書かれていた。
当然、王都に近いということは、
セリナの悪評もすぐに届く。
余計な騒ぎを起こさせないために、
私は事前に予約した宿にセリナを匿った。
見張りはモリア。
安心この上ない。
ルー……あの子は命令されることを何より嫌っている。
放っておこう。
まずは冒険者ギルドへ。
人間の町は建物が多く、人も多い。
勇者モノの中の歴代魔王たちが
「人間はゴミのようだ」と言っていたが、
まさにその通り。
一年中発情している種族のやることは違う。
だから人間は。
地図は事前に用意していた。
しかし、この人波の前では無意味だ。
いっそ、魔法で全てをきれいに――
という誘惑は何度も頭をよぎったが、
最後まで理性で抑えた。
「すみません」
一人の男が私に声をかけた。
高級そうな服。
『勇者ハラルド戦記』に登場した神官の服装に似ている。
神殿関係者か。
神殿は、
表向きにはセリナに友好的な態度をとっている。
だが、それが確かなものかどうか、
証拠はまだ不十分だ。
警戒すべきだろう。
「このくらいの背丈の、
少女――いや、少年のような者を見ませんでしたか?」
身長はセリナと同じくらい。
少女と言いかけて、少年に言い直した。
つまり、見た目が判別しにくいということ。
セリナを探しているのか?
それとも、ただの偶然か?
だが、彼がこの町にセリナがいることを知っているとすれば、
私が同行していることも当然想定しているはず。
それでも、私に直接聞いてくるのか。
興味深い。
彼にとって、その子はそれほど重要なのか。
神官自ら探しに来るとは、
やはりただ事ではない。
「いいえ、見ていません。
私も今日この町に着いたばかりですので。
お役に立てず、申し訳ありません」
「いえいえ、こちらこそ。
もし見かけたら、
神殿へ情報をください。
必ずお礼をいたしますので」
軽く礼をして去っていく神官を見送りながら、
私は確信した。
その少女、必ず見つけてやる。
神殿が見つけるより先に。
――と、その時。
「泥棒よ!」
人混みの中では、犯罪が起きやすい。
人間の劣等性がもたらす当然の帰結だ。
せいぜい、内輪で争っていればいい。
――そう思った瞬間。
視界が揺れ、
気づけば、
誰かに腕を掴まれ、
顔を地面に押しつけられていた。
……まさか。
これは、ひったくりを装った襲撃?
しまった、油断した!
体勢を立て直し、反撃を――
そして、ルーに信号を――
さて、まずは、時間を停止しよう――
「この泥棒め! 捕まえたぞ!」
……どうやら今日は、私は運がいい。
探していた相手のほうから、
こちらにやってきてくれるとは。
探していた相手のほうから、
こちらにやってきてくれるとは。
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