まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない

第11話:最強への道は、まずにんじんから

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勇者セリナの前に、スライムが現れた。

スライム ×1



コマンド:

▶ 戦闣

 スキル

 魔法

 道具

 逃げる



勇者セリナはスライムにこうげきした!

──しかし、スライムは素早く攻撃をかわした。

スライムが勇者セリナに体当たりを仕掛けた!

勇者セリナは力尽きた。



「……これは、やばい」



マオウは、嫌でもこの残酷な現実に向き合わざるを得なかった。

勇者が、弱すぎる。

ずっとどこかで目を背けていた事実を、改めて思い知らされた。



「セリナ君。君、今まで戦闘訓練を受けたことは?」

「ありません!」

「……元気があってよろしい」



まずい。聖剣のような大きな武器は、

小柄な彼女には合わない。

もっと体格に見合ったものから始めるべきだ。



「セリナ君。まずはこれに慣れようか」

マオウは小さなナイフを手渡した。

「はい、頑張ります!」



セリナは「ナイフ」を装備した。

──その瞬間。

ナイフは、聖剣へと変貌した。

「……嘘だろ」



試しにいろんな武器を持たせてみた。

槍──聖剣に変わった。

盾──聖剣になった。

小枝──聖剣。



どうやらセリナは、

「武器」を装備すると自動的にそれが聖剣化するらしい。

ただし、装備を外せば元に戻る。

最初に渡されたあの"聖剣"も、

実はただの装飾剣だった。



「呪いじゃないか……」

こんなの、勇者物語のどこにも書いてないぞ。詐欺だ。

畜生、作者を呪ってやる。

……まあ、私は呪い系の魔法をまだ覚えていないが。

くそっ、今後絶対にマスターして、

一番えげつないのをかけてやる。



「仕方ない。武器を変えられないなら、

それを使いこなせるようになればいい。

さあ、切り込み練習だ。準備はいいか?」

「はい、先生!」



聖剣(仮)を手に、セリナが標的の丸太を切る。

──ドスッ。

鈍器のような鈍い音。

「……なまくらじゃないか」

料理人の包丁の方がまだマシだ。



これは、あくまで仮説だが……。

もしルーが言っていた「人を守る」概念が、

この聖剣の本質ならば──

セリナが「それが人間の脅威として認識していない」限り、

威力が出ないってことか?



「呪いじゃないか……」

仕様書くらい用意しておけ。

だから、人間ってやつは。



へとへとになるまで練習したセリナとは裏腹に、

丸太は傷一つついていない。

「これは……やばいな」

マオウは再び、現実の重さを痛感した。



一日の練習が終わり、

セリナは晩ご飯の支度を始めた。

当然のように、握った包丁は──聖剣と化した。

当然のように、野菜は──まったく切れなかった。

料理が得意なはずの彼女は、

なぜか今夜は包丁(聖剣)と格闘している。

……呪いじゃないか?と、また心の中で呟く。



「人間の敵だと想像して切れば、切れるんじゃないか?」

いつもは言わないようなアドバイスを口にした。



「ダメです!

にんじんさんも、

じゃがいもさんも、

たまねぎさんも、

みんな体にいい、ヘルシーな野菜たちです!

そんなことを思ったら、

育ててくれた農家の人たちに失礼です!」



……どうにも見ていられなかったので、

魔法で野菜を切ってあげた。

それに嬉しそうに笑って感謝する彼女を見て、

なぜか私の心もほっとした。

──ああ、この感じは。

ルーやリアと一緒にいたときと、どこか似ている。あたたかい。

図書館でこの娘に文字を教えていた時も、

なんやかんやで楽しかったな。



ご飯の時間。

明るく振る舞っているが、私にはわかる。

彼女は、私よりもずっと落ち込んでいる。

そして、ぽつりと、他愛のない雑談が途切れた。



「マオウさん。どうして……私と一緒にいるんですか?」

……やはり、来たか。



「君は、勇者だからだ」

「こんなに弱い私でも?

王子様についていた方が、

マオウさんの力も発揮できると思います。

私は足手まといです……」



「あいつはダメだ。

ちっぽけな信念に、安いプライド。

自滅しやすい上に、周囲を巻き込むタイプだ。

あのままじゃ、

魔王に辿り着く前にどこかでドジを踏んで死ぬ」



「でも……今の私は戦闘どころか、

得意だった家事すら満足にできません。

何の役にも立ちません……」



「いいじゃないか。

どうせ王子も家事はできないし」



「……ずるいです。

どうしてマオウさんは、

私にそんなに優しいんですか。

あなたみたいな人なら、

別に私にこだわらなくても……。

私には、返せるものなんて何もありません……」



彼女は泣いているのだろうか。

声が震え、頬に何かが流れているのを感じる。

なぜだろう。私まで、胸が締めつけられる。



「私はね、

生まれついての弱者なんだ。

誰にも気にも止められない、

ちっぽけで取るに足らない存在だった」

「……」

「だけど、

どうしても手に入れたい"何か"ができた。

だから、私は小さいままでいるわけにはいかなかった。

長い年月をかけて、

最底辺から這い上がった。──それが、私の覇道だ」

「……」

「だから、私は"弱いもの"を見くびったりはしない。

だって──」



最弱こそ、最強になれる道だ。



「マオウさん……?」



「料理、美味しかった。

明日からは、別の方法を探そう。

我々今歩いてのは決して楽な道ではないけど……

最善の道だ」



──そのころ。

「ふふ~ん♪♪♪」

「……なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」

「ごきげんよう。

今の私は、

おバカな天使の暴言すら微笑ましく受け入れられるほど気分がいいのですわ。

では──良い夜を」



なぜか、モリアは異様にご機嫌だった。

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