11 / 190
序章:すべての旅は、茶番から始まる――剣も魔法もまだいらない
第11話:最強への道は、まずにんじんから
しおりを挟む
勇者セリナの前に、スライムが現れた。
スライム ×1
コマンド:
▶ 戦闣
スキル
魔法
道具
逃げる
勇者セリナはスライムにこうげきした!
──しかし、スライムは素早く攻撃をかわした。
スライムが勇者セリナに体当たりを仕掛けた!
勇者セリナは力尽きた。
「……これは、やばい」
マオウは、嫌でもこの残酷な現実に向き合わざるを得なかった。
勇者が、弱すぎる。
ずっとどこかで目を背けていた事実を、改めて思い知らされた。
「セリナ君。君、今まで戦闘訓練を受けたことは?」
「ありません!」
「……元気があってよろしい」
まずい。聖剣のような大きな武器は、
小柄な彼女には合わない。
もっと体格に見合ったものから始めるべきだ。
「セリナ君。まずはこれに慣れようか」
マオウは小さなナイフを手渡した。
「はい、頑張ります!」
セリナは「ナイフ」を装備した。
──その瞬間。
ナイフは、聖剣へと変貌した。
「……嘘だろ」
試しにいろんな武器を持たせてみた。
槍──聖剣に変わった。
盾──聖剣になった。
小枝──聖剣。
どうやらセリナは、
「武器」を装備すると自動的にそれが聖剣化するらしい。
ただし、装備を外せば元に戻る。
最初に渡されたあの"聖剣"も、
実はただの装飾剣だった。
「呪いじゃないか……」
こんなの、勇者物語のどこにも書いてないぞ。詐欺だ。
畜生、作者を呪ってやる。
……まあ、私は呪い系の魔法をまだ覚えていないが。
くそっ、今後絶対にマスターして、
一番えげつないのをかけてやる。
「仕方ない。武器を変えられないなら、
それを使いこなせるようになればいい。
さあ、切り込み練習だ。準備はいいか?」
「はい、先生!」
聖剣(仮)を手に、セリナが標的の丸太を切る。
──ドスッ。
鈍器のような鈍い音。
「……なまくらじゃないか」
料理人の包丁の方がまだマシだ。
これは、あくまで仮説だが……。
もしルーが言っていた「人を守る」概念が、
この聖剣の本質ならば──
セリナが「それが人間の脅威として認識していない」限り、
威力が出ないってことか?
「呪いじゃないか……」
仕様書くらい用意しておけ。
だから、人間ってやつは。
へとへとになるまで練習したセリナとは裏腹に、
丸太は傷一つついていない。
「これは……やばいな」
マオウは再び、現実の重さを痛感した。
一日の練習が終わり、
セリナは晩ご飯の支度を始めた。
当然のように、握った包丁は──聖剣と化した。
当然のように、野菜は──まったく切れなかった。
料理が得意なはずの彼女は、
なぜか今夜は包丁(聖剣)と格闘している。
……呪いじゃないか?と、また心の中で呟く。
「人間の敵だと想像して切れば、切れるんじゃないか?」
いつもは言わないようなアドバイスを口にした。
「ダメです!
にんじんさんも、
じゃがいもさんも、
たまねぎさんも、
みんな体にいい、ヘルシーな野菜たちです!
そんなことを思ったら、
育ててくれた農家の人たちに失礼です!」
……どうにも見ていられなかったので、
魔法で野菜を切ってあげた。
それに嬉しそうに笑って感謝する彼女を見て、
なぜか私の心もほっとした。
──ああ、この感じは。
ルーやリアと一緒にいたときと、どこか似ている。あたたかい。
図書館でこの娘に文字を教えていた時も、
なんやかんやで楽しかったな。
ご飯の時間。
明るく振る舞っているが、私にはわかる。
彼女は、私よりもずっと落ち込んでいる。
そして、ぽつりと、他愛のない雑談が途切れた。
「マオウさん。どうして……私と一緒にいるんですか?」
……やはり、来たか。
「君は、勇者だからだ」
「こんなに弱い私でも?
王子様についていた方が、
マオウさんの力も発揮できると思います。
私は足手まといです……」
「あいつはダメだ。
ちっぽけな信念に、安いプライド。
自滅しやすい上に、周囲を巻き込むタイプだ。
あのままじゃ、
魔王に辿り着く前にどこかでドジを踏んで死ぬ」
「でも……今の私は戦闘どころか、
得意だった家事すら満足にできません。
何の役にも立ちません……」
「いいじゃないか。
どうせ王子も家事はできないし」
「……ずるいです。
どうしてマオウさんは、
私にそんなに優しいんですか。
あなたみたいな人なら、
別に私にこだわらなくても……。
私には、返せるものなんて何もありません……」
彼女は泣いているのだろうか。
声が震え、頬に何かが流れているのを感じる。
なぜだろう。私まで、胸が締めつけられる。
「私はね、
生まれついての弱者なんだ。
誰にも気にも止められない、
ちっぽけで取るに足らない存在だった」
「……」
「だけど、
どうしても手に入れたい"何か"ができた。
だから、私は小さいままでいるわけにはいかなかった。
長い年月をかけて、
最底辺から這い上がった。──それが、私の覇道だ」
「……」
「だから、私は"弱いもの"を見くびったりはしない。
だって──」
最弱こそ、最強になれる道だ。
「マオウさん……?」
「料理、美味しかった。
明日からは、別の方法を探そう。
我々今歩いてのは決して楽な道ではないけど……
最善の道だ」
──そのころ。
「ふふ~ん♪♪♪」
「……なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」
「ごきげんよう。
今の私は、
おバカな天使の暴言すら微笑ましく受け入れられるほど気分がいいのですわ。
では──良い夜を」
なぜか、モリアは異様にご機嫌だった。
スライム ×1
コマンド:
▶ 戦闣
スキル
魔法
道具
逃げる
勇者セリナはスライムにこうげきした!
──しかし、スライムは素早く攻撃をかわした。
スライムが勇者セリナに体当たりを仕掛けた!
勇者セリナは力尽きた。
「……これは、やばい」
マオウは、嫌でもこの残酷な現実に向き合わざるを得なかった。
勇者が、弱すぎる。
ずっとどこかで目を背けていた事実を、改めて思い知らされた。
「セリナ君。君、今まで戦闘訓練を受けたことは?」
「ありません!」
「……元気があってよろしい」
まずい。聖剣のような大きな武器は、
小柄な彼女には合わない。
もっと体格に見合ったものから始めるべきだ。
「セリナ君。まずはこれに慣れようか」
マオウは小さなナイフを手渡した。
「はい、頑張ります!」
セリナは「ナイフ」を装備した。
──その瞬間。
ナイフは、聖剣へと変貌した。
「……嘘だろ」
試しにいろんな武器を持たせてみた。
槍──聖剣に変わった。
盾──聖剣になった。
小枝──聖剣。
どうやらセリナは、
「武器」を装備すると自動的にそれが聖剣化するらしい。
ただし、装備を外せば元に戻る。
最初に渡されたあの"聖剣"も、
実はただの装飾剣だった。
「呪いじゃないか……」
こんなの、勇者物語のどこにも書いてないぞ。詐欺だ。
畜生、作者を呪ってやる。
……まあ、私は呪い系の魔法をまだ覚えていないが。
くそっ、今後絶対にマスターして、
一番えげつないのをかけてやる。
「仕方ない。武器を変えられないなら、
それを使いこなせるようになればいい。
さあ、切り込み練習だ。準備はいいか?」
「はい、先生!」
聖剣(仮)を手に、セリナが標的の丸太を切る。
──ドスッ。
鈍器のような鈍い音。
「……なまくらじゃないか」
料理人の包丁の方がまだマシだ。
これは、あくまで仮説だが……。
もしルーが言っていた「人を守る」概念が、
この聖剣の本質ならば──
セリナが「それが人間の脅威として認識していない」限り、
威力が出ないってことか?
「呪いじゃないか……」
仕様書くらい用意しておけ。
だから、人間ってやつは。
へとへとになるまで練習したセリナとは裏腹に、
丸太は傷一つついていない。
「これは……やばいな」
マオウは再び、現実の重さを痛感した。
一日の練習が終わり、
セリナは晩ご飯の支度を始めた。
当然のように、握った包丁は──聖剣と化した。
当然のように、野菜は──まったく切れなかった。
料理が得意なはずの彼女は、
なぜか今夜は包丁(聖剣)と格闘している。
……呪いじゃないか?と、また心の中で呟く。
「人間の敵だと想像して切れば、切れるんじゃないか?」
いつもは言わないようなアドバイスを口にした。
「ダメです!
にんじんさんも、
じゃがいもさんも、
たまねぎさんも、
みんな体にいい、ヘルシーな野菜たちです!
そんなことを思ったら、
育ててくれた農家の人たちに失礼です!」
……どうにも見ていられなかったので、
魔法で野菜を切ってあげた。
それに嬉しそうに笑って感謝する彼女を見て、
なぜか私の心もほっとした。
──ああ、この感じは。
ルーやリアと一緒にいたときと、どこか似ている。あたたかい。
図書館でこの娘に文字を教えていた時も、
なんやかんやで楽しかったな。
ご飯の時間。
明るく振る舞っているが、私にはわかる。
彼女は、私よりもずっと落ち込んでいる。
そして、ぽつりと、他愛のない雑談が途切れた。
「マオウさん。どうして……私と一緒にいるんですか?」
……やはり、来たか。
「君は、勇者だからだ」
「こんなに弱い私でも?
王子様についていた方が、
マオウさんの力も発揮できると思います。
私は足手まといです……」
「あいつはダメだ。
ちっぽけな信念に、安いプライド。
自滅しやすい上に、周囲を巻き込むタイプだ。
あのままじゃ、
魔王に辿り着く前にどこかでドジを踏んで死ぬ」
「でも……今の私は戦闘どころか、
得意だった家事すら満足にできません。
何の役にも立ちません……」
「いいじゃないか。
どうせ王子も家事はできないし」
「……ずるいです。
どうしてマオウさんは、
私にそんなに優しいんですか。
あなたみたいな人なら、
別に私にこだわらなくても……。
私には、返せるものなんて何もありません……」
彼女は泣いているのだろうか。
声が震え、頬に何かが流れているのを感じる。
なぜだろう。私まで、胸が締めつけられる。
「私はね、
生まれついての弱者なんだ。
誰にも気にも止められない、
ちっぽけで取るに足らない存在だった」
「……」
「だけど、
どうしても手に入れたい"何か"ができた。
だから、私は小さいままでいるわけにはいかなかった。
長い年月をかけて、
最底辺から這い上がった。──それが、私の覇道だ」
「……」
「だから、私は"弱いもの"を見くびったりはしない。
だって──」
最弱こそ、最強になれる道だ。
「マオウさん……?」
「料理、美味しかった。
明日からは、別の方法を探そう。
我々今歩いてのは決して楽な道ではないけど……
最善の道だ」
──そのころ。
「ふふ~ん♪♪♪」
「……なにニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」
「ごきげんよう。
今の私は、
おバカな天使の暴言すら微笑ましく受け入れられるほど気分がいいのですわ。
では──良い夜を」
なぜか、モリアは異様にご機嫌だった。
0
あなたにおすすめの小説
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
いわゆる異世界転移
夏炉冬扇
ファンタジー
いわゆる異世界転移
森で目を覚まし、虫や動物、あるいは、魔物や野盗に襲われることなく
中規模な街につき、親切な守衛にギルドを紹介され
さりげなくチート披露なパターンA。
街につくまえに知る人ぞ知る商人に
訳ありのどこぞの王族に会うパターンBもある。
悪役令嬢なるパターンCもある。
ステータスオープンなる厨二病的呪文もかなり初歩にでてくる。
ゲームの世界で培った知識が役に立つこともある、らしい。
現実問題、人はどうするか?
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる