まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声

第28話:封鎖された夕暮れ、ホップタウン最後の一日

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魔王軍が来る――



そう、王都神殿の司祭様が告げました。

その情報は王国中に広まり、やがてこのホップタウンにも届き、そして私たち家族のもとにも。



「物騒だね。魔王軍なんて、本当に勘弁してほしいよ」

「大丈夫。そのときは、お父さんがユキナとお母さんを守ってやる」

「お父さん、昨日ぎっくり腰になったばかりでしょう? 無理しないでね」

「男はな、無理してでもやるときはやるもんなんだ」

「はいはい、お父さん。頼りにしてますよ」



そんな話をしていても、我が家は相変わらず明るくて、笑い声の絶えない日々を過ごしていた。







「あの人……誰でしょうか?」



村に、見慣れない人がやってきました。

この何もない村に、訪問者が来るのは本当に珍しいことです。

しかも、その服装は明らかに高位の貴族――



「クセリオス・ヴェスカリア公爵だよ。貴族の中でも、かなり地位の高いお方らしい」

「えっ? なんでそんな人が、こんな辺鄙な村に……?」

「さあね。貴族様の考えることなんて、私たち庶民には分かりませんよ。気が済んだらすぐ帰るんじゃない?」



村人たちのこそこそ話をまとめると、やってきたのはクセリオス・ヴェスカリア公爵という有力な貴族だそうだ。

……あれ?

その名前、どこかで聞いたような……

いや、気のせい、かな。







「ちょっと! なぜ村から出ちゃいけないの? 私たちの生活がかかってるのよ!」



「公爵様の命により、この村は本日より出入り禁止といたします」

「公爵だかなんだか知らないけど、こんな勝手なことされたら大迷惑だ!」



どうやら、公爵様は村を封鎖したようでした。

外で商売していた人たちや、用事のあった人たちからは不満が爆発。

もちろん、我が家の大黒柱であるお父さんも猛反対です。



「皆さん、落ち着いてください。

魔王軍が、明日グラナールへの襲撃を計画しているという情報が入りました。

この村が、その通過点になるかもしれない。

皆さんの安全のため、明日の夕方まで、村の外に出ないようお願いしているのです。

もちろん、それ以降は必ず、自由な出入りをお約束します。このクセリオス・ヴェスカリア公爵の名にかけて」



公爵は深々と頭を下げ、丁寧に説明しました。

それにより、ようやく村の人々も納得してくれました。



「まぁ、公爵様がそこまでおっしゃるなら、明日まで待つさ」

お父さんが率先してそう言ってくれて、村のみんなも落ち着きを取り戻しました。

「ええ、明日までに必ず解放します」

公爵もそう誓ってくれました。







「……あー、暇だなぁ。村の外に出られないだけで、こんなに退屈するとは」



「いいじゃない、最近忙しくて、ユキナと私とで過ごす時間も少なかったし」

「そうだな、よし、明日は家族で家にこもってのんびりしよう。

パパもそろそろ休みたかったところだし。……さあ、ユキナ! 今までの分も、いっぱい甘えてくれていいんだぞ!」

「お父さんも最近はお疲れだったから、ゆっくり休んでね」

「うちのユキナはほんとにいい娘だ……絶対、嫁にはやらんぞ、パパは」

「お父さんったらもう……」



……まさか、これが家族で過ごす“最後の夜”になるなんて――

あのときは、誰も思っていませんでした。
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