まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花

第36話:失恋相談は、地獄の始まり

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冒険の旅は続く。



俺たちがたどり着いたのは、新たな町――《セルペンティナ》。

ここは、かつて歴史に名を残した聖女、ミリアム・エクスコミュニカの生誕の地だ。



帝国が王国に侵攻してきた際、彼女はこのセルペンティナの民をまとめ、粘り強く抗戦を続けた。

王国の援軍が到着するまで持ちこたえ、最終的に王国を勝利に導いた英雄。



……だが、その後、彼女の姿を見た者はいない。

まことしやかに囁かれる噂では――

「彼女は天界から降りた大天使アークエンジェルだった」とも。







今回、王家はレン姫の失踪を公にしていない。

そのうえ俺は、弟ユウキの名を借り男装している。

よほどの近しい相手でなければ、正体がバレることはない。



セリナも前回の幽霊騒動で評判は大きく回復していた。

教会の"庇護"と彼女の"市民感覚"が噛み合い、庶民からの支持もじわじわと広がっている。



……というわけで、今回はそれぞれ自由行動が許された。







俺は、あの悪魔から渡された一枚の名刺を見つめていた。

──行くべきか、行かざるべきか。



「……どうも、胡散臭い匂いがするんだよな」



虎穴に入らずんば虎子を得ず。

昔、母さんが教えてくれた"女としての心得"をもう少し聞いておけば、虎穴に入る必要もなかったのに……。



名刺に書かれた住所を頼りに、俺は教会の裏路地にある店へ向かった。

そこにあったのは――



『アスにゃんの恋愛相談所♡』



そんなふざけた看板を目にして、

……本気で帰りたくなった。



それでも、覚悟を決めて店の扉を開けた。







「ちーっす☆ よく来たね! アスにゃんの恋愛相談所へようこそ~! 店長のアスにゃんで~す♡」



現れたのは、太陽のように輝く小麦肌のギャル。

ウエストはきゅっとくびれ、ヒップはぷりっと強調。

スレンダーな身体に極小デニムとネットタイツ、クロップドニットとメタリックタンクを合わせた奇抜なファッション。



仕上げに厚底ムートンブーツ、だらりと羽織ったフェイクファー、チェーンネックレスとスパイク指輪で全身バキバキにキメていた。



……これが、色欲を司る悪魔・アスモデウスだ。



なんだこの服装は? 見たこともない素材と形……まるで異世界の服みたいだ。



「どうも、俺は――」

「知ってる知ってる~! モリリンから聞いてるから~」



モリリン? あの悪魔が"モリリン"?

……イメージ違いすぎて、ちょっと吹き出しそうになった。



「レンレンは~、気になる男の子を落としたいんだよね? ぜんっぜん余裕! 女の子にはいっぱい武器あるから!」



そう言って、じろりと俺の体を見てから、

「内面から攻めましょ」



今どこを見てそう判断したのかな?(#^ω^)







「男はね、自分にだけビッチな子に弱いの!」

「ごめん、それちょっと意味わかんない。『ビッチ』って何?」



「あー、この世界の言葉だと……えーっと、『小悪魔』? とにかく!"清楚な女の子がモテる"とか、もう時代遅れ。今は"ギャルビッチ"が最強なのよ!」



「気になる彼に"ねえ、お姉さんとちょっとエッチなことしない?"って囁けば、女の子の手も握ったことない童貞くんなんて一殺よ!」



「レンレンが"お姉さんキャラ"無理なら、最近人気の"メスガキ"ジャンルでもいけるよ?」



言ってる文字は分かるのに、全部繋げると急に意味不明になるのはなぜだろ。

それに、聞いたことのない単語がいっぱい出てくる。

この悪魔、どこの世界から来たんだ?



「レンレンの好きな人、年上でしょ?」

「……はい、一応」

「じゃあ、“ざーこ♡ざーこ♡”って生意気に煽れば、よわよわな彼はもうあなたの虜♡」



「……え、もっと普通なのはない? 恋文とか、交換日記とか……」



アスモデウスは鼻で笑った。

「今どき、〇学生でもそんなのやらないわよ。あ、この世界だと違うだけ?」



ああ……やっぱり来るべきじゃなかった。

あの悪魔の言葉を信じた俺が、バカだった。



「帰る」

「え~、もう? せっかく来てくれたのにぃ~。モリリンの友達には、お代いらないのに~」

「……いいえ、もう大丈夫なので」



「へえ~そっかぁ。じゃあ、余った時間分サービスで、いいこと教えてあげる」



一転、彼女の雰囲気が変わった。

さっきまでの口調がすっと消え、悪魔本来の"圧"が空気を支配する。



「――レンレンのお兄ちゃん、いま"不夜城"にいるよ」



背筋が、ぞくりと震えた。
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