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第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花
第42話:半分の正解
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『聖女の悲劇』
第一章:聖女ミリアムの誕生
王歴25年、聖都セルペンティナに、一つの命が誕生した。
その少女の名は――ミリアム・エクスコミュニカ。
彼女は、生まれながらにして天賦の才を持っていた。
一歳で千を超える文字を覚え、三歳で流麗な文章を書き、五歳では幼なじみの戦士の父から剣術の技を見よう見まねで盗んでしまった。
七歳には、文武両道にして信仰に目覚め、自分の持つ才能が神から与えられた使命のためだと信じるようになった――
*
目指すは、《紅孔雀楼》最上階、《天女の間》。
そこに、マサキとガルドがいるはずだった。
俺たちは昇降機に乗り、不夜城の夜景を眺めていた。
透明なガラス越しに広がる幻想的な都。けれど、心は落ち着かない。
あの上に――アスモデウスがいる。
今、自分が戦う相手は、悪魔だ。
あいつは勝たなくてもいいと言ったが、それても現状は厳しい。
もし……
もしあいつも、帰ってこられなくなったら――?
不安が胸に広がる。
言葉にできず、ただ彼の腕をぎゅっと抱きしめた。
「……怖いのか。腕に込める力が、強くなっているぞ」
「……バカ」
それでも、彼から不安や焦りは感じなかった。
あの時と同じ――戦うために、冷静に対策を練っている時の顔だ。
「怖いのは、恥じることではない。危険を正しく理解している証拠だ。
それを理解できないものは、あの勇者もどきの二の舞いになる」
大きな手が、俺の頭に乗せられた。彼の手だ。
「だが、怖さに呑まれて冷静さを失えば、勝てる戦も見えなくなる。……君なら大丈夫。君は強い」
――不安で鳴っていた鼓動が、静かになっていく。
……かわりに、別のドキドキが止まらなくなった。
いま、俺……どんな顔してる?
鏡なんか見れない。彼の顔も、まっすぐ見るなんて無理だった。
でも、彼がそばにいるなら――
たとえ相手が悪魔でも、俺は勝てる。
*
――あの時、アスモデウスはレンに言った。
「半分正解」と。彼女は嘘を言ってないなら。
残りの半分は?
どこまでが真実で、どこからが誤りだったのか。
レンの推論はこうだった:
① アスモデウスは不夜城と関わっている。
② あの時が、アスモデウスを倒す唯一の機会だった。
③ アスモデウスこそが不夜城の城主。
④ あれは私マオウを誘い、不夜城へ導くための罠。
この中で、明確に正しいのは①だ。
彼女は不夜城の内部情報を把握しており、勇者マサキの現在位置まで知っていた。
招待状を渡せるほど、内部と深く繋がっている。
では③はどうか――
たしかに、あの強さを見れば「彼女こそ城主だ」と考えてしまうのは自然だ。
だが、それは思考の慣性にすぎない。
神魔大戦以後悪魔が単独で動くことは稀だ。彼女にも“契約者”がいるはずだ。
②についても否定できる。
あの時、アスモデウスが姿を見せたのは、おそらく“幻影”。
実体ではない。レンの剣がどれほど鋭くとも、幻影は斬れない。
本物のアスモデウスと戦ったことのある私には分かる――
彼女の戦闘は、幻術と性魔術がメインだ。事前に対策がなければ、危なかった。
そして④――
アスモデウスが俺に用があったのなら、直接来ればいいものの。
だが、そうしなかった。
私が“彼女の要件”を聞いては来ないと読んでいた。だから、レンを利用した。
つまり、アスモデウスは“契約者”のためで動いたのだ。
その契約者こそ――
おそらく、《不夜城》の真の城主だ。
*
昇降機が、最上階に到達する。
「……マサキ兄!?」
《天女の間》。
そこには、美女たちの舞を眺めながら、優雅に酒を飲んでいる男がいた。
勇者マサキ――そして、その隣にいたのは、ガルドだった。
第一章:聖女ミリアムの誕生
王歴25年、聖都セルペンティナに、一つの命が誕生した。
その少女の名は――ミリアム・エクスコミュニカ。
彼女は、生まれながらにして天賦の才を持っていた。
一歳で千を超える文字を覚え、三歳で流麗な文章を書き、五歳では幼なじみの戦士の父から剣術の技を見よう見まねで盗んでしまった。
七歳には、文武両道にして信仰に目覚め、自分の持つ才能が神から与えられた使命のためだと信じるようになった――
*
目指すは、《紅孔雀楼》最上階、《天女の間》。
そこに、マサキとガルドがいるはずだった。
俺たちは昇降機に乗り、不夜城の夜景を眺めていた。
透明なガラス越しに広がる幻想的な都。けれど、心は落ち着かない。
あの上に――アスモデウスがいる。
今、自分が戦う相手は、悪魔だ。
あいつは勝たなくてもいいと言ったが、それても現状は厳しい。
もし……
もしあいつも、帰ってこられなくなったら――?
不安が胸に広がる。
言葉にできず、ただ彼の腕をぎゅっと抱きしめた。
「……怖いのか。腕に込める力が、強くなっているぞ」
「……バカ」
それでも、彼から不安や焦りは感じなかった。
あの時と同じ――戦うために、冷静に対策を練っている時の顔だ。
「怖いのは、恥じることではない。危険を正しく理解している証拠だ。
それを理解できないものは、あの勇者もどきの二の舞いになる」
大きな手が、俺の頭に乗せられた。彼の手だ。
「だが、怖さに呑まれて冷静さを失えば、勝てる戦も見えなくなる。……君なら大丈夫。君は強い」
――不安で鳴っていた鼓動が、静かになっていく。
……かわりに、別のドキドキが止まらなくなった。
いま、俺……どんな顔してる?
鏡なんか見れない。彼の顔も、まっすぐ見るなんて無理だった。
でも、彼がそばにいるなら――
たとえ相手が悪魔でも、俺は勝てる。
*
――あの時、アスモデウスはレンに言った。
「半分正解」と。彼女は嘘を言ってないなら。
残りの半分は?
どこまでが真実で、どこからが誤りだったのか。
レンの推論はこうだった:
① アスモデウスは不夜城と関わっている。
② あの時が、アスモデウスを倒す唯一の機会だった。
③ アスモデウスこそが不夜城の城主。
④ あれは私マオウを誘い、不夜城へ導くための罠。
この中で、明確に正しいのは①だ。
彼女は不夜城の内部情報を把握しており、勇者マサキの現在位置まで知っていた。
招待状を渡せるほど、内部と深く繋がっている。
では③はどうか――
たしかに、あの強さを見れば「彼女こそ城主だ」と考えてしまうのは自然だ。
だが、それは思考の慣性にすぎない。
神魔大戦以後悪魔が単独で動くことは稀だ。彼女にも“契約者”がいるはずだ。
②についても否定できる。
あの時、アスモデウスが姿を見せたのは、おそらく“幻影”。
実体ではない。レンの剣がどれほど鋭くとも、幻影は斬れない。
本物のアスモデウスと戦ったことのある私には分かる――
彼女の戦闘は、幻術と性魔術がメインだ。事前に対策がなければ、危なかった。
そして④――
アスモデウスが俺に用があったのなら、直接来ればいいものの。
だが、そうしなかった。
私が“彼女の要件”を聞いては来ないと読んでいた。だから、レンを利用した。
つまり、アスモデウスは“契約者”のためで動いたのだ。
その契約者こそ――
おそらく、《不夜城》の真の城主だ。
*
昇降機が、最上階に到達する。
「……マサキ兄!?」
《天女の間》。
そこには、美女たちの舞を眺めながら、優雅に酒を飲んでいる男がいた。
勇者マサキ――そして、その隣にいたのは、ガルドだった。
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