48 / 190
第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花
第43話:罠の城、兄を捨てる日
しおりを挟む
『聖女の悲劇』
第六章:第三次セルペンティナ戦争
王歴39年。
帝国第十三代皇帝ディアボロス・ブラッドムーンは、王国に対して宣戦布告もなく、突如として侵略戦争を開始した。
王国側も帝国軍の不穏な動きを察知していたが、備えは万全とは言えず、戦況は次第に帝国優勢へと傾いていった。
そしてついに、帝国の炎は聖都セルペンティナにまで迫る。
情報が錯綜し、人々が混乱に包まれる中、一人の少女が静かに立ち上がった。
その名は――ミリアム・エクスコミュニカ。
聖都の片隅で生まれ育った、ただの村娘。
だがその声は、民の心を震わせ、歴史を動かした。
________________________________________
「立ち上がれ、我が同胞よ!
この地は、私たちの涙と希望が染み込んだ、かけがえのない祖国だ!」
(広場に集まった人々を見渡しながら、彼女は鎧の下から白き旗を掲げる)
「帝国は私たちを"弱者"と呼ぶ。
けれど、弱さは恥じゃない――それは、強さの源だ。
農夫の手は大地を耕し、母の腕は命を育む。
この国は、奪うためではなく、生きるためにある!」
(ざわめいていた民衆の目に、次第に熱が宿っていく)
「彼らは言う。"服従しろ"と。
だが私は問う。
鳥は檻の中で歌うべきか?
川は岩に逆らわず、ただ流れるだけでいいのか?
――私たちの自由は、神が与えた正当な権利のはずよ!」
(彼女は子どもや老人の手を見つめながら)
「その手は、武器よりも尊い。
パンを作り、傷を癒し、未来を紡いできた手。
それを奪われるくらいなら――
私たちの拳は、『祈り』から『盾』へと変わる!」
(遠くから、帝国軍の戦鼓が響く。それをかき消すように、彼女は叫んだ)
「私は聖女なんかじゃない。ただの村娘よ。
でも、あなたたちの涙が、私を立たせる!
今日――この場所で!
私たちは"羊"ではなく、"狼"になると誓おう!
ただし、その牙は"正義"のためにのみ使うと、ここに誓って!」
(掲げられた白き旗が、朝焼けの風に高くなびいた)
「守るべきものがある者は、私の後に続いて!
たとえ明日、炎に焼かれようとも――
"自由な明日"を信じて戦う者を、神は決して見捨てない!」
________________________________________
こうして、ミリアムの言葉に胸を震わせた人々は、ひとり、またひとりと立ち上がった。
祖国のために。家族のために。そして、自らの尊厳のために。
ここに、2年にわたる《第三次セルペンティナ戦争》の幕が上がる。
________________________________________
*
目の前に広がっていたのは、悪魔との決戦――ではなかった。
《天女の間》にいたのは、異種族の美女に囲まれて、酒に酔いしれる――
俺の兄だった。
「……なにしてんのよ!
失踪事件って騒がれてたのに、風俗まがいの場所で酒盛りって……ほんと、恥ずかしい!」
「なんだ、レンか。男装なんかして、色気ないなぁ。もっとミリアムさんを見習ったらどうだ?」
「……は?」
この酔っぱらい、もう本気で縁を切ろうかな。物理的に。
「まあまあ、マサキ様。お言葉が過ぎますわ」
隣でお酌をしていた女性が、優しくたしなめる。
透き通るような白い肌、静かな青の瞳。背中まで届く金の髪はまるで聖女の絵画そのもの。
淫靡なこの城で、明らかに"浮いている"存在だった。
「私はこの城の城主、ミリアムと申します」
「……城主?」
アスモデウスはどこへ? いや、それ以前に――
ミリアムって、百年前の"あの聖女"の名前じゃなかったっけ?
偶然だよね……?
マオウは黙ったまま、周囲をじっと観察していた。
たぶん、呆れてる。完全に呆れてる。
――なんで私、こんなバカ兄貴のためにここまで来たんだろ。
「もういい。帰るよ。ガルド、手伝って。こいつ、引きずってでも連れて帰る」
料理を黙々と食べていたガルドに目配せする――はずだった。
「……俺は、帰れない」
「……は?」
「俺たちは、ここで生きていく。勇者なんて、もうどうでもいい」
「……え?」
マサキ兄は、俺の手を振り払った。
「帰りたいなら、一人で帰れ。
そもそもここは、女のお前が来る場所じゃない」
その冷たい目――
俺が初めて兄に勝った、あの日と同じだった。
「まあまあ、マサキ様。ご妹君がご滞在でも、誰も文句は言いませんわ」
その言葉を聞いた瞬間、なにかが"ぷつん"と切れた。
「――ふざけるなッ!!」
気づいたら、俺はマサキの襟を掴んでいた。
「あんたがバカなのは知ってる。
俺の剣に嫉妬してたのも、プライドが無駄に高いのも、全部分かってた。
でも――
あんたの"勇者"への憧れは、本物だと信じてたんだ」
「だから俺、死ぬ覚悟で来た。
"帰りたくない"? "勇者はもうどうでもいい"?
――見損なったよ。
ここで一生、酔い潰れてなさい。このクソ兄貴!」
そのとき、隣でマオウがぽつりと呟いた。
「――レン、知っているか?」
次の瞬間、マサキの頭が――マオウの魔法によって、見事に爆散した。
「……獲物を釣る餌は、"食われる"ために存在しているんじゃない。
――我々は、もう罠の中にいる」
第六章:第三次セルペンティナ戦争
王歴39年。
帝国第十三代皇帝ディアボロス・ブラッドムーンは、王国に対して宣戦布告もなく、突如として侵略戦争を開始した。
王国側も帝国軍の不穏な動きを察知していたが、備えは万全とは言えず、戦況は次第に帝国優勢へと傾いていった。
そしてついに、帝国の炎は聖都セルペンティナにまで迫る。
情報が錯綜し、人々が混乱に包まれる中、一人の少女が静かに立ち上がった。
その名は――ミリアム・エクスコミュニカ。
聖都の片隅で生まれ育った、ただの村娘。
だがその声は、民の心を震わせ、歴史を動かした。
________________________________________
「立ち上がれ、我が同胞よ!
この地は、私たちの涙と希望が染み込んだ、かけがえのない祖国だ!」
(広場に集まった人々を見渡しながら、彼女は鎧の下から白き旗を掲げる)
「帝国は私たちを"弱者"と呼ぶ。
けれど、弱さは恥じゃない――それは、強さの源だ。
農夫の手は大地を耕し、母の腕は命を育む。
この国は、奪うためではなく、生きるためにある!」
(ざわめいていた民衆の目に、次第に熱が宿っていく)
「彼らは言う。"服従しろ"と。
だが私は問う。
鳥は檻の中で歌うべきか?
川は岩に逆らわず、ただ流れるだけでいいのか?
――私たちの自由は、神が与えた正当な権利のはずよ!」
(彼女は子どもや老人の手を見つめながら)
「その手は、武器よりも尊い。
パンを作り、傷を癒し、未来を紡いできた手。
それを奪われるくらいなら――
私たちの拳は、『祈り』から『盾』へと変わる!」
(遠くから、帝国軍の戦鼓が響く。それをかき消すように、彼女は叫んだ)
「私は聖女なんかじゃない。ただの村娘よ。
でも、あなたたちの涙が、私を立たせる!
今日――この場所で!
私たちは"羊"ではなく、"狼"になると誓おう!
ただし、その牙は"正義"のためにのみ使うと、ここに誓って!」
(掲げられた白き旗が、朝焼けの風に高くなびいた)
「守るべきものがある者は、私の後に続いて!
たとえ明日、炎に焼かれようとも――
"自由な明日"を信じて戦う者を、神は決して見捨てない!」
________________________________________
こうして、ミリアムの言葉に胸を震わせた人々は、ひとり、またひとりと立ち上がった。
祖国のために。家族のために。そして、自らの尊厳のために。
ここに、2年にわたる《第三次セルペンティナ戦争》の幕が上がる。
________________________________________
*
目の前に広がっていたのは、悪魔との決戦――ではなかった。
《天女の間》にいたのは、異種族の美女に囲まれて、酒に酔いしれる――
俺の兄だった。
「……なにしてんのよ!
失踪事件って騒がれてたのに、風俗まがいの場所で酒盛りって……ほんと、恥ずかしい!」
「なんだ、レンか。男装なんかして、色気ないなぁ。もっとミリアムさんを見習ったらどうだ?」
「……は?」
この酔っぱらい、もう本気で縁を切ろうかな。物理的に。
「まあまあ、マサキ様。お言葉が過ぎますわ」
隣でお酌をしていた女性が、優しくたしなめる。
透き通るような白い肌、静かな青の瞳。背中まで届く金の髪はまるで聖女の絵画そのもの。
淫靡なこの城で、明らかに"浮いている"存在だった。
「私はこの城の城主、ミリアムと申します」
「……城主?」
アスモデウスはどこへ? いや、それ以前に――
ミリアムって、百年前の"あの聖女"の名前じゃなかったっけ?
偶然だよね……?
マオウは黙ったまま、周囲をじっと観察していた。
たぶん、呆れてる。完全に呆れてる。
――なんで私、こんなバカ兄貴のためにここまで来たんだろ。
「もういい。帰るよ。ガルド、手伝って。こいつ、引きずってでも連れて帰る」
料理を黙々と食べていたガルドに目配せする――はずだった。
「……俺は、帰れない」
「……は?」
「俺たちは、ここで生きていく。勇者なんて、もうどうでもいい」
「……え?」
マサキ兄は、俺の手を振り払った。
「帰りたいなら、一人で帰れ。
そもそもここは、女のお前が来る場所じゃない」
その冷たい目――
俺が初めて兄に勝った、あの日と同じだった。
「まあまあ、マサキ様。ご妹君がご滞在でも、誰も文句は言いませんわ」
その言葉を聞いた瞬間、なにかが"ぷつん"と切れた。
「――ふざけるなッ!!」
気づいたら、俺はマサキの襟を掴んでいた。
「あんたがバカなのは知ってる。
俺の剣に嫉妬してたのも、プライドが無駄に高いのも、全部分かってた。
でも――
あんたの"勇者"への憧れは、本物だと信じてたんだ」
「だから俺、死ぬ覚悟で来た。
"帰りたくない"? "勇者はもうどうでもいい"?
――見損なったよ。
ここで一生、酔い潰れてなさい。このクソ兄貴!」
そのとき、隣でマオウがぽつりと呟いた。
「――レン、知っているか?」
次の瞬間、マサキの頭が――マオウの魔法によって、見事に爆散した。
「……獲物を釣る餌は、"食われる"ために存在しているんじゃない。
――我々は、もう罠の中にいる」
0
あなたにおすすめの小説
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
巻き込まれた薬師の日常
白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。
剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。
彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。
「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。
これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。
【カクヨムでも掲載しています】
表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
いわゆる異世界転移
夏炉冬扇
ファンタジー
いわゆる異世界転移
森で目を覚まし、虫や動物、あるいは、魔物や野盗に襲われることなく
中規模な街につき、親切な守衛にギルドを紹介され
さりげなくチート披露なパターンA。
街につくまえに知る人ぞ知る商人に
訳ありのどこぞの王族に会うパターンBもある。
悪役令嬢なるパターンCもある。
ステータスオープンなる厨二病的呪文もかなり初歩にでてくる。
ゲームの世界で培った知識が役に立つこともある、らしい。
現実問題、人はどうするか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる