まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花

第43話:罠の城、兄を捨てる日

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『聖女の悲劇』

第六章:第三次セルペンティナ戦争



王歴39年。

帝国第十三代皇帝ディアボロス・ブラッドムーンは、王国に対して宣戦布告もなく、突如として侵略戦争を開始した。



王国側も帝国軍の不穏な動きを察知していたが、備えは万全とは言えず、戦況は次第に帝国優勢へと傾いていった。

そしてついに、帝国の炎は聖都セルペンティナにまで迫る。



情報が錯綜し、人々が混乱に包まれる中、一人の少女が静かに立ち上がった。

その名は――ミリアム・エクスコミュニカ。

聖都の片隅で生まれ育った、ただの村娘。

だがその声は、民の心を震わせ、歴史を動かした。



________________________________________



「立ち上がれ、我が同胞よ!

この地は、私たちの涙と希望が染み込んだ、かけがえのない祖国だ!」



(広場に集まった人々を見渡しながら、彼女は鎧の下から白き旗を掲げる)



「帝国は私たちを"弱者"と呼ぶ。

けれど、弱さは恥じゃない――それは、強さの源だ。

農夫の手は大地を耕し、母の腕は命を育む。

この国は、奪うためではなく、生きるためにある!」



(ざわめいていた民衆の目に、次第に熱が宿っていく)



「彼らは言う。"服従しろ"と。

だが私は問う。

鳥は檻の中で歌うべきか?

川は岩に逆らわず、ただ流れるだけでいいのか?

――私たちの自由は、神が与えた正当な権利のはずよ!」



(彼女は子どもや老人の手を見つめながら)



「その手は、武器よりも尊い。

パンを作り、傷を癒し、未来を紡いできた手。

それを奪われるくらいなら――

私たちの拳は、『祈り』から『盾』へと変わる!」



(遠くから、帝国軍の戦鼓が響く。それをかき消すように、彼女は叫んだ)



「私は聖女なんかじゃない。ただの村娘よ。

でも、あなたたちの涙が、私を立たせる!

今日――この場所で!

私たちは"羊"ではなく、"狼"になると誓おう!

ただし、その牙は"正義"のためにのみ使うと、ここに誓って!」



(掲げられた白き旗が、朝焼けの風に高くなびいた)



「守るべきものがある者は、私の後に続いて!

たとえ明日、炎に焼かれようとも――

"自由な明日"を信じて戦う者を、神は決して見捨てない!」



________________________________________



こうして、ミリアムの言葉に胸を震わせた人々は、ひとり、またひとりと立ち上がった。

祖国のために。家族のために。そして、自らの尊厳のために。

ここに、2年にわたる《第三次セルペンティナ戦争》の幕が上がる。



________________________________________







目の前に広がっていたのは、悪魔との決戦――ではなかった。

《天女の間》にいたのは、異種族の美女に囲まれて、酒に酔いしれる――

俺の兄だった。



「……なにしてんのよ!

失踪事件って騒がれてたのに、風俗まがいの場所で酒盛りって……ほんと、恥ずかしい!」



「なんだ、レンか。男装なんかして、色気ないなぁ。もっとミリアムさんを見習ったらどうだ?」

「……は?」



この酔っぱらい、もう本気で縁を切ろうかな。物理的に。



「まあまあ、マサキ様。お言葉が過ぎますわ」

隣でお酌をしていた女性が、優しくたしなめる。

透き通るような白い肌、静かな青の瞳。背中まで届く金の髪はまるで聖女の絵画そのもの。

淫靡なこの城で、明らかに"浮いている"存在だった。



「私はこの城の城主、ミリアムと申します」

「……城主?」



アスモデウスはどこへ? いや、それ以前に――

ミリアムって、百年前の"あの聖女"の名前じゃなかったっけ?

偶然だよね……?



マオウは黙ったまま、周囲をじっと観察していた。

たぶん、呆れてる。完全に呆れてる。



――なんで私、こんなバカ兄貴のためにここまで来たんだろ。



「もういい。帰るよ。ガルド、手伝って。こいつ、引きずってでも連れて帰る」

料理を黙々と食べていたガルドに目配せする――はずだった。



「……俺は、帰れない」

「……は?」



「俺たちは、ここで生きていく。勇者なんて、もうどうでもいい」

「……え?」



マサキ兄は、俺の手を振り払った。

「帰りたいなら、一人で帰れ。

そもそもここは、女のお前が来る場所じゃない」



その冷たい目――

俺が初めて兄に勝った、あの日と同じだった。



「まあまあ、マサキ様。ご妹君がご滞在でも、誰も文句は言いませんわ」



その言葉を聞いた瞬間、なにかが"ぷつん"と切れた。

「――ふざけるなッ!!」



気づいたら、俺はマサキの襟を掴んでいた。

「あんたがバカなのは知ってる。

俺の剣に嫉妬してたのも、プライドが無駄に高いのも、全部分かってた。

でも――

あんたの"勇者"への憧れは、本物だと信じてたんだ」



「だから俺、死ぬ覚悟で来た。

"帰りたくない"? "勇者はもうどうでもいい"?

――見損なったよ。

ここで一生、酔い潰れてなさい。このクソ兄貴!」



そのとき、隣でマオウがぽつりと呟いた。

「――レン、知っているか?」



次の瞬間、マサキの頭が――マオウの魔法によって、見事に爆散した。



「……獲物を釣る餌は、"食われる"ために存在しているんじゃない。

――我々は、もう罠の中にいる」
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