まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第三章:汚された純白に、恋は咲く――旧友と公爵家の囁き

第53話:夜にこぼれた、よくわからない涙

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「これだけ女子が集まったら恋バナするしかないっすよね!

不夜城では“男だけ”とかやってたんだから、こっちは“男子禁制の女子会”で対抗するっす!」

宴の後、リリアンヌさんが音頭をとり、

私たちはパジャマパーティーを開くことになりました。

昔、マリさんとふたりでやったことはありますが、

こんな大人数の女子会は初めてです。

夜更かしはよくないかもしれませんが、今日くらいは、いいですよね。

________________________________________

「いや、俺不夜城に入ったし。 っていうか、

なんで“男のはず”の天使までいるんだよ?」

「僕だって来たくないんだ。悪魔に無理やり連れてこられただけ」

「いいですか、彼を放っておくとすぐ“あの人”の布団に潜って、

朝まで添い寝コース一直線です。それでもいいなら戻しますが」

「よくやった!! ほんとこういう時男の子って立場はズルいよね~」

(※……天使のはずなのに、“男の子”として数えられているのは秘密です)

「ふあぁ~……ねむい……」

「ルキエル様、もしよろしければ、私の膝枕を――」

「いらない」

「がーーーん!」

天使様はやはり、マオウさん以外にはあまり懐かないようです。

________________________________________

その後、ルキエル様はすぐ眠りについてしまい、

マーリンさんはその世話に付きっきりで、

今回は恋バナには不参加となりました。

こうして、本格的な女子トークの時間が、始まったのです。

________________________________________

「それでは恋バナをするですが

皆さん、好きな人とかいますでしょうか?」

「はいっ」

意外なことに、最初に手を挙げたのはリリアンヌさんでした。

「ガルドでしょ。見え見えだよ。

あんた昔っからガルドにべったりだったし」

「ええ、そうだけど……なのに本人はちっとも気づいてないのよ。

あの朴念仁が。おまけに顔もかっこいいし、クールだし……競争率高そうで怖い」

「告れば?」

「やだよ。女の子から告るのって、なんか違うじゃん。

やっぱり、男の子から言ってほしいじゃん……」

「向こうから告られたからって、うまくいくとは限らないわよ」

そう言ったレン君の目は、どこか遠くを見ていた。

……何があったのでしょうか。

________________________________________

「え、まさかレン……告白された? 女の子に?」

「なんで女の子に限定すんだよ、俺、女子だし」

「レン知らないかもだけど、銀髪の男装麗人ってことで、

お嬢様からメイドまで高い人気あるんだよ?

ちなみにファンクラブあるから。うち会長っす」

そう言ってリリアンヌさんは、

“レン様ファンクラブ No.00000”のカードを誇らしげに見せてきました。

……すごくキラキラしてます。

「いらないよ、俺ノーマルだし」

「まぁ、ホモじゃなかったんですか?」

「なんで悪魔にバレてる!? ……あ! この子、占い得意だった……忘れてた」

________________________________________

「ええっ!? 占いできるの!?

だったらうちとガルドの相性、占って!」

「あなたが告白しない限り、向こうからは絶対に動きません。ええ、“絶対”です」

「ちょっ……リリ!? ……うわ、真っ白」

モリアさんの言葉は、リリアンヌさんにクリティカルヒットを与えたようです。

________________________________________

「え? 俺? ……いな……いや、いる」

レン君はモリアさんと目を合わせた瞬間、言葉を変えました。

レン君も恋してますね、どこの王子様でしょう。

「マジで!? 誰!? 剣聖道場の兄弟子? 舞踏会の貴公子? まさか……ガルドじゃないよね?」

「こわこわ、取らないで。違ぇよ。……マオウ、だ」

……え?

一瞬、心がチクッとしました。

レン君はマオウさんが好き、考えもしませんでした。

________________________________________

「意外っす……おっさんじゃん……いや、マオウって名前の、いかれた魔法使いだよ?」

「アイツのおかげで、俺は剣を取り戻せた。

俺の剣を、“そのまま”褒めてくれた。

男の真似だとか、女らしくないとか、言わなかった。

……このままの俺を、“欲しい”って言ってくれた。

だから、俺はアイツのことが好きだ。この気持ちは、本物だ」

________________________________________

……なぜだろう。

レン君がこんなに幸せそうなのに、私は――

胸が、苦しい。

大好きな二人が結ばれるかもしれないのに。

どうして、私は笑って「おめでとう」って言えないのでしょう?

私、セリナは――悪い子なのでしょうか?

________________________________________

「ひゅひゅ、お熱いっすね、次はセリナね、あれ?」

「ふふふ……純粋無垢なあなたにも、

ついに“人間らしい感情”が芽生えましたわね?」

――勇者セリナ

私は、涙をこぼしていました。

それは、熱くも冷たくもない――

名前のない、心の雫でした。

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