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第四章:勝者も敗者も、恋を知る――月下の武闘会は乙女を育てる
第74話:勇者、火花散る
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「すごい、すごい! 今年の強者たちは、ひと味違います!」
「では、準決勝進出者を発表します!」
「まずは我らが三冠王――王 小梅!」
「そして、私の愛しき銀の閃光! ユウキ様です♡」
「そして意外や意外! 急に現れた巨乳剣士、マサコ!」
「最後の大穴――まさかのメイド勇者、セリナ!」
その結果に、観客席がざわつく。
「え、今年、準決勝に王国人が三人!? やばくない?」
「バカ言うな、小梅様がいる限り、最後に勝つのは帝国人に決まってる!」
そんなざわめきに包まれながら、武闘会の一日目は幕を下ろした。
________________________________________
*
「セリナ!」
試合終了後、コロシアムの裏でレンがセリナを呼び止めた。
「どうして参加したんだ、あんたは……」
「おかしなことを言いますね。レン君も出ているのに、セリナが出たら変ですか?」
普段と違う、冷えた口調だった。
「……君らしくない」
「レン君はセリナが強くなったら、嫌なんですか? マオウさんを“取られる”と思ったからですか?」
「バカなこと言わないでくれ! お願いだから、元の優しいあんたに戻ってくれよ!」
「戻ったら、レン君に勝てない。そんな私では、マオウさんはレン君を選んでしまう……それが嫌なんです」
セリナの瞳に、もう以前の光はなかった。
彼女は今、ただ――レンを“倒す”ことしか考えていなかった。
「……わかった。受けて立つよ。あんたの師匠として、目を覚まさせてやる。試合で会おう」
レンはようやく、セリナと向き合う覚悟を決めた。
________________________________________
「止めに行かなくていいの?」
その様子を見届けたマサコが、毛玉マオウに尋ねる。
「それは通過儀礼だ。あの二人が本当に大切なものを得るためには、避けて通れない」
「もしあのまま仲違いしたら?」
「それなら、それだけの関係だったということだ」
「……冷たいな」
「冷たくていい。……それに、君こそ余裕あるのか? 明日の相手、誰が来ても苦戦するぞ?」
「げっ、マジか……」
そうして一同は宿へ戻り、明日の準決勝に備えた――
が、誰の胸にも、落ち着いた夜は訪れなかった。
________________________________________
*翌朝*
「皆さま、おはようございます!」
「いよいよ本日、準決勝を迎えました!」
「緊張しすぎて眠れなかった方も、もう目を覚ましてください!」
「では早速、対戦カードを発表いたします!」
上半戦――セリナ vs マサコ
下半戦――王 小梅 vs ユウキ
それぞれの勝者が、明日の決勝で最強の座を争う!
________________________________________
上半戦、セリナ vs マサコ。
これは――因縁の一戦だ。
かつて、すべてを期待されながら勇者になれなかった王子マサキ。
そして、誰にも期待されなかったのに、聖剣に選ばれたメイド、セリナ。
彼女たちは、いずれぶつかる運命だった。
今、リングに立つふたりに、かつての影はない。
マサコは嫉妬と独善を乗り越え、ひとりの戦士として立っている。
セリナは、嫉妬に囚われ、“力”だけを信じるようになった。
「セリナ。ちょっとだけ話させてくれないか、試合の前に」
「私の心を揺さぶる作戦ですか? どうぞ、ご自由に」
「俺は――ずっと、お前のことをモブだと思ってた。
でもそれは俺の傲慢だった。
お前は努力して、ここまで来たんだな。……すごいよ。俺より、ずっと」
「褒めても、手加減はしません」
「それでいい。勇者セリナ。俺も“もう一度勇者になりたい”と思った。だから――勝負だ!」
二人の剣が、静かに抜かれる。
運命を背負った勇者同士の戦いが、いま始まる。
「では、準決勝進出者を発表します!」
「まずは我らが三冠王――王 小梅!」
「そして、私の愛しき銀の閃光! ユウキ様です♡」
「そして意外や意外! 急に現れた巨乳剣士、マサコ!」
「最後の大穴――まさかのメイド勇者、セリナ!」
その結果に、観客席がざわつく。
「え、今年、準決勝に王国人が三人!? やばくない?」
「バカ言うな、小梅様がいる限り、最後に勝つのは帝国人に決まってる!」
そんなざわめきに包まれながら、武闘会の一日目は幕を下ろした。
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「セリナ!」
試合終了後、コロシアムの裏でレンがセリナを呼び止めた。
「どうして参加したんだ、あんたは……」
「おかしなことを言いますね。レン君も出ているのに、セリナが出たら変ですか?」
普段と違う、冷えた口調だった。
「……君らしくない」
「レン君はセリナが強くなったら、嫌なんですか? マオウさんを“取られる”と思ったからですか?」
「バカなこと言わないでくれ! お願いだから、元の優しいあんたに戻ってくれよ!」
「戻ったら、レン君に勝てない。そんな私では、マオウさんはレン君を選んでしまう……それが嫌なんです」
セリナの瞳に、もう以前の光はなかった。
彼女は今、ただ――レンを“倒す”ことしか考えていなかった。
「……わかった。受けて立つよ。あんたの師匠として、目を覚まさせてやる。試合で会おう」
レンはようやく、セリナと向き合う覚悟を決めた。
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「止めに行かなくていいの?」
その様子を見届けたマサコが、毛玉マオウに尋ねる。
「それは通過儀礼だ。あの二人が本当に大切なものを得るためには、避けて通れない」
「もしあのまま仲違いしたら?」
「それなら、それだけの関係だったということだ」
「……冷たいな」
「冷たくていい。……それに、君こそ余裕あるのか? 明日の相手、誰が来ても苦戦するぞ?」
「げっ、マジか……」
そうして一同は宿へ戻り、明日の準決勝に備えた――
が、誰の胸にも、落ち着いた夜は訪れなかった。
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*翌朝*
「皆さま、おはようございます!」
「いよいよ本日、準決勝を迎えました!」
「緊張しすぎて眠れなかった方も、もう目を覚ましてください!」
「では早速、対戦カードを発表いたします!」
上半戦――セリナ vs マサコ
下半戦――王 小梅 vs ユウキ
それぞれの勝者が、明日の決勝で最強の座を争う!
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上半戦、セリナ vs マサコ。
これは――因縁の一戦だ。
かつて、すべてを期待されながら勇者になれなかった王子マサキ。
そして、誰にも期待されなかったのに、聖剣に選ばれたメイド、セリナ。
彼女たちは、いずれぶつかる運命だった。
今、リングに立つふたりに、かつての影はない。
マサコは嫉妬と独善を乗り越え、ひとりの戦士として立っている。
セリナは、嫉妬に囚われ、“力”だけを信じるようになった。
「セリナ。ちょっとだけ話させてくれないか、試合の前に」
「私の心を揺さぶる作戦ですか? どうぞ、ご自由に」
「俺は――ずっと、お前のことをモブだと思ってた。
でもそれは俺の傲慢だった。
お前は努力して、ここまで来たんだな。……すごいよ。俺より、ずっと」
「褒めても、手加減はしません」
「それでいい。勇者セリナ。俺も“もう一度勇者になりたい”と思った。だから――勝負だ!」
二人の剣が、静かに抜かれる。
運命を背負った勇者同士の戦いが、いま始まる。
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